父のお下がりで貰った大切な青いドラムはドラムと呼べる形ではなかった。 漁師の祖父が建てた立派な我が家は今じゃ更地。 祖母の嫁入りの際に持って来た着物は海で若布のように漂う。 来るはずもない山の上に妹の通信簿。 若かりし頃の母の写真から海の匂い。 全部ガレキって言うんだって。 全部ガレキって言われるんだって。 町は被災地と呼ばれた。 ただの高校生が被災者と呼ばれた。 あの子は思い出になった。 上を向いて歩こうと、見上げる空は虚無の青。 頬を伝う涙なんて、とっくの昔に枯れちゃった。 頑張るしかない。渇いた笑いが吹き抜ける。 ガレキの受け入れ反対‼と TVで見たんだ妹と。 昨日までの宝物。今日は汚染物と罵られる。 子供を守れ‼受け入れ反対‼国も県も何してる‼ ガレキと暮らす私達。 好きで流されたんじゃないのに…。目から流れた涙は懐かしい海の味。 こんな悲しいモノを見るくらいなら、受け入れなんて最