『恋するアダム』(イアン・マキューアン 著/村松潔 訳)新潮クレスト・ブックス 主人公の恋路を邪魔するAIアダムは、この物語の悪役といってもよい。だが彼がHAL9000やターミネーターと一線を画すのは、想い人の気を引こうとこんな俳句を詠んでしまうところだ。「彼女の愛に満ちたまなざしに/全宇宙が含まれている。/宇宙を愛そう!」 海外で盛んに作られているHAIKUは、鈴木大拙が禅と結びつけて紹介したことから、日本人の考える自然観照をベースにしたものとは異なり、観念的、抽象的な内容が多い。それにしてもこのアダムの処女作はこちらが恥ずかしくなるが、驚くべきことに彼は「切字」という俳句独自の様式もマスターしようと張り切り、実際、作中で彼の作品はだんだん上達していく。なにより興味深いのは、その俳句論だ。アダムによれば「俳句は未来の文学形式」。なぜか。文学のほとんどは人間の愚かさ、残酷さに根差したもので
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