著者は、少子高齢化で集落が消滅した事例はないという。集団移転事業、公共工事、廃鉱による廃村、自然災害による分散転居など人為的あるいは自然条件によるものが原因か、あるいは地場産業が国際的な市場経済の波を受けて衰退していってしまった結果であるケースの方が多い。狩猟採集や農耕を基盤とした集落の経済が、効率が悪いと切り捨ての対象のように言われ始めたのは、グローバル経済が日本に浸透してきた10年ほど前からである。 とはいえ、地方における過疎化は深刻だ。人口はいまも首都圏、中部経済圏、関西地域に集中しており、地方が大都市に従属する構造は変わっていない。その典型的なかたちのひとつは原子力発電所の立地だろう。長く弘前大学で教鞭をとってきた著者は、地元青森県の下北半島にも足を運び、過疎と原発に挟まれた現状をつぶさに調査する。ただし本書の主眼はそうした構造を告発することにあるのではない。「今回の震災では『原子