著: いのっち 日吉で一人暮らしを始めたのは19の時だった。 大学進学に合わせて一人地元を抜け出してきた僕の胸には一つ熱い想いがあった。 テクノロジーの力で世間を良くしたい!そのための勉強をしたい、というぼんやりとした夢みたいなものがそれだ。チャラくて楽しいキャンパスライフの対極にあるような理工学部を選んだのも、それが理由だったりする。 そんな夢みたいなものへの大きな期待と新しい生活への少しの不安を抱えたまま改札を飛び出し、駅前のモニュメントの銀球を見てなぜかテンションが上がったのを覚えている。きっとここから新生活が始まる、という実感が湧いたんだろう。「自分の人生の第二ステージが始まるんだ」と、そんなどこにでもいるティーンエイジャーのなんだかよく分からないやる気を受け止めてくれたのが日吉という街だった。 そもそも一人暮らしをするに当たって日吉を狙って部屋探しをしたわけじゃなかった。なんとな
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