親しい友人、肉親、あるいは恋人や配偶者に向かって「二度と口を利かない」と宣言したことがある人は少なくないだろう。だが、その決意が長く続くことはめったにない。時間が経てば、そう決意させるに至った怒りや不信感も氷解していく。 ベン・グロコック君は、赤ん坊のときから喉が腫れたり、中耳炎などを患ったりすることが多かった。病院の医師たちは母親のリンダさんに対し、ベン君に扁桃腺とアデノイドを切除する手術を受けさせるべきだと勧めた。リンダさんは、医師の勧めに従うことにした。ベン君が3歳のときのことだった。 だが、ベン君は幼いながらも手術を受けることをたいそう嫌がった。絶対に嫌だと抵抗し、もし本当に手術を受けさせるなら、もう誰とも口を利かないと宣言したのである。 全身麻酔下での手術が無事成功してベッドの上で目を覚ましたベン君は、その宣言を決して忘れていなかった。家族の者が声をかけても、一切の会話を拒んだ。