『渋沢栄一伝記資料』とデジタル化の現在 渋沢栄一記念財団情報資源センター・茂原暢(しげはらとおる) ●はじめに 渋沢栄一(1840年-1931年)にとって2021年は特別な年となった。没後90年であることに加え,NHK大河ドラマ「青天を衝け」によりその人生が約1年間にわたり描かれた。そして彼の記録をまとめた『渋沢栄一伝記資料』は刊行完結から50年を迎えたのである。本稿では『渋沢栄一伝記資料』のデジタル化プロジェクトについて紹介する。 ●『渋沢栄一伝記資料』とは 『渋沢栄一伝記資料』(以下「『伝記資料』」)は,渋沢の伝記が多数書かれたとしても,それらが必ずしも正確さや詳細さにおいて十分ではないとの認識から,伝記を書くための資料を広く収集・編纂した「資料集」である。渋沢栄一記念財団(以下「財団」)の前身となる竜門社の企図により1932年に編纂開始,太平洋戦争による中断を挟み,同社の後継となる渋