ボストン・レッドソックスの本拠地、フェンウェイパークの記者席は5階にある。エレベーターを降りてドアを開けると、記者席に続く廊下の両側の壁には、球団の歴史を彩る様々な写真や新聞記事が展示されている。クラブハウスで腰にバスタオルを巻いて素振りする若き日のテッド・ウィリアムスや、バンビーノの呪いを解いた04年の優勝シーンの写真に混じって、胴上げ投手・上原浩治が、人差し指を天に号泣する写真が目に飛び込んでくる。言うまでもなく、2013年、ワールドシリーズ第6戦でカージナルスを倒し、世界一を達成した時だ。 この前を通るたび、私はいつも感慨に耽る。シーズン前、この構図を予想した人はいない。前年度最下位のレ軍の下馬評は低く、抑えはハンラハン、ベイリーが相次いで故障、田沢純一も中継ぎで適性を示し、上原は“第4の候補”だった。上原を抱き抱えるデビット・ロスも控え捕手。日頃の鍛錬を重ね、巡ってきたチャンスをモ