「原爆の父」と呼ばれた物理学者の生涯を描き、米アカデミー賞で作品賞など7冠に輝いた映画「オッペンハイマー」が、全米公開から8カ月遅れて29日に日本でも公開される。原爆被害の描写などを巡って議論を呼んできた作品。原爆投下を経験した日本でどう受け止めれば良いか、映画評論家の関口裕子さんと考えた。(石原真樹) 作品に、被爆地を撮影した映像をオッペンハイマーが見ているシーンはあるが、被爆者の姿や市街の描写は出てこない。彼が自責の念にかられ反核に転じていく姿から、クリストファー・ノーラン監督が原爆を肯定していないことは分かるが「一瞬でも被爆地の惨状が挿入されていれば多くの人に原爆の悲惨さを知ってもらえたのに…」というのが記者の率直な感想だ。 「ノーラン監督はインタビューなどで『原爆は否』と言っている。作品でオッペンハイマーは、研究に夢中なマッドサイエンティストにも上昇志向の強い人間にも見え、研究に対