その日は突然やってきた。「コンピュータが人間を超えるには最低でもあと10年はかかる」――そういわれていた囲碁の世界で、米Googleが開発した囲碁AI(人工知能)「AlphaGo」(アルファ碁)が人間のトップ棋士相手に完勝した。 “人類代表”としてAIと戦ったのは韓国出身のプロ棋士、イ・セドル九段だ。ここ10年の囲碁界では世界最強と目され、そのあまりの強さに「魔王」の異名を取る彼を、Googleは対戦相手に指名した。対局は五番勝負で、2016年3月9日から15日までの1週間をかけて行われ、どちらかが先に3勝したとしても5戦すべてを最後まで戦い抜く契約になっていた。 結果は第3局までを終えて、AlphaGoの3戦全勝。あまりに底の知れない強さに、「このまま人間側の全敗が濃厚なのでは」という声も高まる中で、その手は打たれた。第4局目、やはりAlphaGoが優勢と見られていた局面で、イ・セドル九