1月の能登半島地震では、災害関連死も含めて300人を超える人が犠牲になっただけでなく、大地にも大きな影響があった。その一つが、海岸近くの海底が盛り上がってあらわになった「隆起」で、数千年に1度の規模とされている。ところで、隆起に伴って新たに生じた陸地は一体誰のものになるのだろうか――。 驚きの光景で我が目を疑う 「本当か。これ全部が……」。目の前の光景に驚きのあまり思わず声を上げ、自分の目を疑ったという。 日本海に面した海岸で、海岸線が幅数百メートルにわたって最大で約100メートルも沖へ後退し、海面だった所にはゴツゴツとした白い岩がむき出しになっていた。 能登半島の最北端に位置する石川県珠洲(すず)市の仁江(にえ)地区で暮らす中谷久雄さん(69)が元日の地震後に見たのは、そんな海底隆起による光景だった。 今回の地震で隆起したのは、珠洲市から志賀町まで半島の北西岸の海岸線85キロ。日本地理学