トップ > Chunichi/Tokyo Bookweb > 書評 > 記事一覧 > 記事 【書評】 ゴッホの耳 天才画家最大の謎 バーナデット・マーフィー 著 Tweet 2017年10月29日 ◆素直な目と行動力で迫る [評者]藤田一人=美術評論家 姉の死と自身の病気をきっかけに一人の女性がゴッホの耳切り事件の真相究明にのめり込み、七年の歳月をかけて一つの結論にたどり着く。本書はその軌跡と成果が情感豊かに綴(つづ)られる。 著者はそれまで、ゴッホの作品を数点しか観(み)たことがなかったという。そんな素人が、世界中の専門家によって研究が積み重ねられてきたゴッホ最大の謎に挑むというのは、無謀な試みと言えなくはない。ただ、素人ゆえに専門家の盲点をつくこともできる。彼女の豊かな想像力と我武者羅(がむしゃら)な行動力、そして時間と手間を惜しまない丹念な実証努力が、それを可能にした。 一次資料のゴ