振り返ってみたら、過去数週間は「尖閣事件」のことばかり書いてきた。確かに大事な問題には違いないが、現代中国が抱える懸案はこれだけではないはずだ。 今回は反省も込めて、尖閣事件や日中関係からちょっと離れ、胡錦濤政権を取り巻く中国の国内政治・経済事情に焦点を当ててみた(文中敬称略)。 元気のない胡錦濤総書記
劉暁波氏へのノーベル平和賞授賞を不服とする中国は、各国に書簡などで授賞式への欠席を要請している(写真は平和賞授与が決まった日に劉氏の釈放を求めて香港で行われたデモ)〔AFPBB News〕 「人権問題でしばしば成果をもたらすのは、容赦ない不断の圧力だ」――。英国のジョン・メージャー首相(当時)は1991年に北京を訪れた際にこう言った。 それ以来、初めて中国を訪問することになった保守党の首相であるデビット・キャメロン氏は、はるかに慎重だった。服役中の中国人反体制派へのノーベル平和賞授与に対する中国の怒りを前に、キャメロン氏は中国の意思を尊重する道を選んだ。 10月8日の劉暁波氏への授賞決定は、中国政府と同じくらい西側の政府を気まずい立場に立たせた。1990年代初頭以降、西側と中国は概ね、経済関係の緊密化を図りつつ、人権に対する考え方の違いに何とか折り合いをつけてきた。 「圧力」はあったが、中
我が国は、日本の領土である尖閣諸島で起きた国内の事件として淡々と調査するとの姿勢を採っていましたが、この問題は単に国内の刑事事件という枠では解決できるものではなく、中国との間にある領土主権の解決が主題であることは明らかです。 それにもかかわらず、中国の威圧に屈し日本の国益を全く無視した政治的措置が採られたことに腹立たしい思いがしています。 尖閣諸島の問題は単に漁業権や資源開発の問題にとどまらず、我が国の防衛、安全保障に直接関わる問題であることをしっかりと国民に伝えていくことが大事な気がします。 中国はこの十数年間、海軍・空軍・ミサイル部隊を中心に著しい軍事力強化を図ってきたことは周知の通りであり説明は要しないと思います。 米国の国防総省が毎年議会に報告している「中国の軍事力」では、次のように注意を喚起しています。 沿岸防護型から外洋型へ、舵を大きく切った中国 「近年の中国の軍事力は、豊かな
欧米、中東などの政治家、政府高官、学者が出席する国際会議だったが、アジアからの参加は日韓、モンゴルなどで、中国からの出席者は1人もいなかった。 議題もNATO戦略の将来やアフガニスタンでの活動などが中心で、「中国の台頭」を正面から取り上げるセッションはない。 やはり、欧州諸国にとって中国は喫緊の「安全保障」上の問題ではないのだと痛感する。それに対し、米国からの出席者は中国の台頭を含むグローバルな安全保障問題について語ろうとしていた。 米国と欧州の専門家の間の中国に対する認識のギャップは想像以上に大きいようだ。 というわけで、欧州諸国の「中国観」の変化に関心を持って参加した筆者の期待は見事に裏切られた。 だが、その会議出席中にiPadでネット上のニュースを覗き見していたら、中国のサイトに日本の若手政治家に関する興味深い論評を見つけた。今回はこの話を取り上げたい。 日本の若手政治家を警戒する中
マット安川 国内のニュースではなかなか聞けない、中国の内乱状態や権力闘争。これらが今度の尖閣問題にも影響している可能性があると、今回のゲスト・宮崎正弘さんにずばり指摘・解説いただきました。 2012年の台湾総統選、中国共産党大会、米国大統領選挙まで見越して既に動き出している中国――いつにも増して熱い放送となった「ずばり勝負」の極上リポートをどうぞ。 中国共産党内で繰り広げられる権力闘争 宮崎 正弘(みやざき・まさひろ)氏(右) 評論家、作家。国際政治、経済の舞台裏を解析する論評やルポルタージュを執筆。中国ウォッチャーとしての著作の他、三島由紀夫を論じた著書もある。(撮影・前田せいめい、以下同) 宮崎 日本のマスコミは、中国の権力闘争について何も報道していません。ビデオ流出騒ぎや中国漁船船長釈放など、私に言わせれば枝葉のことばかり言って、本質的なことはなぜか語らない。 共産党独裁というのは、
ダブリンにあるアイルランド財務省には、大臣がよく訪問者を迎える控えの間がある。壁には歴代財務相の肖像画が並んでいる。 その1人がマイケル・コリンズだ。元財務相であると同時に、英国からの自由を求めて戦ったアイルランド独立戦争で反乱軍の司令官を務めた人物である。 独立から88年経った今、アイルランドは経済の主権を守るために、債券市場とユーロ圏のパートナー諸国を相手に戦っている。コリンズがこれを見たら、何と言っただろうか? アイルランドの主権を危うくさせたのは、フィアナ・フェイル党率いる政府だと論評したかもしれない(同党は、アイルランド分離独立を巡って条約を支持したコリンズの派閥に内戦を仕かけた共和党一派の末裔で、コリンズはこの内戦で命を落とした)。 「ケルトの虎」の好況を無理に長引かせたフィアナ・フェイル政権 アイルランドの銀行を破滅させたのは、仲間内の銀行や不動産デベロッパーに特別な許認可を
しかし、領土問題を巡り、中ロが歩調を合わせて、南北から日本に挑戦する、という推測には違和感がある。モスクワで見る中ロ関係は、蜜月状態にあるとはとても思えないからだ。 ロシアの対外政策を考える際に注意しておきたいのは、政治と民衆の感情とは必ずしも一致せず、また、長期的に見ると政治は民衆の感情と同じ方向に集約していく傾向がある、ということだ。 最近ではグルジアを巡るロシアの政策がその典型であろう。いかに政治的にグルジアとの関係を凍結しようとしても、ロシアの歴史に刻まれたグルジアの影響は、それを消し去ることはできない。 一方中国については、中国をロシアのエネルギー政策における最大の客先としながらも、民衆レベルでの対中警戒感を解くことは絶対にできない。 最近、モスクワで日本企業に対して極東ロシアの開発プロジェクトを紹介するセミナーがあって、出席した。いくつものプロジェクトが紹介されたが、何も日本企
財務省が11月10日に発表した政府債務(国債や借入金などを合わせた国の借金)は、9月末で908兆8617億円となり、過去最高を更新した。 GDP比は173%と先進国で最悪だが、長期金利は1%前後と低く、国債は順調に消化されている。 こういう状況を根拠にして「財政危機というのは財務省の世論操作だ」とか「実は日本の財政は大丈夫だ」いう類の話が根強くあるが、それは本当だろうか。 ここでは多くの財政学者の意見をもとにして、財政危機の実態について一問一答で考えてみよう。 <1> 国債は国民の資産だから問題ない? 「国債は国民の債務であると同時に資産だから、夫が妻から借金するようなもの。家計としてはプラスマイナスゼロだから問題ない」という素朴な議論があるが、妻からの借金なら返さなくてもいいのだろうか。 例えば夫が飲んだくれで仕事をしないで、妻がパートで稼いだ貯金100万円を借りるとしよう。これで夫が酒
欧州連合(EU)が国家債務の救済に対する態度を180度転換したことで、アイルランド政府が理不尽な仕打ちを受けている。 つい数カ月前までは、国家債務の救済を検討すること自体がスキャンダルだと考えられていたが、今ではEUがアイルランドに救済策を無理矢理飲ませようとしているとの報道がスキャンダルとなっている。 本紙(フィナンシャル・タイムズ)は既に、アイルランド政府による欧州金融安定機関(EFSF)への支援要請を支持する姿勢を打ち出している。 アイルランドは来年半ばまで、歳出に充てる資金を市場で調達する必要がない。しかし必要となった場合に備えてEUの資金を手元に置いておけば、アイルランド国債の利回りを記録的な高水準に押し上げた債券市場のノイローゼを鎮めることができるかもしれない。 ただ、アイルランドは破綻するのではないかという疑念の源泉に同国政府が対処しない限り、EFSFの支援は無駄になってしま
そんな言葉が新聞紙面を飾るとは、5年前には想像すらできなかった。2005年頃はまだまだ国民には「中国は遅れている」という気持ちがあった。「我々は三等公民(貧しい民)だから」というのが、彼らの口癖だったのである。 その劣等感は今やすっかり消え去り、中国人は「第一世界市民(世界に勝る市民)」の意識を持つようになった。 世界第2位の経済大国になった今、その経済力を盾に発言権を強め、米国ですら外交政策を展開する際は中国の顔色を窺わざるを得なくなった。その現状に、中国国民も「今の中国を敵に回すことは、石に卵をぶつけるようなものだ」という自負を持つ。 傍若無人な態度に国際世論は非難轟々 だが、そんな中国の態度に対して、国際世論は厳しさを増す一方だ。 尖閣諸島の問題を巡って、世界各国から「弱い者いじめに出る中国」と非難の声が上がった。「中国は傲慢」「中国は貿易カードをちらつかせる強引なやり方で、政治での
「FRBには逆らうな」と言われるが、もしドル安を狙っているのであれば、FRBは戦略の見直しが必要かもしれない〔AFPBB News〕 「投資の世界には、FRB(米連邦準備理事会)には逆らうなという古い格言がある。何しろ、FRBは投資家よりたくさんカネを借りられるからね」 投資会社メルク・インベストメンツの社長で、ドルに弱気なことで知られるアクセル・メルク氏はこう語る。 「もしFRBがドルを下落させたいと思っているのなら、投資家はほかの中央銀行が取り組んでいること、すなわち多様な通貨に投資資金を分散させることを検討すべきだ」 確かに、ドルがここ数カ月間下落圧力にさらされている理由の1つは、各国(特にアジア諸国)の中央銀行が外貨準備の中身をドルから様々な通貨に切り替えていることだ。各国中央銀行はこれまで、自国通貨の上昇に歯止めをかけようとしてドルを蓄積してきた。 量的緩和によってドルが下落する
(英エコノミスト誌 2010年11月13日号) アイルランドの容赦ない財政緊縮策もパニックに陥った債券市場を鎮めるには至っていない。市場の目はポルトガルにも向かっている。 2008年、フランスとスペインで起きたトラック運転手のストライキで、リスボンの南にあるフォルクスワーゲン(VW)のオートヨーロッパ工場ではドイツからの部品供給が止まり、工場が丸1日、操業停止を余儀なくされた。 それから2年が経ち、ユーロ圏の周縁各国の供給ラインは、もっと深刻な問題を抱えることになった。 アイルランドの10年物国債の利回りは11月10日に9%近くまで跳ね上がり、安全なドイツ国債とのスプレッド(利回り格差)が6.2ポイントに達した(図参照)。ポルトガル国債の利回りも7%を超えた。 強い懸念を示すこうした指標は、買い手の「ストライキ」の前触れかもしれない。もしそうなれば、両国はユーロ圏の救済基金である欧州金融安
1億総中流――1958年から始まった内閣府による「国民生活に関する世論調査」の第1回調査結果では、自らの生活レベルを「中流」と答える日本国民が7割を超えた。これが60年代までに8割を超え、70年代には9割となった。 70年の国勢調査で日本の総人口が史上初めて1億人を突破し、その大半が中流という意識を持っていたことから生まれたのが「1億総中流」という言葉で、79年に「国民生活白書」が「国民の中流意識が定着した」と評価したあたりから盛んに使われた言い方である。 その意味を考えてみれば、肯定的と否定的、両方があるように思える。ただし、今も当時もマスコミが現状肯定的な発言をするはずもなく、揶揄的に使ったことは間違いない。否定的に使ったはずである。 どう否定的かといえば、「中流に甘んじて上を目指さない日本人は情けない」というわけだ。68年に日本の国民総生産(GNP)は世界第2位となり、戦後の焼け野原
資本主義経済においては、理論上、企業の所有権は重要でない。しかし実際には、しばしば論争を呼ぶ。 1980年代に米国で起きた日本企業による買収攻勢や、2000年に英ボーダフォンが実施したドイツのマンネスマンの買収、そして最近ではプライベートエクイティ(PE)企業による首をかしげたくなるような行為まで、企業買収は国全体に不安を呼び起こすことが多い。 そうした不安は今後数年間で強まっていくだろう。中国の国有企業が買収攻勢を仕掛けているためだ。 中国側の買い手企業は大抵実態が不透明で、多くの場合、背後で中国共産党が経営に関与している。利益を求めると同時に、政治的な動機が隠されている場合もある。こうした中国企業による国境を越えた買収は、2010年には金額ベースで全体の10分の1を占める。 米国のガス会社からブラジルの電力網、スウェーデンの自動車メーカー、ボルボに至るまで、中国勢はありとあらゆるものを
グーグルの社員数は1年前から3600人増えて約2万3300人となった。技術革新のためには優秀な人材が不可欠と考え雇用の拡大に努めているが、その同社は今、人材流出問題を抱えている。 ほんの数年前まで米ヤフーや米マイクロソフトから多くを引き抜いていたのはグーグル。しかし同社の成長速度がかつてほどではなくなった今、状況は逆転しつつあると米ウォールストリート・ジャーナルは伝えている。 そのグーグルを悩ましているのは、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)のフェイスブック(Facebook)などの新興企業だ。 ビジネス向けSNSのリンクドイン(LinkedIn)のデータによれば、過去にグーグルに勤めていたフェイスブックの社員は現在137人いる。 例えばここ最近グーグルからフェイスブックに移籍した人物には、グーグルマップの開発を手がけたラーズ・ラスムセン氏、基本ソフト(OS)「クロームOS(
動画投稿サイトの「ユーチューブ」で今、意外な大ヒットとなっているのが、小さな漁船を巡る40分あまりの動画だ。既に日本人と中国人を中心に150万人を超える人々が、この海のドラマを閲覧した。 スケートボードに乗るブルドッグを撮影した40秒ほどの動画「Tyson the skateboarding dog」の閲覧者数に肉薄する勢いである。 題材となっている中国籍のトロール漁船は、今年9月、日中関係を2005年以降で最悪の状況に追いやった事件の主役だ。先週漏洩したこの映像は、無人でありながらその領有権が激しく争われている尖閣諸島(中国名は釣魚島)の近海で、中国の漁船が日本の海上保安庁の巡視船に体当たりをしている様子を示そうとしたものだ。 ビデオ流出で再び火がついた論争 この映像が世に出たことで、日本が漁船船長を逮捕したことを巡る論争に再び火がついている。9月にはこの逮捕が日中の外交問題に発展した。
発売から30年余り、カセットテープ型のウォークマンはついに日本市場から姿を消す(写真は都内のソニー歴史資料館に展示されている初代ウォークマン「TPS-L2」)〔AFPBB News〕 「ウォークマン」は人々の音楽の聴き方、特に屋外での楽しみ方を変えた。1979年にソニーが発売した携帯カセットテーププレーヤーは、ついに日本市場での販売が終了となる。 中国での生産は継続し、ほかの一部地域では今後も販売されるが、ソニーは現在の販売台数や、「iPod(アイポッド)」やスマートフォンの時代にわざわざウォークマンの生産を続ける理由を明らかにしない。 誰が買うにせよ、その数が2億2000万台を超えるカセットプレーヤー型ウォークマンの累計販売実績を大きく伸ばすことはないだろう。 だが、そんな先駆的な商品も、実は危うく誕生し損ねるところだった。ソニーの共同創業者の盛田昭夫氏は、録音機能がついていないテーププ
(2010年11月5日付 英フィナンシャル・タイムズ紙) 11月第1週、ワシントンは政治の手詰まり状態を巡る話題で持ちきりだった。だが、投資家が政策の無為に苛立っている一方で、別の種類の行詰まり状態が重要性を増してきている。住宅および住宅ローン市場で起きているものだ。 夏場以降、米国の住宅差し押さえ手続きの不正について、驚くべき新事実が次々と明るみに出ている。最も注目すべきなのが、いわゆるロボサイナー(担保権実行命令に自動的に署名する従業員)が担った役割だ。 差し押さえ手続きの不正が発覚、米銀に多額の損失 これは、銀行に大きな損害を与える。ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド(RBS)の試算では、米国の銀行は今後生じる罰金を払うのに43億ドルの費用がかかるほか、投資家から欠陥ローンの買い取りを余儀なくされることで250億ドルの損失が発生、政府機関からのローン買い取り費用として130億ドル
空が落ちてくる、とヒステリックに叫んでいる人々がいる。米連邦準備理事会(FRB)がこれほど大量にドルをばら撒いたら、ドルはほどなく無価値になってしまう、と。これほど真実とかけ離れた話もない。 日本の例を見れば分かるように、「量的緩和」として知られる政策は致命的である可能性よりも効果がない可能性の方がはるかに高い。この金融政策はノアの洪水ではなく、水が漏れるホースのようなものだ。 FRBは一体何をやっているのだろうか? なぜそうしているのか? なぜそれに対する批判が滑稽なのか? もし量的緩和をしないのであれば、FRBは何をすべきなのだろうか? FRBの量的緩和政策を巡る4つの疑問 最初の問いに対する答えは明らかだ。FRBは11月3日に発表した声明で次のように述べている。 「景気回復のペースを速めるために、そしてインフレ率がいずれFRBに与えられた使命に沿った水準に確実になるよう促すために、(
(英エコノミスト誌 2010年11月6日号) 「量的緩和」は好かれてもいなければ、評価されてもいない。だが、機能している。 エコノミスト誌の記事のタイトルは豪華客船「クイーン・エリザベス2世号(QE2)」にひっかけたもの。イラストでは、バーナンキ船長が船からお金をばら撒く様子を描いている〔AFPBB News〕 米連邦準備理事会(FRB)が11月3日に第2弾の「量的緩和(QE)」を発表する前から、批判的な人々は、既にそれを効果がないもの、あるいはインフレを招くものとして非難していた。それは、両方ではあり得ないし、どちらでもないかもしれない。 「QE2」の発表は驚くようなものではなかった。FRBは、今から来年6月までに月に約750億ドルのペースで、6000億ドルの米国債を購入すると述べた。もっとも、必要とあれば金額と時期を調整することはあり得ると話している。 QE2の内容はほぼ市場の予想通り
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