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ブックマーク / honz.jp (168)

  • 『他者の靴を履く アナーキック・エンパシーのすすめ』まず自分の靴を脱ぐこと 足元から世界を変えていく - HONZ

    著者が今、最も旬な書き手であることを確信させられる一冊だ。世界を覆う社会的なテーマを生活者として語り、解決のヒントを暮らしの中に見出す。そのスタンスや主張は数年前からさほど変わらないはずだが、時代が追いついてきた印象もある。 ブレイディみかこ氏が作で選んだテーマは「エンパシー」。これは他者の感情や経験などを理解する「能力」を指す。エンパシーは「意識的に他者の立場で想像する作業」すなわち「他者のを履く」試みでもあり、その点で、共鳴する相手やかわいそうに思う相手に向けて心の内側から湧いてくる「シンパシー」と異なる。そして、能力であるエンパシーは、訓練によって向上させることができる。 書では、この抽象的な概念が身近なトピックを通じて語られ、骨太なテーマへと昇華されている。エンパシーはどのようにすれば向上させられるのか、優秀な女性指導者とエンパシーに関係はあるのか、サイコパスとエンパシーの関

    『他者の靴を履く アナーキック・エンパシーのすすめ』まず自分の靴を脱ぐこと 足元から世界を変えていく - HONZ
    hanemimi
    hanemimi 2021/08/21
  • 『ヒトはなぜ自殺するのか 死に向かう心の科学』死について考えることと、生について考えること - HONZ

    テーマがテーマだけに、気分が落ち込んでいるときに読むべきではないだろう。しかし、気持ちが落ち着いているときに、自殺というテーマに関する知識を得ておくことは、いつの日かあなた自身やあなたの周りの大切な人を救うことになるかもしれない。そんなワクチンのような役割を果たす一冊である。 著者のジェシー・べリングは、前作『性倒錯者』と同様に、自分自身の実体験をカミングアウトすることから書を始める。自分のセクシュアリティに悩んでいたときのこと、学者として燃え尽き症候群になったときのこと。失業して家の近くの森で自殺の想念にとらわれたときのこと。 そんな主観的なプロローグから話は一気に客観の世界へ飛び、著者は「ヒトはなぜ自殺するのか」というシンプルな問いに、ヒトの心の進化という観点から挑んでいく。 1つ目のアプローチは、自殺を「種」の観点から見るもの。はたして自殺するのは人間だけなのか? もし自殺が人間

    『ヒトはなぜ自殺するのか 死に向かう心の科学』死について考えることと、生について考えること - HONZ
    hanemimi
    hanemimi 2021/03/13
  • 『恐れのない組織――「心理的安全性」が学習・イノベーション・成長をもたらす』チーム研究の第一人者が唱える「心理的安全性」とは? - HONZ

    『恐れのない組織――「心理的安全性」が学習・イノベーション・成長をもたらす』チーム研究の第一人者が唱える「心理的安全性」とは? 組織の中で、自分の発言が曲解されてしまうのではないかとか、それで足を引っ張られるのではないかと心配しだしたら、表立った発言は控えるようになり、裏で根回しするようになるのではないだろうか。 今回の東京五輪・パラリンピック組織委員会会長の女性理事登用についての発言も、むしろそうしたありがちな状況を積極的に利用して会議を早く終わらせてしまおうという、いかにも日的なものだったのではないかと思う。 こうした問題は、組織で働いたことがある人なら、多かれ少なかれ誰でも経験しているはずである。そうした何とも言えない嫌な空気から解放された組織を、「恐れのない組織(The Fearless Organization)」という分かりやすい言葉で示してくれたのが書である。 書は、『

    『恐れのない組織――「心理的安全性」が学習・イノベーション・成長をもたらす』チーム研究の第一人者が唱える「心理的安全性」とは? - HONZ
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    hanemimi 2021/02/07
  • 『アルツハイマー征服』連帯が連帯を生む、絶望の中の希望の物語 - HONZ

    現在、全世界で約5000万人の患者とその家族が苦しんでいるアルツハイマー病は、完全に治す方法がないことで知られている。高齢化が進む日で、今後アルツハイマー病による認知症がさまざまな課題を発生させていくことは想像に難くない。 しかしこの病に関する研究が進み、現在では治療への大きな希望が見えてきているのだという。書はそんなアルツハイマーという病の征服に挑んだ人々の挑戦記だ。 青森に住む、ある家族の話から書は始まる。その一族は、長身の美男美女が多い家系でよく繁栄したが、なぜか40代、50代になると、認知症を発症する者が多かった。患者の死後に解剖すると、通常はみっしりと折り重なり隙間などないはずの大脳が、くるみのようになり、脳溝がすかすかに広がっていたという。 ここから話は一気に、アルツハイマー病の正体を突き止めようとする人たちの壮大なバトンリレーへ転じる。ある人は利他的な気持ちから克服の道

    『アルツハイマー征服』連帯が連帯を生む、絶望の中の希望の物語 - HONZ
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    hanemimi 2021/02/06
  • 『眠りがもたらす奇怪な出来事──脳と心の深淵に迫る』 夢遊運転病、セクソムニア、非24時間睡眠覚醒症候群 - HONZ

    『眠りがもたらす奇怪な出来事──脳と心の深淵に迫る』 夢遊運転病、セクソムニア、非24時間睡眠覚醒症候群 睡眠――。人生における多くの時間が費やされているにもかかわらず、それにはいまだ多くの謎が残されている。書は、奇怪とも言える睡眠障害の症例を足掛かりとしながら、それらの謎に迫らんとする快著である。 著者のガイ・レシュジナーは、睡眠を専門とする高名な神経科医である。彼が勤務するロンドンの睡眠障害クリニックには、種々の問題を抱えた患者がイギリス中から集まってくる。それらの症例はじつに不可思議で、彼らの経験談はじつに衝撃的だ。その点を鮮やかな筆致で描き出しているところが、書の大きな魅力のひとつであろう。 たとえば、70代女性のジャッキーの話。彼女は幼少の頃より夢遊病に悩まされてきた。ただ彼女の場合、眠りながら立ち歩いたり、眠りながら飲をしたりするだけではない。なんと彼女は、服を着替え、ヘ

    『眠りがもたらす奇怪な出来事──脳と心の深淵に迫る』 夢遊運転病、セクソムニア、非24時間睡眠覚醒症候群 - HONZ
    hanemimi
    hanemimi 2020/08/30
  • 『ブルシット・ジョブ クソどうでもいい仕事の理論』世界はくだらない仕事にあふれてる - HONZ

    待ちに待った邦訳がようやく出た。 デヴィッド・グレーバーの『ブルシット・ジョブ』である。 「ブルシット・ジョブ」とは、「クソどうでもいい仕事」のことだ。 もう少し丁寧に説明すると、「なんのためにあるのかわからない、なくなっても誰も困らない仕事」のことである。 近年、私たちの身の回りでブルシット・ジョブが増えている。 そして、確実にこの手の仕事は、働く人々の心身を蝕んでいる。 多くの人がこのことにうっすら気づいていたようで、2013年に著者があるウェブマガジンで「ブルシット・ジョブ現象について」という小論を発表したところ、国際的な反響を呼んだ。書はこの小論をベースに、その後の調査や考察を加えて一冊にまとめたものだ。コロナ禍でエッセンシャル・ワーカーに注目が集まる中、時宜にかなった出版といえる。まさにいま読むべき旬の一冊だ。 著者のデヴィッド・グレーバーは、イギリスの名門大学、ロンドンスクー

    『ブルシット・ジョブ クソどうでもいい仕事の理論』世界はくだらない仕事にあふれてる - HONZ
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    hanemimi 2020/08/26
  • 『ドリーム・ハラスメント 「夢」で若者を追い詰める大人たち』大志を抱かない生き方は許容されるか? - HONZ

    書は、大人たちの「夢を持て」「大志を抱け」という温かなアドバイスが数多の若者たちを苦しめている事実を剔出する一冊である。なんだそりゃ、軟弱すぎる、大袈裟だ、そんなわけない……などと憤る方は多いだろう。だが、大学の事務職員として学生のキャリア支援と講演活動を精力的に行ってきた著者は、一万人以上の若者の生の声を聞き、もはや看過できない域に達していると痛感する。今の時代、将来の夢の話はただの嫌がらせになるリスクのほうが高いのだ。 とはいえ、あらかじめ断っておくと、このの目的は犯人の糾弾ではない。なぜ夢の話がハラスメント化したのか。第一、夢とは何か。夢の持てる状況とはどのように生じるのか。こうしたメカニズムを詳らかにした上で、多様な生き方を受け容れる社会とはどんなものか思案・思索していく内容となっている。 まずは現状認識から。将来の夢なんかない。やりたいことがよくわからない。自分のキャリアビジ

    『ドリーム・ハラスメント 「夢」で若者を追い詰める大人たち』大志を抱かない生き方は許容されるか? - HONZ
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    hanemimi 2020/07/19
  • 『ポスト・スポーツの時代』いま、私たちが見ているのは、これまでとは違う「スポーツ」だ - HONZ

    プロスポーツの試合が再開され、スタジアムに観客も戻ってきた。 だが野球もサッカーもすっかり様変わりしてしまった。withコロナ云々を言いたいのではない。もちろんそれもあるが、実は今回のコロナ禍以前に、野球もサッカーも大きく変質していたのだ。いま私たちが目にしているのは、これまでとは違う別の競技であるとすら言えるかもしれない。書はこれを「ポスト・スポーツ」と呼ぶ。 スポーツにどんな変化が生じたのか。そのことにいち早く気がついていたのは、あのイチローだった。昨年、現役引退を発表した記者会見で、イチローはきわめて重要な発言をした。メジャーリーグでの選手生活を振り返り、2001年と2019年とでは、野球の種類が変わってしまったと述べ、現在は「頭を使わなくてもできる野球になりつつある」と危機感を表明したのだ。 ここ数年、メジャーリーグを席巻している「フライボール革命」をご存知だろうか。メジャーでは

    『ポスト・スポーツの時代』いま、私たちが見ているのは、これまでとは違う「スポーツ」だ - HONZ
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    hanemimi 2020/07/18
  • 『ルポ百田尚樹現象』私たちが知りたかった「社会の見取り図」がここにある! - HONZ

    職場のそばにわりと大きめの書店がある。いつの頃からか売れ筋の棚に「反日」や「愛国」を打ち出したばかり並ぶようになった。百田尚樹はその棚の常連である。一昨年出版された『日国紀』もいまだに棚の一角を占めている。『日国紀』は関連をあわせ累計100万部を突破したというし、『永遠の0』や『海賊とよばれた男』のようなメガヒット作品もある。百田はいまもっとも売れるを出す作家だ。 ネットでもその存在感は大きい。ツイッターのフォロワー数は約46万で、その発言はしばしばネットニュースになる。中国韓国をボロクソにけなしたかと思えば、新型コロナウイルス対策で安倍首相を痛烈に批判する。リベラル陣営はそのたびに苛立ったりざわついたり翻弄されながらも発言から目が離せない。百田がインフルエンサーであることは衆目の一致するところだろう。「百田尚樹」は、いまやその固有名を超えて、ひとつの「現象」であると言っていい

    『ルポ百田尚樹現象』私たちが知りたかった「社会の見取り図」がここにある! - HONZ
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    hanemimi 2020/07/01
  • 『ファシズムの教室 なぜ集団は暴走するのか』日常に潜む小さなファシズム - HONZ

    数年前のこと、ツイッターで奇妙な動画を見た。揃って白いシャツにジーンズを身につけた大勢の若者たちが、「リア充爆発しろっ!」と大声で叫んでいる動画だ。声を揃え息を合わせ、大声で唱和している。「なんだこりゃ?」。 どれどれと検索してみると、ある大学で行われている「ファシズムの体験学習」だという。どうやらその動画は、周りで見物していた学生が撮ったものらしいが… 甲南大学文学部の田野大輔教授のファシズム体験学習である。 田野教授が「田野総統」、学生たちは「田野帝国の国民」となって行なわれるロールプレイングを通して、人々がファシズムを受け入れるときどのような感情の動きがあるのかを体験させ、いわば「ファシズムに対するワクチン」となるような気づきを得ることを目的としている。 体験学習は2回にわたって行う。大教室に集まった250人で行う大規模ロールプレイだ。1回目。「独裁」を体験するのだからなんといっても

    『ファシズムの教室 なぜ集団は暴走するのか』日常に潜む小さなファシズム - HONZ
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    hanemimi 2020/06/24
  • 『謎のアジア納豆』 - HONZ

    書店で書を手にとって、巻頭パラパラと数ページめくってからこの解説文で概要を知ろうとする人も多いと思うので、まず結論から言う。 このは傑作だ。あなたの納豆観を覆し、しかも納豆を入り口にアジア中の辺境民族文化の旅へと誘い、さらに現代におけるディープな旅とは何か?という問いかけまでが含まれている。「買おうかな?どうしよっかな?」と悩んでいる暇はない。今すぐレジに持っていって納豆をべながら書を貪るように読まれたい。以上終わり! …というのは解説文としては不親切なので、数ページもらって書の魅力、そして納豆文化の魅力についてガイドしようと思う。申し遅れたが、僕は発酵文化の専門家として、世界各地の不思議な発酵や微生物を訪ねてまわるのを生業としている。文中の著者の問いかけに僕なりに答える形式で、の理解をさらに深める手伝いができれば幸いだ。(ちなみにここから先はネタバレを多数含むので、もう絶

    『謎のアジア納豆』 - HONZ
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    hanemimi 2020/06/11
  • 『ワイルドサイトをほっつき歩け』愛すべきおっさんたちの愚かで優しい日々 - HONZ

    世界が激動・混迷するこの時代、「おっさん」たちは何かと悪役にされていた。 トランプ大統領が誕生したのはおっさんのせいで、EU離脱もおっさんのせい。(中略)セクハラもパワハラもおっさんのせいだし、政治腐敗や既得権益が蔓延るのもおっさんたちのせい。 どこの国でもそうなのか、諸悪の根源のように言われている巷のおっさんは当にそんなにひどいのか。 中学生の息子の見た世界、『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』が大ヒットしたイギリス在住の物書き、ブレイディみかこさんが今回ターゲットにしたのは、彼女の身のまわりに生息する「おっさん」たちだ。(一部人も含めたおばさんも) 彼女が観察するのは『ハマータウンの野郎どもー学校への反抗・労働への順応』で紹介された1977年出版当時の、英国労働者階級のガキどもの成れの果てだ。そのころ18歳とすると、いまや60歳オーバー。反抗的で反権威的なくせに、既存の階

    『ワイルドサイトをほっつき歩け』愛すべきおっさんたちの愚かで優しい日々 - HONZ
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    hanemimi 2020/06/03
  • 『ステレオタイプの科学』 色眼鏡で見られると本当にできなくなってしまう - HONZ

    「女性は数字に弱い」「高齢者は記憶力がわるい」「日人はアフリカ系の人に比べて身体能力で劣っている」。わたしたちはしばしば過度の一般化を行い、特定のステレオタイプをとおして周囲の人を眺めてしまう。そして、そうしたステレオタイプがときとして深刻な偏見や差別を生み出してしまうことは、多くの人が知っているとおりである。 だが、ステレオタイプがもたらす悪影響はどうやらそれだけではないようだ。なんと、否定的なステレオタイプをとおして眺められると、眺められたその人は、学業やスポーツ、仕事などで実際にパフォーマンスが落ちてしまうというのだ。 書は、アメリカの著名な社会心理学者クロード・スティールによるものである。スティールを有名にした研究のひとつが、「ステレオタイプ脅威(stereotype threat)」に関するものである。そして、そのステレオタイプ脅威こそが、先に述べたパフォーマンスの低下を引き

    『ステレオタイプの科学』 色眼鏡で見られると本当にできなくなってしまう - HONZ
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    hanemimi 2020/05/03
  • 『孤塁』初めて語られた双葉郡消防士たちの「あの日」 - HONZ

    あの日、あなたはどこで何をしていただろうか。 2011年3月11日、福島県双葉郡では、多くの学校で卒業式が執り行われた。子どもたちは通い慣れた校舎に名残惜しさを感じながら、未来への希望に胸を膨らませていたに違いない。だが14時46分、巨大地震がこの地を襲った。 書は、双葉郡の消防士たちが初めて「あの日」について語ったノンフィクションである。震災について書かれた多くのノンフィクションの中でも出色の一冊だ。 書の優れている点。それはプロフェッショナルの証言に基づいているところだ。私たちは現実を見ているようで、案外見ていない。事故現場の取材で目撃者に話を訊くと、「とにかく驚いた」とか「ドカーンと音がして気がついたら倒れていた」とか、目の前で起きたことを描写するのではなく、単なる感想や擬音で雰囲気だけを伝えるケースがよくある。無理もない。私たち素人は、想定外の出来事を前にすると動転してしまうの

    『孤塁』初めて語られた双葉郡消防士たちの「あの日」 - HONZ
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    hanemimi 2020/02/17
  • 『生まれてきたことが苦しいあなたに 最強のペシミスト・シオランの思想』人生がどうしようもないほど暗くむなしいときに悲観を楽しむ方法論 - HONZ

    『生まれてきたことが苦しいあなたに 最強のペシミスト・シオランの思想』人生がどうしようもないほど暗くむなしいときに悲観を楽しむ方法論 告白しよう。評者はずっと、なるべく他人と関わりたくないと祈りながら生きてきた。楽しいことも悲しいことも何も経験したいと思わない。誰かと揉めたり争ったりするなどもってのほかだ。人生の糧になる? 知るか。全部ストレスだ。願いは一つ、社会的接点を一切放棄して、永遠に寝床で布団にくるまっていたい……。 こんな暗い感情を披瀝したところで会話が盛り上がるはずがなく、賛同が得られるわけでもなし、むしろメソメソうるさい奴だ、望みどおり早く消えればと思われておしまいだ。だから書を読んだとき、やっとこの始末に負えない思いを打ち明けられる、と晴れやかな気分になった。助かった。自分の抱えてきた屈はすべて思想家エミール・シオランが書いてくれていた。書は、彼の人生とそのペシミズム

    『生まれてきたことが苦しいあなたに 最強のペシミスト・シオランの思想』人生がどうしようもないほど暗くむなしいときに悲観を楽しむ方法論 - HONZ
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    hanemimi 2020/02/07
  • 『本を売る技術』本屋における暗黙知がこの1冊に! - HONZ

    書店員の仕事にはマニュアルがなく、口伝や仕事を盗んで覚えるしかないと言われてきた。そんな中『を売る技術』というが売っていたので買ってみたところ、書には自分が書店員になったときに口伝で教わったことや、誰からも教わることなく、働いていた間にトライ&エラーを繰り返して、最適解だと思ってやっていた技術が書かれていた。書を読み終えたとき、書店員になったときに、このがあれば、あんなに苦労しなくても済んだのに!という思いが強く残った。 書店を辞めてから5年近くが経ち、だんだん書店員時代の記憶もうすれつつある。自分が書店員時代に見聞きした、書店における暗黙知のようなものが、書には論理的にまとめられていた。ここまで書店員の仕事を論理的に書いてあるはいままで見たことがない。とりあえず全書店員は書を教科書のように読んだらいいと思う。加えて、10年間書店員として働いていた際、自分が意識していたこと

    『本を売る技術』本屋における暗黙知がこの1冊に! - HONZ
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    hanemimi 2020/01/30
  • 『反穀物の人類史──国家誕生のディープヒストリー』 農業の優越性という神話、国家の形成をめぐるパラドックス - HONZ

    『反穀物の人類史──国家誕生のディープヒストリー』 農業の優越性という神話、国家の形成をめぐるパラドックス いまからおよそ1万年前、人類は農業を発明した。農業が生まれると、人びとは必要な栄養を効率的に摂取できるようになり、移動性の狩猟採集生活から脱して、好適地に定住するようになった。そして、一部の集住地域では文明が興り、さらには、生産物の余剰を背景にして国家が形成された──。おそらくあなたもそんなストーリーを耳にし、学んだことがあるだろう。 しかし、かくも行き渡っているそのストーリーに対して、書は疑問符を突きつける。なるほど、初期の国家はいずれも農業を基盤とするものであった。だが、人類はなにも農業を手にしたから定住を始めたわけではない(後述)。また、メソポタミアで最初期の国家が誕生したのは、作物栽培と定住の開始から4000年以上も後のことである。それゆえ、「農業→定住→国家」と安直に結び

    『反穀物の人類史──国家誕生のディープヒストリー』 農業の優越性という神話、国家の形成をめぐるパラドックス - HONZ
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    hanemimi 2020/01/03
  • 麻酔で意識が落ちた時、何が起こっているのか──『意識と感覚のない世界――実のところ、麻酔科医は何をしているのか』 - HONZ

    麻酔で意識が落ちた時、何が起こっているのか──『意識と感覚のない世界――実のところ、麻酔科医は何をしているのか』 歴史、特に最悪の医療の歴史などを読んでいると、あ〜現代に生まれてきてよかったなあと、身の回りに当たり前に存在する設備や技術に感謝することが多い。昔は治せなかった病気が今では治せるケースも多いし、瀉血やロボトミー手術など、痛みや苦しみを与えるだけで一切の効果のなかった治療も、科学的手法によって見分けることができるようになってきた。 だが、そうした幾つもの医療の進歩の中で最もありがたいもののひとつは、麻酔の存在ではないか。正直、麻酔のない世界には生まれたくない。切ったり潰したりするときに意識があるなんてゾッとする──現代の医療に麻酔は絶対絶対必須だ。そのわりに、患者に麻酔を施す麻酔科医の仕事は光が当たりづらい分野である。何しろ実際に手術や治療を担当することはめったにないから、麻

    麻酔で意識が落ちた時、何が起こっているのか──『意識と感覚のない世界――実のところ、麻酔科医は何をしているのか』 - HONZ
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    hanemimi 2019/12/25
  • 動物を愛し性を意識する人々 『聖なるズー』 - HONZ

    今年度の開高健ノンフィクション賞を受賞した傑作だ。京都大学大学院で「文化人類学におけるセクシュアリティ研究」に取り組む女性が、単身ドイツに渡り、複数の動物性愛者(ズー)の家を泊まり歩いて丹念に取材している。最初私は「動物性愛」ときいて腰が引けたが、興味が打ち勝って書を開いた。すると、こんな書き出しが待っていた。 私には愛がわからない。 ひと口に愛といっても、いろいろなかたちがあるだろう。 この書き出しに続いて、長年受けてきた性暴力についての著者の自分語りが始まる。それは、動物性愛研究の動機でもあり、また、著者がズーの質に迫ることができた理由でもある。書には欠かせない告白だ。このプロローグを読めば、異種間の性に対する興味位のではないことがわかり、私は思わず引きこまれてしまった。 異種間の性といっても、獣姦と動物性愛が似て非なるものであることを、最初に断っておかなければならない。とき

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    hanemimi 2019/12/17
  • 日本の科学は失速状態 『誰が科学を殺すのか 科学技術立国「崩壊」の衝撃』 - HONZ

    の科学は失速している。一昨年の3月、ネイチャー誌に掲載されたレポートは大きな反響を呼んだ。一般の人たちには驚きを持って迎えられたようだが、多くの研究者にとっては、やはりそうかという感じであった。 『誰が科学を殺すのか』は、企業の「失われた10年」、「選択と集中」でゆがむ大学、「改革病」の源流を探る、海外の潮流、の4章から構成されている。毎日新聞に掲載された「幻の科学技術立国」シリーズが元になっただ。 大学に関しては、行きすぎた選択と集中、地方国立大学の疲弊、若手研究者の待遇の悪さ、博士課程進学者減少などが紹介されており、内部で実感していることと完全に一致する。 どのテーマについても、客観的かつ冷静な記述と考察がなされている。わかっているにもかかわらずマスコミがなかなか書かなかったiPS細胞関連予算の問題点についても、果敢に踏み込んでしっかりと書かれている。 ネイチャー誌の記事以来、論

    日本の科学は失速状態 『誰が科学を殺すのか 科学技術立国「崩壊」の衝撃』 - HONZ
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    hanemimi 2019/12/13