歴史と檜が香る建物の中に近未来を思わせる銀色の円形舞台。 榧盤の前にはメタリックに輝くロボットアーム。 背広にネクタイの棋士とジーンズにパーカーの開発者。 いくつものミスマッチが電王戦の非日常をより一層際立たせる中、第3局は始まりの時を迎えた。 深々と一礼をした稲葉陽七段に対し、コンピュータソフト「やねうら王」の指し手を担当するロボットアーム「電王手さん」も器用にボディを折り曲げて一礼を返す。なめらかで優美なその佇まいは、ロボットというより芸術品の趣。 初手の瞬間を狙うカメラマンが息をひそめ、一瞬の静寂が対局場を包んだ後、稲葉七段が動き出す。無数のシャッター音が響く中、彼の美しい指先は歩をつまみ、しっかりとした手つきで▲2六歩と着手した。 普段は寝付きの良い彼もこの日ばかりはあまり眠れなかったそうだが、早朝に30分ほど散歩に出掛けてすっきりしたと、対局場に向かう道すがら話してくれた。 その
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