ブックマーク / himaginary.hatenablog.com (531)

  • クルーグマンがファンブルしたこと - himaginary’s diary

    クルーグマンが、自らの1990年代末の日に関する分析を振り返り、自分の最良の仕事であった、と書いている。そして、モデルを書き下ろすまでは流動性の罠など幻想に過ぎず、日の金融当局が仕事をしていないだけだと思っていたが、モデルを書いてみたらそうではなく、流動性の罠が現実であることを認識した、と述べている。 今までもクルーグマンは同様のことを度々述べているが、今回、その際に失敗も犯したことをさりげなく認めている。 Oh, and the model also said positive things about fiscal policy — actually, a multiplier of one even with full Ricardian equivalence, although I bobbled that in the original paper, because I d

    クルーグマンがファンブルしたこと - himaginary’s diary
  • 失業給付延長の限定的なマクロ経済的影響 - himaginary’s diary

    失業給付の延長が雇用に与えた影響についての研究はこれまでも紹介したことがあったが(ここ、ここ)、その件についてのまた新たな表題のNBER論文が上がっている。原題は「The Limited Macroeconomic Effects of Unemployment Benefit Extensions」で、著者はGabriel Chodorow-Reich(ハーバード大)、Loukas Karabarbounis(シカゴ大)。 以下はその要旨。 By how much does an extension of unemployment benefits affect macroeconomic outcomes such as unemployment? Answering this question is challenging because U.S. law extends benef

    失業給付延長の限定的なマクロ経済的影響 - himaginary’s diary
  • 医者は間違いを犯す、よって治療法が改善できる - himaginary’s diary

    コロンビア大のW. Bentley MacLeodが「Viewpoint: The Human Capital Approach to Inference」というNBER論文(ungated版)を書いている(H/T Francis Diebold)。以下はその要旨。 The purpose of this essay is to discuss the “human capital” approach to inference. Observed decisions by experts can be used to organize data on their decisions using simple machine learning techniques. The fact that the human capital of these experts is heterogeneo

    医者は間違いを犯す、よって治療法が改善できる - himaginary’s diary
  • インフルエンザ・パンデミック・リスクの総コスト - himaginary’s diary

    というNBER論文をサマーズらが書き、サマーズHPで紹介されている(ungated版もアップされている)ほか、こちらのサイトでは皮肉交じりに紹介されている。原題は「The Inclusive Cost of Pandemic Influenza Risk」で、著者はVictoria Y. Fan(ハワイ大)、Dean T. Jamison(UCサンフランシスコ)、Lawrence H. Summers(ハーバード大)。 以下はその要旨。 Estimates of the long-term annual cost of global warming lie in the range of 0.2-2% of global income. This high cost has generated widespread political concern and commitment as m

    インフルエンザ・パンデミック・リスクの総コスト - himaginary’s diary
  • インフレ期待に関する誤解 - himaginary’s diary

    デロングが自戒の意味を込めて、クルーグマン「The Return of Depression Economics」(1999年*1)に対する当時の書評を再掲している。自戒の意味を込めて、というのは、以下の記述が誤っていたことを人も認めているためである。 But at this point Krugman doesn't have all the answers. For while the fact of regular, moderate inflation would certainly boost aggregate demand for products made in Japan, the expectation of inflation would cause an adverse shift in aggregate supply: firms and workers wo

    インフレ期待に関する誤解 - himaginary’s diary
  • 学業成績ベースのインセンティブ効果:ランダム化実験からの証拠 - himaginary’s diary

    というNBER論文をスティーブン・レヴィットらが書いている。原題は「The Effect of Performance-Based Incentives on Educational Achievement: Evidence from a Randomized Experiment」で、著者はSteven D. Levitt(シカゴ大)、John A. List(同)、Sally Sadoff(UCサンディエゴ)。 以下はその要旨。 We test the effect of performance-based incentives on educational achievement in a low-performing school district using a randomized field experiment. High school freshmen were pro

    学業成績ベースのインセンティブ効果:ランダム化実験からの証拠 - himaginary’s diary
  • 企業の高収益の意味を判断するのは時期尚早? - himaginary’s diary

    昨日紹介したサマーズの企業収益に関する考察はエコノミスト誌のカバーストーリーを受けたものだったが、同じカバーストーリーを見てConversable EconomistブログのTim Taylorも企業収益について考えを巡らせている。 以下はその概要。 GDPに対する比率などで見た場合、近年の企業収益の増加は明確。だが、1950〜70年代の収益も高水準で、1980年代と1990年代が相対的に低かった。 企業の高収益を所得格差と結び付けて論じる人もいるが、1950〜70年代の格差が低かったことと70年代に格差拡大が始まったことを考えると、その関連性はまったくもって明確ではない。 税引き前と税引き後の差は1950〜70年代に大きかった。法人税のGDPに対する割合は時を追って縮小しており、特に企業収益の高かった1950〜70年代に大きく縮小した。近年の高収益は税引き前と税引き後の両方の利益に表れて

    企業の高収益の意味を判断するのは時期尚早? - himaginary’s diary
  • 企業の高収益と長期停滞仮説 - himaginary’s diary

    について「Corporate profits are near record highs. Here's why that’s a problem.」と題した論説でサマーズが論じている(H/T Economist's View;初出はWaPoのWonkblog)。 記事の冒頭でサマーズは、米国企業の利益率が史上最高に近いこと、利益のうち資に回る割合も同様であること、および、トービンのqレシオやGDPに対する比率で見た株価も歴史的に見て高い水準にあることを記している。これらのことは、資の限界生産力、即ち、新規設備投資の見返りが非常に高いことを意味しており、一見すると、サマーズが主唱する長期停滞仮説と矛盾する。というのは、長期停滞仮説の中核には、投資が不活発であることが慢性的な総需要不足につながる、というストーリーがあるからである。 これについてサマーズは、安全資産の利率が低いこと、および

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  • 偏っている可能性のある統計から学ぶこと:アルゼンチンにおける家計のインフレ認識と予想 - himaginary’s diary

    というNBER論文が上がっている(ungated版)。原題は「Learning from Potentially-Biased Statistics: Household Inflation Perceptions and Expectations in Argentina」で、著者はAlberto Cavallo(MIT)、Guillermo Cruces(国立ラプラタ大)、Ricardo Perez-Truglia(マイクロソフトリサーチ)。 以下はその要旨。 When forming expectations, households may be influenced by the possibility that the information they receive is biased. In this paper, we study how individuals learn

    偏っている可能性のある統計から学ぶこと:アルゼンチンにおける家計のインフレ認識と予想 - himaginary’s diary
  • デロング=サマーズに消費増税を当てはめたら - himaginary’s diary

    ツイッターなどでの消費税の影響に関する議論を見て、ふと、デロング=サマーズ論文の計算に消費税を当てはめたらどうなるだろうか、ということが気になった。そこで、ここで紹介した一連の関係式を、財政刺激策から消費増税に置き換えたら(即ち、ΔGを-YnΔtに置き換えたら)どうなるかを考えてみた。 乗数効果(ここでYnは現在のGDP、mは乗数、tは税率を指す) (1) ΔYn = -mYnΔt 乗数効果による税収のキックバックを考慮した債務減少分(ここでDは政府債務を指す) (2) ΔD = -(1 - mt)YnΔt *1 乗数効果による将来のGDPの押し下げ効果(ここでYfは将来のGDPを指す) (9) ΔYf = sΔYn 財政政策を消費増税に置き換えたので、「債務GDP比率を一定に保つために必要な増税」は行わないことになり、それに関係する式は考慮しなくて良いことになる。ただ、増税によるラッファ

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  • プロパガンダの限界:チャベスのベネズエラからの実証的結果 - himaginary’s diary

    というNBER論文が上がっている。原題は「The Limits of Propaganda: Evidence from Chavez's Venezuela」で、著者はBrian Knight(ブラウン大)、Ana Tribin(コロンビア中銀)。 ungated版の導入部では、プロパガンダに対する人々の反応をベネズエラのデータから実証する方法について以下のように説明している。 We investigate these issues using high-frequency television ratings data from the country of Venezuela, where Hugo Chavez and his successor have routinely used cadenas, speeches by government officials that a

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  • NYの最低賃金引き上げは福音となるか? - himaginary’s diary

    アンドリュー・クオモNY州知事が最低賃金を一時間当たり9ドルから15ドルに引き上げようとしているが(NY市では2018年末まで、それ以外の地域では2021年7月1日まで)、それは生活水準にプラスの影響をもたらす半面、雇用全体にはマイナスの影響はもたらさない、という研究結果をUCバークレーのバークレー・ニュースが伝えている(H/T Economist's View)。論文の著者はMichael Reich、Sylvia Allegretto、Ken Jacobs、Claire Montialoux(いずれもUCバークレーのIRLE[ Institute for Research on Labor and Employment]所属)。 以下は同記事が伝える結果概要。 NY市の労働力人口の約37%が恩恵を蒙る。2021年半ばまでに320万人近くの労働者が平均23%の賃金増を得る。 最低賃金より

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  • 自由貿易の恩恵の虚実 - himaginary’s diary

    クルーグマンが、保護主義者は常に自由貿易の負の側面を誇張し、自由貿易論者は常に自由貿易の正の側面を誇張する、と論じた(ここ、ここ)。 それに対しデロングが以下のように異を唱えた。 ...looking around the world we see a world in which income differentials across high civilizations were twofold three centuries ago and are tenfold today. The biggest factor in global economics behind the some twentyfold or more explosion of Global North productivity over the past three centuries has been the

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  • リカードからの意外な贈り物 - himaginary’s diary

    ブランコ・ミラノビッチが、パトリック・コルクホーンの社会表*1およびロバート・アレンの近刊「The Industrial Revolution: A Very Short Introduction」を基に、リカードが「経済学および課税の原理」で問題視した穀物法が継続していた場合の所得配分を試算している。ミラノビッチによれば、リカードは、所得の土地、資、労働への機能的配分は厳密に定義したものの、他の古典派や後の限界主義者と同様、個人所得の配分はあまり気に掛けなかったという。というのは、マルクスと同じく、階級の所得が決まれば個人の所得は自ずと決まると考えていたから、とのことである。 しかしリカードが攻撃していた穀物法は個人ベースの所得配分も悪化させていた、としてミラノビッチは以下の数字を示している。 地主 資家 労働者 人口比(%) 1.3 3.2 61 18世紀末時点の所得(×生活可能

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  • 最低賃金を引き上げるべき理由 - himaginary’s diary

    引き続き最低賃金ネタ。Economist's ViewのMark Thomaが、theFiscalTimesで最低賃金引き上げを訴えている。 彼の論旨は概ね以下の通り。 労働市場での賃金決定は、経済学の教科書通りに労働者の限界生産力に等しくなるように決まるわけではなく、労働者と経営者の交渉力によって決まる。 労働者の生産性が上がって製品の付加価値が増えても、追加収入の大部分が経営側に渡ってしまった、というのが近年起きたことであり、それが格差拡大にもつながった。 労働者側の交渉力を引き上げる一つの方法は組合。だが、右派の政治家が制定した法律や、企業が海外もしくは組合の力が弱い州に移転する能力により、組合の力は損なわれている。 労働者側の交渉力を引き上げるもう一つの方法は最低賃金引き上げ。最低賃金労働者は元々交渉力が乏しいが、最低賃金引き上げはその乏しい交渉力の代わりとなる。 最低賃金引き上げ

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  • カードが最低賃金や移民の研究をやめた理由 - himaginary’s diary

    昨日引用したカードの記事から、別の箇所を引用してみる。昨日引用した箇所では彼の研究を攻撃する人への彼の不満が述べられていたが、以下では逆に彼の研究を祭り上げる人への不満が述べられている。 His empirical work has always been shaped by a degree of uncertainty. “Our basic state of knowledge in economics is way below where you would think it was,” he says, adding that “the thing that annoys noneconomists about economists is their unbelievable certainty that they know what they are talking about

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  • ジョン・ベイツ・クラーク賞が後味の悪いものとなる時 - himaginary’s diary

    5日エントリで触れたIMF季刊誌「Finance & Development」の3月号では、人口特集のほかに、カード=クルーガー論文で有名なデビッド・カードの人物紹介記事も掲載されている。その中でカードは、ジョン・ベイツ・クラーク賞を受賞した時の経験を以下のように語っている。 On these fronts and others, Card’s research rocked the boat, generating a degree of excitement but also significant skepticism. If Card and his critics could agree on one thing, however, it was that bucking the trend—even if just a little too much—was, at that

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    helioterrorism
    helioterrorism 2016/03/10
    (本題とは関係ない)デビッド・カードで検索するとデビットカードの情報ばかりが出てくる問題。
  • 市場が今政府に懇願していること - himaginary’s diary

    27日ブログエントリでクルーグマンが、公共投資を今推進すべき理由を3つ挙げている。最初の理由については以下のように書いている。 The first case is simply that America has an obvious infrastructure deficit, and that it has never been cheaper to address that deficit. Government borrowing costs are at record lows; markets are in effect pleading with the government to borrow and spend. So why not do it? It’s completely crazy that public construction as a percentage

    市場が今政府に懇願していること - himaginary’s diary
  • 道具にして規則に非ず:経済学入門で我々は間違った原理を教えているのか? - himaginary’s diary

    Eastern Economic Journalの最新号でDavid Colanderが表題の小論を書き(原題は「Tools, Not Rules: Are We Teaching the Wrong Principles of Economics in the Introductory Course?」)、マンキューの提唱する経済学の十大原理への修正を提案している(H/T マンキューブログ)。 以下はその修正案*1。 トレードオフ原理 フリーランチというものは無いが、時々サンドイッチを掠めることはできる*2。 (標準版)人々はトレードオフに直面している:あるものを得るためには何かを諦めなくてはならない。意思決定においてはある目標と別の目標を引き換えにすることが要求される。 機会コスト原理 機会コストは、明確および明確でないトレードオフに関する経済学者の費用便益の枠組みに焦点を当てるもので

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  • 世界人口の地殻変動 - himaginary’s diary

    「Global Demography: Tectonic Shifts」と題したConversable EconomistブログエントリでTim Taylorが、人口動態を特集したIMFの季刊誌「Finance & Development」*1の3月号から、デビッド・ブルーム(David Bloom)ハーバード大教授の筆頭論文「Taking the Power Back」の内容を引用している。以下はその孫引き。 ●世界人口の変化 Ninety-nine percent of projected [population] growth over the next four decades will occur in countries that are classified as less developed—Africa, Asia (excluding Japan), Latin Ame

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