マスクのある光景 コロナ禍のなかで、『風の谷のナウシカ』のアニメ版/マンガ版を読みなおす動きが起こっているらしい。わたし自身は、とりわけマンガ版『風の谷のナウシカ』に沈潜しながら、ようやく『ナウシカ考』(岩波書店、二〇一九年十一月)を上梓してホッとしていたこともあり、ほとんどコロナ禍と繋げてみようという気にはならなかった。あまりに細部にこだわってきたがゆえに、差異ばかりが眼につくのかもしれない。とはいえ、東日本大震災のあと、フラッシュバックのように、くりかえしマンガ版『風の谷のナウシカ』のいくつかの場面を想起したのとは、対照的であったかと思う。 マスクとはなにか、という問いからはじめる。腐海のほとりに暮らす人々には、マスクが欠かせない。腐海の瘴気の毒性からすれば、なんとも粗末にすぎる簡易マスクではあるが、とにかく瘴気が近づけばだれもがあわててマスクを着ける。腐海のなかでマスクをはずすことは
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