定時制高校2年の久美は自らの体に起こる異変に気づいていないわけではなかった。深夜アルバイトの最中に倒れたことは1度や2度ではなかったし、ぜんそくと腹痛がやむこともなかった。それでも、病院へ行くことをためらったのには理由がある。父親の洋平が営む廃品回収行が赤字続きで、国民健康保険料を滞納していたため、無保険状態だったのだ。家計を支えるために働く久美は、病院へ行くことはおろか、家で安静にしていることすら許されなかった。 保護者が国民健康保険料を払えないことによる子どもの無保険状態を改善するため、2010年7月から高校生世代にも短期保険証が交付されるよう法改正が行われた。厚生労働省によると、短期保険証の交付者は久美のような高校生だけでも1万人を超えるということだ。学校基本調査によると、2011年度の全国の高等学校数はおよそ5000校なので、どの学校にも2人程度はこのような状況の生徒がいる計算とな