ブックマーク / dain.cocolog-nifty.com (19)

  • おかしな議論にごまかされないための『論証のルールブック』

    『論証のルールブック』は、簡潔で説得力のある文章を書くためのルールが、50にまとめられている。1つのルールに1つの例文、1つの解説という構成で、このそのものが簡潔さを目指している。 ごく基的な常識レベルのものから、見落としがちな盲点まで、まんべんなく網羅されているのがいい。いくつか紹介する。 主張には根拠が必要だ 数字は他のエビデンスと同じような検証が必要だ 長文の論証や、口頭で伝える際、サインポストを活用する 論点先取の見抜き方 「主張には根拠が必要だ」なんて、当たり前すぎて、なにを今さらと感じるかもしれない。確かにその通りだろう。だが、実際に、事実のフリをした意見や、根拠レスの主張に出会ったとき、即座に見抜けるだろうか。 たとえば、この主張なんてどうだろう。 聖書に神は存在すると書かれているから、神は存在する 聖書は神が書かれたのだから、正しい これは、結論が前提に含まれた有名な例

    おかしな議論にごまかされないための『論証のルールブック』
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    hide_nico 2019/10/20
  • 知の泥棒の歴史『図書館巡礼』

    図書館巡礼』は、書物と図書館について四方山話を集めた一冊だ。「」を追い求める営みが真摯で、ひたむきであればあるほど、常軌を逸した書痴っぷりが伝わってきて、非常に楽しい。 知の泥棒の歴史図書館巡礼』の著者は気づいていなさそうだが、書は、知の泥棒の歴史に見える。 口伝、写、書物、ROM、媒体は異なれども、人は知を集めようとしてきた。知は必ずしも正当な方法で集められるとは限らない。ひそかに盗み出されたり、言葉巧みに持ち出されそのまま帰ってこなかったり、ときに権力者によって強制的に収奪されることもある。 さらに、知の集積所である図書館には、知識だけでなく、知を司る人や、それを複製する人、売り買いする人たちが集まる。中には不心得者がいて、写を失敬し、売りさばいたり自分のモノにする人もいる。 こうした知の泥棒たちは、自分の行為をやましいと思っていない。むしろ、その書物の当の価値を知って

    知の泥棒の歴史『図書館巡礼』
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    hide_nico 2019/04/26
  • 苦しまないと死ねない国で、上手に楽に死ぬために『医者には絶対書けない幸せな死に方』

    生活や仕事の質を上げるテクニックが「ライフハック」なら、書は、安らかに死ねるためのテクニックを集めた「デスハック」である。QOL(Quality Of Life)ならぬQOD(Quality Of Death)を向上させるノウハウ集やな。 「平均寿命」-「健康寿命」≒ 10年 日人の8割は病院で死ぬが、病院では迎える死は「安らか」でない場合が多いという。なまじ延命治療技術が発達してしまったため、病院のベッドに何か月も縛り付けられたまま拷問のような状態で死に至る人が大勢いるらしい。 WHOによると、「健康寿命」の定義は、「医療や介護に依存せず、自力で生活ができる期間」になる。日人の平均寿命(2016)と並べると、こうなる。 健康寿命/平均寿命 男  71歳 / 80歳 女  74歳 / 87歳 つまり、死ぬ前に、男は10年、女は12年程度、医療や介護のお世話になる期間があることが見込ま

    苦しまないと死ねない国で、上手に楽に死ぬために『医者には絶対書けない幸せな死に方』
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    hide_nico 2019/03/03
  • 『眼の誕生』はスゴ本

    「世界の見えかたが一変する」という意味で、目からウロコの一冊。 先入観やバイアスは、明示されるまで気づかない場合が多い。例示されて初めてハッとする。それまで、「見えている」と思っていたものが、実は「見て」すらいなかったり、「見える=存在する」という思い込みの強さに囚われていたことに気づく。 見えていない ≠ 存在しない わたしの「世界の見えかた」を変えたのが、爆撃機の話だ。第二次大戦中、敵機の攻撃から生還した爆撃機を調査した統計学者が、ある提言をした。それは、「被弾箇所(赤ドット)ではなく、空白部分を強化すべし」というのである。なぜなら、空白箇所に被弾した機は、そもそも生還しなかったからという理屈だ。 「生存バイアス」とも呼ばれるこの理屈、ポイントは「見えている」という時点で何らかの選択がされていることだ。したがって、「むしろ見えていないものは何か?」という観点から「それはなぜか?」を考え

    『眼の誕生』はスゴ本
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    hide_nico 2019/01/23
  • 『愛とか正義とか』はスゴ本

    当たり前だと思っていたことが、あたりまえでないことに気付き、根から世界が刷新される。もちろん刷新されたのは世界ではなく、わたしだ。OSレベルで無意識のうちにしてきた「考える」を、あらためて知る。読前読後で世界を(わたしを)変えるスゴなり。 書は、哲学・倫理学の入門書になるのだが、そこらの「哲学入門」ではない。「自分で考える」ことを目的とした入門書という意味で、まったく新しい。 なぜなら、そこらの「哲学入門」は、哲学していないから。むしろ反対に、「哲学しないこと」を目指している。つまりこうだ、イラストや図解や簡単なセリフにまとめた哲学者や論を紹介しているだけにすぎぬ。哲学とは、「自分で考える」ことなのに、それを捨て去って、「これが哲学ですよ」という「答え」を提示しているのだ。 もちろん、「自分で考える」よすがとして過去の哲学者をとりあげ、たとえば現代的な問いに対し斬り込み方や論の立て方

    『愛とか正義とか』はスゴ本
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    hide_nico 2018/02/04
  • 読書猿『問題解決大全』はスゴ本

    一生役立つ一冊。 これ、言い切っていいと思うが、わたしが直面するあらゆる問題は、検討済みである。 新しい問題なんてものはない。「問題」をどの抽象度で定義するかにもよるが、新しく「見える」だけで、分析してみれば、分解してみれば、裏返してみれば、再定義すれば、古今東西の人たちがすでに悩み、検討し、着手し、対処してきた問題であるにすぎぬ。 ただし、対応する人にとってみれば、それは新しい問題である。または、初見の状況に直面することもある。だが、人や状況が違えども、問題そのものは、ほどいてみれば、既出なのだ。新しい状況下で、新しい人が、既出の問題を解き直しているといえる。 そして、問題を解決するための方法もまた既出である。わたしが知らないだけで、古今東西の人たちがすでに考え抜いている。ある手法は学問分野になっていたり、またある方法はライフハックやビジネスメソッドになっていたりする。規制や法制度化され

    読書猿『問題解決大全』はスゴ本
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    hide_nico 2017/11/28
  • 人は歌で進化した『人間はなぜ歌うのか?』

    「ロックンロールは骨で聴く」というセリフが好きだ。人類の大半が肉体を捨て、電脳世界で暮らすSF映画『楽園追放』のセリフだ。そこでは、音楽を始め、あらゆる快楽を享受することができる。そんな時代に、生身の体を持ったある男が、ロックは骨で聴くものだとつぶやく。 これ、すごく分かる。 彼のようギターを抱えて弾いても分かるし、ライブやコンサートの大音量に包まれても分かる。音楽は、確かに耳からの音を通じて聴くものだが、それだけではない。顔や腕の皮膚や、足下・体の芯から振動を感じ取るものだ。 なぜなら、体の外から入ってきた音楽が自身と一体化し、自分の中に音楽があることに気づくから。わたしの声が、鼓動が、手拍子が、足踏みが音楽と呼応するものだから。ロックンロールに限らず、音楽は身体で感じ、共に歌い、叩き、踊るもの。静聴を求められるクラシックのコンサートでも、最後は万雷の拍手で応えるでしょ。それも同じことだ

    人は歌で進化した『人間はなぜ歌うのか?』
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    hide_nico 2017/09/01
  • 『土木と文明』はスゴ本

    土木から見た人類史。めちゃくちゃ面白い。 土木工学とその影響という切り口で世界史を概観する。テーマは、都市、道路、橋、堤防、上下水道、港湾、鉄道などに渡り、テーマごとに豊富な事例で紹介する。土木技術の発展なしには文明も発達せず、また文明の発展につれて土木技術も発達してきた。そうした土木工学と文明の関わりを歴史的に串刺しで見ることができる。 大きなものから小さなものまで、人が手がけてきた土木事業は、それこそ星の数ほどある。それをどうやって整理するか。書は、そのとき直面した問題(治水、防衛、流通、疫病対策等)と、利用できるリソース(人・技術・時間)、そして成し遂げられた結果(土木事業)という観点で整理しているのが素晴らしい。 面白いことに、問題と対策という視点で眺めると、時代や地域を超えた普遍性が現れてくる。異なる時代・地域の人々が、それぞれに知恵を絞り、そのときに手に入るリソースを駆使した

    『土木と文明』はスゴ本
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    hide_nico 2017/09/01
  • 東大の科学がスゴい『科学の技法』

    東大の理系は、一年生から「科学の技法」を叩き込まれる。 『知的複眼思考法』を読んだとき、批判的に読み・考えるトレーニングを徹底させる東大の文系が羨ましいと思った。『科学の技法』を読んだいま、科学の技法をゼミナール形式で学べる東大の理系が羨ましい。 東大で始まった新しい試み「初年次ゼミナール理科」が凄い。 理系の一年生は全員必修で、1クラス20名の少人数を、教師+TA(ティーチングアシスタント)できめ細やかに指導する。学術的な体験(アカデミック体験)を通じて、サイエンティフィック・スキル(科学の技法)を修得することを目的としている。 この科学の技法が羨ましい。前半が「基礎編」で、あらゆる研究をする上で基礎的となるだけでなく、仕事にも必須なスキルが紹介されている。後半が「実践編・発展編」で、研究チームを意識できるようなゼミを「ラボ」として開講し、そこで基礎的な演習を行う(垂涎だらけなり)。 ◆

    東大の科学がスゴい『科学の技法』
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    hide_nico 2017/07/10
  • 老人は 死んでください 国のため 『大滅亡(ダイ・オフ)』

    ある議員によると、21世紀は「灰色の世界」だという。働かない老人がいつまでも生きていて、それに税金を使わなければならないから。 「乳牛は乳が出なくなったら屠殺場へ送る。豚は八カ月たったら殺す。人間も、働けなくなったら死んでいただくと大蔵省は大変助かる。経済的に言えば一番効率がいい」 [第104回国会 大蔵委員会 第7号]より 生産性原理主義を忠実に推し進めるとこうなる。タイトルの川柳は、そうした風潮を揶揄したものらしい[街の灯]より。一定年齢に達したら、年金をはじめ国家の保障を打ち切る、『定年退』や、ついでに糧問題も解決してしまう『ソイレント・グリーン』『ゆめいろハンバーグ』のディストピアが浮かぶ。だが、田中光二『大滅亡』は、もっと巧妙だ。ハクスリー『すばらしい新世界』の枠組みを使いながら、いかにも日らしいジメッとした陰謀を描き出す。 そこでは、極少子・超高齢化で滅びゆく日の、最後

    老人は 死んでください 国のため 『大滅亡(ダイ・オフ)』
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    hide_nico 2016/03/08
  • 人生は予習だ『医者とホンネでつきあって、明るく最期を迎える方法』

    がんを宣告されたとき、やってはいけない最たるものは、「検索」だろう。 不安な気持ちで薬剤や療法を検索すると、高確率で「特効」に行き当たる。「医師に殺される」「医者にかかわるな」という煽り文句で副作用をあげつらわれると、不安が不審に変わる。そして、揺らいだ心に寄り添うように、「がんが消える」と謳われると、疑う動機が小さくなる。 厄介なのは、「がんが消える」と謳っている人が、れっきとした医師だということだ。「医者の言うことだから」「100%治ると断言しているから」と思考停止になり、信じてしまうかもしれない。こういう、リテラシーが残念な人は、世の中に数多くいる。おかげで患者をいものにして肥え太る者がいる。そんな連中は、バカは死ななきゃ治らない『「ニセ医学」に騙されないために』で予習した。 だが、もし自分が大きな病気になったとき、バカにならない自信はない。なぜなら「安心」が人質にされているから。

    人生は予習だ『医者とホンネでつきあって、明るく最期を迎える方法』
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    hide_nico 2016/03/08
  • この本がスゴい!2014

    人生は短く、読むは尽きない。 せめて「わたし」が知らない凄いと出合うべく、それを読んでる「あなた」を探す。それがこのブログに込めた意味であり、このブログを通じて数え切れないほど「あなた」に教わった。「自分の興味=世界のすべて」という独善に陥りそうなわたしの蒙を何度も開いてくれた。そんな「あなた」に感謝を込めて、今年読んだ中から選んだ。 ここで紹介するのは今年読んだスゴの一角かつ100%わたしの趣味だ。もっと多様でさらに熱いのを求めるなら、facebook「スゴオフ」をご覧あれ。面白いをリアルに相互に紹介しあう、宝の山脈になっているから。 フィクション きんいろモザイク 原悠衣 芳文社 かわいいは正義だ。 大事なことだからもう一度、かわいいは正義だ。痛勤電車で揉まれ、仕事でシバかれ、暗い欲望に惑いまくりの中年には、可愛い女子高生のゆるふわな日常が、ものすごく効く。ギスギス息苦しい空

    この本がスゴい!2014
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    hide_nico 2014/12/01
  • 大学教師が新入生に薦める100冊

    ドカ読み上等!若さに任せて読みふけろ、読むべきを読み干すべし。 このリストは、以下の4500冊超の中から、読むべき100冊を選んだもの。だから、「大学新入生に薦める」というより、若かったわたしに読ませたいリストであり、もう若くないわたしが読むべきリストなのだ。しょうもない新刊ばかり追いかけて踊らされているわたしの目を覚まし、叱咤激励するリストなのだ。 書籍『東大教師が新入生にすすめる』文藝春秋編 書籍『東大教師が新入生にすすめる<2>』文藝春秋編 書籍『教養のためのブックガイド』小林康夫ほか 書籍『大学新入生に薦める101冊の』広島大学101冊のプロジェクト編 書籍『大学新入生に薦める101冊の 新版』広島大学101冊の委員会編 書籍『必読書150』柄谷行人ほか サイト[東京大学 学科別 分類による推薦図書] サイト[は脳を育てる 北大教員による新入生への推薦図書] TV番

    大学教師が新入生に薦める100冊
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    hide_nico 2014/06/18
  • 『ゲーデル、エッシャー、バッハ』はスゴ本

    一生モノの一冊。 「スゴ=すごい」の何が凄いのかというと、読んだ目が変わってしまうところ。つまり、読前と読後で世界が変わってしまうほどのこそが、スゴになる。もちろん世界は変わっちゃいない、それを眺めるわたしが、まるで異なる自分になっていることに気づかされるのだ。 『GEB(Godel, Escher, Bach)』は、天才が知を徹底的に遊んだスゴ。不完全性定理のゲーデル、騙し絵のエッシャー、音楽の父バッハの業績を"自己言及"のキーワードとメタファーで縫い合わせ、数学、アート、音楽、禅、人工知能、認知科学、言語学、分子生物学を横断しつつ、科学と哲学と芸術のエンターテイメントに昇華させている。 ざっくりまとめてしまうと、書のエッセンスは、エッシャーの『描く手』に現れる。右手が左手を、左手が右手を描いている絵だ。「手」の次元で見たとき、どちらが描く方で、どちらが描かれている方なのか、

    『ゲーデル、エッシャー、バッハ』はスゴ本
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    hide_nico 2014/05/12
  • 人類を定義する一冊『人類はどこから来てどこへ行くのか』

    挑戦的なタイトルで「人類とは何か」に迫った一冊。 大上段で、具体的で、断定的で、しかもツッコミまくる読書になる。私だけが真実に最も近いという自負心が透け見えて面白い。強引なレトリックに鼻白むことはあっても、その主張が核心を突いていることが感じられ、興奮させられる。賛否は割れるだろう。だが、「人類とは何か」について考えさせるのが著者の目的だとすれば、書は大成功しているといえる。 著者はハーバード大学の生物学者。分子遺伝学、神経科学、進化生物学、考古学、生態学、社会心理学、歴史学の視点から、ゴーギャンがタヒチで書き付けたこのテーマを照らす。 われわれはどこから来たのか われわれは何者か われわれはどこへ行くのか 「われわれは何者か」この認識は、立場や自尊心によって歪められる。神学者からファシストまで、特定のイデオロギーの信奉者は、「人類の性」を自分に都合良く定義してきた。特に経済学者に多い

    人類を定義する一冊『人類はどこから来てどこへ行くのか』
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    hide_nico 2013/12/28
  • 『食品偽装の歴史』はスゴ本

    嫁さんがぷんぷん丸でござる。 何ごとかと聞いてみたところ、「芝エビがね!」「ローストビーフが!」とのこと。なるほど品偽装か。年末とかに定期的に流行るよね。確かにブランドイメージは傷つくかもしれないが、エビや牛肉に限った話じゃないよ。安さを追求した(追求させた)結果なんだし。 「それ、何のこと?」と問われる。ほら、回転寿司の「マグロ」があるじゃない。魚屋の結構な値がついているマグロが、コンベアの上だとなぜか安くなるのは、営業努力だけじゃないよ(NAVERまとめ[代用魚])。「マグロ」に限らず、スーパーの「シシャモ」「ベーコン」のような、“安すぎるもの”には理由がある。世間には欺瞞が溢れているのだから、嘘ノー残デーとか偽乳のほうが実質的に問題だろ……と言ったら「一緒にすんな」と怒られた。 ちょっと思い出すだけでも、BSE(狂牛病)や毒ギョーザ、雪印といったキーワードから、産地偽装や賞味期限の

    『食品偽装の歴史』はスゴ本
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    hide_nico 2013/12/07
  • 『ヨーロッパ史における戦争』はスゴ本

    戦争は社会を規定し、社会は戦争を規定する。 ヨーロッパ史を通じ、戦争歴史と社会の変遷は両軸を為していることが分かるスゴ。ヨーロッパ社会はもとより、今日の歴史戦争を通じていかに形成されてきたかについて理解できる。 戦争が常態化している中、平和とは単なる一時的な秩序に過ぎないのはなぜか。戦争の原因として宗教や経済から眺めるのは、見えてる部分だけで語ることに過ぎぬ。戦争歴史を通じて社会にロックインされており、この現状を築き上げたのは、他ならぬヨーロッパだということが分かる。 ヨーロッパの歴史を考察し、社会変化に伴う戦争の様相の変遷を概観した一冊。わずか250頁に1000年間の戦争歴史が包括的かつ体系的に圧縮されており、戦争を考える上で入門書であり基書になる。 書は、政治、経済、社会制度、技術戦争目的、そして現実の戦争の様相の相互関係を明確化している。著者は、社会が変化するに従って

    『ヨーロッパ史における戦争』はスゴ本
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    hide_nico 2013/10/03
  • アイドルは殺されなければならない『金枝篇』

    100年前、英国のフレイザーによって著された『金枝篇』を読むと、「王殺し」は世界的に共通な風習であることが分かる。そして、現代では王の代わりに「アイドル」が、その役割を果たしていると考えることができる。 物語作家にとって、『金枝篇』は宝の山だ。人類学・民俗学・神話学・宗教学の基書であり、世界中の魔術・呪術、タブー、慣習、迷信が集められている。スケープゴート、死神の追放、外在魂、樹木崇拝、王と祭司のタブー、王殺し……おびただしい事例と、膨大な文献の引用で成り立っており、「からできた」という異名の通り。 物語背景や世界観、ガジェット、仕掛けとなる材料がてんこ盛りで、たとえば『まどか☆マギカ』のソウルジェムは、「民話における外在の魂」の章に出てくる「ソデワ・バイの首飾り」から拝借しているだろうし、シャーリイ・ジャクソン『くじ』は、「スケープゴート」の章で紹介される風習そのままだ。独創的であ

    アイドルは殺されなければならない『金枝篇』
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    hide_nico 2013/09/22
  • 科学とは何か『科学論の展開』

    科学の質に迫るスゴ。無批判に科学を信仰する者は悶絶する。 「科学」とは何か。実験で立証されたから?再現性があるから?反証に耐えてきたから?この問いをハッキリさせ、それに答えようとする試みが、書だ。帰納や演繹を始め、クーンのパラダイム論やラカトシュの研究プログラム、実証主義やベイズ主義など、科学哲学の議論を噛み砕き、咀嚼し、批判する。 「科学」の確からしさを信じる人は、衝撃を受けるに違いない。「科学」という確固たる観念があって、それが紆余曲折を経てきたのではないことが分かるから。その観念自体も揺れて再定義されてきたのだ。 たとえば、科学の「正しさ」を帰納に求める人がいる。実験や観察といった事実から理論を導き出しているから、正しいというのだ。これには七面鳥の喩え話を紹介する。飼育場で育てられている七面鳥は、「毎朝餌をもらえる」という結論を出すのだが、翌日はクリスマス・イヴで、首を切られて

    科学とは何か『科学論の展開』
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    hide_nico 2013/07/25
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