夕方、京阪に乗って大阪まで行った時、なぜ自分が京阪電車を好きか少し分かった気がした。 ちょうど日暮れの時間帯。 遠くで雪が降っている時によくそうなるのだが、空の薄桃色がいつもより高くまで染められ、まるで周囲を淡いヴェールの筒に包まれたような夕刻。 京阪電車は低い民家や畑の間を緩やかなカーブを描きながら走っていく。 その時、京阪の良さはこのあたりの風景にあるのではないかと思ったのである。 阪急やJRで京都から大阪に行く場合、最初から最後まで似たような郊外住宅地の景色が続き、関西大都市圏が果てしなく広がっているという印象を受ける。 だが、京阪は違う。京阪は名前の通り、京都という都市と大阪という都市を結ぶ列車なのである。そしてその間には畑と田んぼの世界が広がっている。 中書島を過ぎれば京都の端まで来たことを告げる工業地帯が続き、宇治川・木津川・桂川の三川が合流するあたりはどこの秘境かといった趣き