随分と古臭い根性論だが、気持ちは分かる。何しろ眼前のネタは地元・広島を舞台とする大型事件。<地元紙の意地を見せてやろう>。本書がそう記す通り、元法相夫妻が大規模な選挙買収に手を染めた前代未聞の事件を巡る報道は、週刊文春がその嚆矢(こうし)を放った。 メディアの形態に貴賤(きせん)などない。ただ、かつてなら新聞が担ったであろうお株を「文春砲」に奪われ、そんな風景が当然視される昨今、中国新聞は違った。直ちに買収事件の本筋をスッパ抜き返す。 それだけなら、地元紙の意地を見せた武勇伝に過ぎないが、その後も中国新聞は違った。この国の「金権政治」の病巣はどこにあり、それと「決別」するにはどうすべきか。<根っこを断つ必要がある>。記者たちはさらに奔走し、集票目的で地方議員らにカネをばらまく与党政治の構造悪を解き明かし、政権中枢が絡む「金権政治」の核心に迫っていく。