優しくて暖かい──そんな「うそ」を通じて、何かを取り戻す物語。独特の雰囲気も、演出も音楽も良かったと思うが、そうして上がった期待度の割には、核心の部分でインパクトが弱かったのが残念なところ。 「うそつき」が集う都会「桜乃」。 独特の雰囲気や世界観を持って始まる話であったが、 日常パートでは、その場の楽しみも、引き込まれる要素も少なめ。 ただ、その中でも、時折出てくる思わせぶりなセリフや回想に、 この世界に込めた何かを期待して読み進めていた。 その核心に辿り着くのが、鈴のルート。 正直に言えば、あのような飛んだ設定にしてまで、 込めたかったところは見えてこなかったのだが、 「うそ」に関する話は印象に残っている。 うそ。 それは、時に、悪くもあり良くもあり、冷たくもあり暖かくもあり── 「ねえ、兄さん。うそはね、願いによく似ているの」 「そして、”憧れ”」 「ねえ、にいさん。昔の人はね、”凄く