◇現代の錬金術師たち ◇佐藤健太郎(さとう・けんたろう=サイエンスライター) 昨年、尖閣諸島沖漁船衝突事件にからんで中国の禁輸措置が取り沙汰されるなど、今やレアメタル問題は国際情勢の台風の目となっている。レアメタルは各種ハイテク機器にとって必須であり、日本経済の生命線を握る資源であることは詳述するまでもあるまい。磁石に用いられるネオジムやジスプロシウム、電池に用いられるリチウムやコバルト、LED(発光ダイオード)に用いられるガリウムやインジウムなどが代表的なもので、これらは希少であるうえに新しく作り出すこともできない。 経済産業省の定義によれば、物質を構成する基本要素である元素のうち、レアメタルは半分近くの47種にも上る(図1)。それぞれ用途や産出国、埋蔵量など事情は異なるが、共通しているのは資源の偏在という問題だ。 たとえばレアメタルの中でも重要な希土類元素(レアアース)供給の97%まで
耐久実験が続く鋼材を納めた電気炉(右端)と木村一弘さん=東京都目黒区の物質・材料研究機構で、山田大輔撮影 鋼材を高温にして引っ張り続けている「物質・材料研究機構」の実験の期間が世界最長を達成する見通しになった。今から40年以上前、寿命を正確に予測し、発電所や工場などでの事故を防ぐ目的で始まった。今月27日未明、独シーメンス社が樹立した35万6463時間の記録を塗り替える。機構はギネスブックに事前申請した。 実験は東京都目黒区にある機構で行われている。炭素と鉄を含んだ鋼材の丸棒(直径1センチ、長さ5センチ)を電気炉で400度に熱し、約2.4トンの力で引っ張る。これまでのデータから、政府の火力発電所の設計基準が改定され、微量金属の混合で寿命が約1000倍に延びることが判明した。 実験が始まったのは69年6月、米アポロ11号が「月の石」を持ち帰る1カ月前。高度成長期で建設ラッシュにわいたが、国産
収納容器をなぞったヘラの先端部の電子顕微鏡画像。丸で囲んであるのが、岩石質など従来見つかっていたものと異なる微粒子=JAXA提供 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は25日、小惑星探査機「はやぶさ」が持ち帰ったカプセルの調査で、地球外物質の可能性がある微粒子が約860個に増えたと発表した。大半が電子顕微鏡でようやく判別できる微粒子で取り扱いが難しいため、成分などの分析法を検討している。調査は継続中で、数はさらに増えそうだ。 JAXAはテフロン製ヘラ(長さ6ミリ、幅3ミリ)で、小惑星「イトカワ」の物質を集める小部屋の内壁をこそぎ、電子顕微鏡でヘラに付着した物質を調べている。約3週間でヘラの半分を調べた結果、ケイ素やマグネシウムなどを含んだ直径0.01ミリ以下の微粒子が約800個見つかった。はやぶさ打ち上げの際に混入した桜島(鹿児島県)の噴煙か、イトカワ表面のちりかを見分けるには、詳細な分析が必
◇強酸性中和で堆積の石こう 草津温泉の硫黄分などで強酸性の河川を中和する過程で生じた石こうを堆積(たいせき)させる目的で、六合村に建設された品木ダムが、満杯になる恐れが出てきた。堆積量がしゅんせつ量を上回っているためで、湖底が水面下5メートルまで迫っている。品木ダムは鳩山内閣が建設中止を表明している八ッ場ダム計画を進めるため建設された経緯があるが、地元関係者は八ッ場ダムの中止表明に続く難題への対応に苦慮している。 品木ダムが建設された湯川水系(湯川、大沢川、谷沢川)の水は、草津白根山と草津温泉の硫黄分が流入する強酸性水。下流の吾妻川は鉄やコンクリートを溶かし、魚の住めない「死の川」と呼ばれた時代もあった。 強酸性の水は飲料水に適さない。そのため、下流に利水・治水目的で建設予定だった八ッ場ダム計画は53年に一時中断。県が酸性水の中和工場と品木ダムの建設を進め、八ッ場ダム計画が復活した経緯があ
10月21日午前0時ごろの東京の空。オリオン座流星群は中央の放射点から飛び出すように現れる ※国立天文台の資料を基に作成 06年以降活動が活発化しているオリオン座流星群が今月中旬から下旬にかけて観測できる。多いときで1時間当たり40~50個の流星の出現が予想され、今年は18日が新月のため月明かりの影響が少なく、絶好の観測条件となった。次に活発化するのは約70年後とみられ、国立天文台(東京都三鷹市)は、出現のピークとされる19日深夜~23日未明の4夜、全国の観測者にインターネットを通じて結果を報告してもらうキャンペーンを実施する。 オリオン座流星群は、ハレー彗星(すいせい)が放出したちりの群れを地球が横切った際、地球の大気に飛び込んだちりが発光して起こる。通常の出現数は多くても1時間当たり20個程度だったが、06年に同50個以上と急増し、観測者を驚かせた。分析の結果、約3000年前に放出され
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