トップ > Chunichi/Tokyo Bookweb > 書評 > 記事一覧 > 記事 【書評】 震美術論 椹木野衣 著 Tweet 2017年12月10日 ◆自然への畏敬を軸に [評者]五十嵐太郎=建築批評家 震える大地において、いかに美術が可能か。リスボンの地震、インドネシアの津波、ベネチアやブリスベンの水害など、自然災害は各国で発生しているが、日本は世界的に見ても稀(まれ)な災害多発列島である。蓄積の歴史によって成立する西洋の美術とは違い、都市が一瞬のうちに破壊されたり、安定した美術館さえままならない日本の美術は、自然への畏敬と恐れがすり込まれているのではないかと、著者は問いを立てる。 3・11の衝撃を受けて執筆された本書は日本の地質学的な特性を確認しつつ、被災地での見聞をもとに科学的な手法ではとらえられない伝説や神話的な想像力の重要性を唱え、災害に触発されたアーティストや建築家
(白水社・7344円) 人文学の文化遺産 本書『ボーリンゲン』の副題は、「過去を集める冒険」という。そこで言う「過去を集める」とは、人類の文化遺産を後世に伝えることだ。最先端の科学技術ばかりが脚光を浴びる世の中で、こうした人文学の営みはとかく軽視される傾向にある。本書が描き出すのは、一九四二年に設立され、出版事業と学術研究支援を二十年余りにわたって続けた、ボーリンゲン基金という団体の歴史であり、そのまわりに集った知の文化人たちのポートレートである。 人文学を探索する者なら誰でも、少なくとも何冊かは、ボーリンゲン叢書(そうしょ)から出版された書物に触れたことがあるはずだ。ジョーゼフ・キャンベルの『千の顔を持つ英雄』、『易経』、ケネス・クラークの『ザ・ヌード』、ゴンブリッチの『芸術と幻影』、エリアーデの『永遠回帰の神話』などなど。そうした古典とも呼ぶべき名著の数々を、わたしたちはそれがどこから
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