研究テーマは実世界指向インタフェース。従来型のGUIやデスクトップ・メタファといった概念を超えた新しいインタラクション技術だ。利用者の置かれている状況を察知し、利用者が操作指令をしなくても、実世界での生活をコンピュータが自然に支援してくれる。そんな研究の成果のひとつが、2008年の日経BP賞を受賞した「PlaceEngine」。無線LANアクセス・ポイントのビーコン信号を利用する位置測定技術だ。 アイデア自体が斬新だが、WiFiのみで位置情報の取得が可能なこの技術の本質は、パーソナライズされた情報をコンピュータが蓄積できることにある。例えば、よく行く街などの行動の嗜好がわかることで、新しい店舗情報などの欲しい情報が欲しいときに入る世界の扉が開くのだ。驚くべきは、こんなアイデアを、ユビキタスなる言葉がまだ珍しかった10年も前から考えていた。それが暦本氏である。 今のコンピュータというのは、情