職場のそばにわりと大きめの書店がある。いつの頃からか売れ筋の棚に「反日」や「愛国」を打ち出した本ばかり並ぶようになった。百田尚樹はその棚の常連である。一昨年出版された『日本国紀』もいまだに棚の一角を占めている。『日本国紀』は関連本をあわせ累計100万部を突破したというし、『永遠の0』や『海賊とよばれた男』のようなメガヒット作品もある。百田はいまもっとも売れる本を出す作家だ。 ネットでもその存在感は大きい。ツイッターのフォロワー数は約46万で、その発言はしばしばネットニュースになる。中国や韓国をボロクソにけなしたかと思えば、新型コロナウイルス対策で安倍首相を痛烈に批判する。リベラル陣営はそのたびに苛立ったりざわついたり翻弄されながらも発言から目が離せない。百田がインフルエンサーであることは衆目の一致するところだろう。「百田尚樹」は、いまやその固有名を超えて、ひとつの「現象」であると言っていい