旅の楽しみの極みは、初めて訪れた見知らぬ街を当てもなく彷徨い歩くことに尽きる。「迷子になることは、都市を本当に体験する唯一の方法なのだ。」 著者は、「この本は、自分の好きなページから読んでもらいたい」と、まえがきで述べる。8章から構成されたオムニバス映画のような本書は、読者を積極的に迷子に誘うのだ。「迷子になることは心配しなくてもいい」と。 「第1章 到着」では、アステカ帝国の湖上の都市テノティティトランが、突然、眼前にその優美な姿を現す。「第2章 歴史」は、もちろん都市を発明したシュメールから始まり、ルネサンスの画家、フラ・カルネヴァーレの「理想都市」も紹介される。「第3章 習慣」では、筆記やカーニバルや神の家(聖都)が取り上げられる。「第4章 滞在」では、ホテルが(スラム街も)、「第5章 町をさまよう」では、地下鉄等の交通手段が、「第6章 マネー」では、市場・交易からスリや百貨店まで言