市民と〈設計〉した公共空間 ―太田市美術館・図書館における基本設計ワークショップ― コンサルタント/プランナー:氏原茂将(うじはら しげゆき) ことのはじまり 「基本設計のポイントとなることを、ワークショップの参加者が決める」 2017年4月、群馬県太田市に開館した太田市美術館・図書館(図1)を設計した建築家・平田晃久氏が求めていたワークショップの内容である(1)。ワークショップのファシリテーターを依頼されていた私は、漠とした魅力を感じながらも考え直すことを勧めた。建築の素養のない人が公共施設、しかも美術館や図書館のように複雑な機能を持つ施設の設計を決められるとは思わなかったからだ。ファシリテーターとして責任が取れないと思ったのだが、「参加者が決める」という魅力が勝り、引き受けることとなった。 当初は成功イメージもなく、見通しを立てられなかったワークショップだったが、結果的に設計プロセスに
米国著作権法の図書館等関連規定改正に向けたモデル条項 2017年9月,米国議会図書館(LC)が所管する米国著作権局は,図書館等に適用される権利制限を規定する著作権法第108条の改正に向けたディスカッション・レポートを公表した。米国著作権局はここ10年以上,デジタル時代に対応した第108条のあり方について,図書館関係者や著作権者,研究者等からなる研究グループを設置するなどして継続的な検討を進めてきた(E778参照)。本レポートは,連邦議会を含む関係者の議論を加速させる枠組の提供を目的とした,新たな第108条のモデル条項を提案している。以下にその主な論点を紹介する。 ●適用機関 現行第108条は,適用対象機関として図書館及び文書館にのみ明示的に言及するが,モデル条項は,新たに「ミュージアム」を適用対象とすることを提案する。それに合わせ,同条の適用を受けることができる図書館等の要件について,現行
CiNii Booksの本文アクセス強化 2012年以来,毎年実施しているCiNii利用者アンケートにおいて,必ず「CiNii Booksを利用いただく上で不満な点について教えてください。」という問いを設けている。2016年実施分も含めた5年間,常に利用者の関心が最も高いのは「本文へのリンク」であった。本稿では,CiNii Booksにおける本文へのアクセス強化について,サービス誕生からの道のりを振り返りつつ,以下に述べたい。 ●CiNii Booksへの期待 CiNii Booksは,国立情報学研究所(NII)が運用する目録所在情報サービス(NACSIS-CAT)に蓄積された,全国の大学図書館等の書誌・所蔵情報の検索サービスとして2011年11月に誕生した。 前身であるWebcatにはなかった機能を盛り込み公開したが,資料の電子化またはボーンデジタル資料の公開が進み,媒体の区別なく検索可
情報の分散記述と共有をうながすWeb Annotation ウェブ上での注釈(アノテーション)の表現方法を標準化するWeb Annotation(以下WA)が2017年2月にWorld Wide Web Consortium(W3C)の勧告となった。仕様は,注釈の表現方法であるデータモデル(WA Data Model),この注釈モデルをRDFで記述するための語彙(WA Vocabulary),および注釈の取得や管理のためのアプリケーションのやり取りを定めるプロトコル(WA Protocol)の3つから成る。 注釈はウェブ上での共同作業や知識共有の手段として早くから注目されていた。1995年にW3Cのワークショップを受けて議論のためのメーリングリストwww-annotationが開設され,2000年には注釈をウェブで共有するためのサーバー,ツールや語彙の開発も含むAnnoteaプロジェクトが
CA1883 – 動向レビュー:デジタル時代における国立図書館の蔵書構築―欧米国立図書館を対象とした調査報告― / 吉家あかね 英国の国立公文書館・大英図書館における私文書の閲覧体制―利用者の視点から― 京都大学大学院法学研究科・法学部:奈良岡聰智(ならおか そうち) はじめに 近代日本の政治外交史研究において、私文書(政治家、外交官など個人が残した日記、書簡、書類、写真など)が果たす役割は極めて大きい。戦後日本で、私文書の収集・保存・公開を先駆けて行ってきたのは国立国会図書館憲政資料室で、コレクションの量や多様性、文書の収集・保存のためのノウハウの蓄積、研究者とのネットワークの深さなどの点において、他を圧倒する存在である(1)。現在では、国立公文書館、衆議院憲政記念館、宮内庁宮内公文書館、外務省外交史料館、防衛省防衛研究所戦史研究センターなどの公的機関の他、大学、図書館、文書館、博物館
小さな島の小さな図書館という試み:男木島図書館 「なんか面白い本はあるかいな?」 訪れる島民の一言目はみなそれぞれ大体決まっている。この人の好きな本は……,と人と本を思い浮かべながらおすすめする。それが筆者の日常だ。 ――瀬戸内海に浮かぶ男木島(おぎじま)。人口175人のこの小さな島に2016年2月14日,小さな私設図書館,男木島図書館が開館した。 ◯高松市立男木小・中学校の再開 図書館について語るにあたり,男木島がどんな島かということからはじめたい。2014年4月,この島で小・中学校(高松市立男木小・中学校)が再開したというニュースが瀬戸内を沸かせた。2013年の瀬戸内国際芸術祭を契機に,筆者の家族を含め3世帯が島へのUターンを決意し,島民と共に学校再開を求め,島の人口を大きく上回る881名の署名を高松市長に提出し,小・中学校の再開が決定された。その中心となったのが,筆者の夫であり,その
2016年3月11日付のORCIDのブログで、ドイツ国内でのORCIDの導入促進を図る”ORCID DE”プロジェクトが、2016年2月から開始されていることが紹介されています。 ドイツ研究財団(DFG)からの資金を得て行なわれているもので、3年間のプロジェクトで、ORCID導入を検討している国内の大学や研究機関への支援を行うほか、 ・オープンアクセスのリポジトリや出版サービスにおけるORCIDの使用等 ・ドイツの統一典拠レコードであるGND(Gemeinsame Normdatei)とORCIDの連携 について取り組むようです。 本プロジェクトは、ドイツ・ネットワーク情報イニシアチブ(DINI) が創始し、ヘルムホルツ協会ドイツ研究センターのHelmholtz Open Science Koordinationsburoや、ドイツ国立図書館(DNB)、ビーレフェルト大学図書館などがパート
2016年3月18日、ドイツ・ライプニッツ協会評議員会が、ドイツ国立医学図書館(ZB MED)が、専門情報分野での広範囲な変化にむけてそのサービスを調整するような十分な進歩を遂げていないとして、連邦と州による財政支援の終了を勧告しました。 それを受けて、ZB MEDは、同館が国内的にも国際的にもデジタルサービスの分野で大きな進歩を遂げていることを無視していることや、同館のドイツ国内での生命科学・医学分野での情報提供やオープンアクセスにおける貢献をあげて、資金提供を停止することは、ドイツにおける科学と研究部門の劣化を招くと反論しています。 ZB MEDは、大学外研究機関の共同体であるライプニッツ協会に所属しており、同協会に所属する機関は、少なくとも7年に一度同協会の審査を受け、その機関の業務が公的な資金で運営されるに値する質を保っているかを問われます。 A Black Day for ZB
英国の大学・科学担当大臣ジョー・ジョンソン(Jo Johnson)氏からの要請(2015年7月)に対し、Universities UK Open Access Coordination Groupの議長であり、バーミンガム大学教授であるティッケル(Adam Tickell)氏から提出された、研究発表のオープンアクセスに関する中立的なアドバイスが書かれた報告書“Open access to research publications”が、2016年2月11日に公表されています。 Independent report Open access to research: independent advice(GOV.UK,2016/2/11) https://www.gov.uk/government/publications/open-access-to-research-independent
2015年11月16日、筑波大学の図書館情報メディア系・知の共有基盤リサーチユニットとインフォコム株式会社は、一般利用者向けのデジタルアーカイブシステムの利便性向上と利活用を促進することを目的に、産学共同研究「デジタルアーカイブシステムの利便性向上のための研究開発」を行うことを発表しました。 デジタルアーカイブシステムの利便性を向上し、有用なコンテンツを後世に伝えていくために利活用を促進していくことを目的とした研究であり、国内外のデジタルアーカイブに関する動向調査を実施するとともに、RDFやLinked Open Data等の技術を取り入れた「デジタルアーカイブの利便性向上機能」「他のリソースとの組み合わせによる新しいアーカイブサービス」「メタデータ基盤」などの研究開発を行うものとのことです。 なお、本研究には、筑波大学の杉本重雄教授や永森光晴講師が参画しているようです。 また、メタデータ
2015年9月1日、EBSCO社が、電子リソースのアーカイブサービスを提供しているPorticoと連携して「デジタルアーカイブ」を長期保存すると発表しています。 EBSCO社はPorticoの加盟出版社に代わってデジタル化された歴史的コレクションを保存する“D-Collection Preservation Service”に参加するとのことです。 EBSCO Partners with Portico to Ensure Long-Term Availability of Digital Archives~Primary Source Content will be Preserved for Use by Students and Scholars~(EBSCO,2015/9/1) https://www.ebsco.com/news-center/press-releases/ebs
ボーンデジタル資料の管理にアーキビストの専門知識の活用を 2015年7月,OCLC Researchが,アーキビストの専門知識を図書館でのボーンデジタル資料の管理に取り込むことを提言した報告書“The Archival Advantage : Integrating Archival Expertise into Management of Born-digital Library Materials”を発表した。 報告書では,リサーチライブラリアンが記録や保存の対象としている,研究データ,電子メール,ウェブサイト,ブログ,Twitter,wiki等の,灰色文献(E1382参照)とされるボーンデジタル資料の管理に,アーキビストの専門知識を取り込むことが必要だと指摘されている。それは,アーキビストが,オリジナルなものが1点のみで,コピーが流通せず,特定の所有者が管理するユニークな資料を扱う専
図書館データとWikipediaをつなぐVIAFbot デジタル時代において,今までOPACなど閉じたシステムの中でしか利用できなかった図書館データをウェブ上でアクセスしやすくし,新たに付加価値を持たせ有効活用することの意義は大きい。図書館データの活用事例として,本稿ではVIAF(バーチャル国際典拠ファイル;CA1521参照)とWikipediaの記事の相互リンクプロジェクトについて紹介する。 本プロジェクトは,OCLCリサーチのウィキペディアン・イン・レジデンス(E1345参照)であるクライン(Max Klein)氏と,英国図書館のウィキペディアン・イン・レジデンスであるグレイ(Andrew Gray)氏が主導したものである。2013年10月14日の“Code4Lib Journal”誌にクライン氏らによる“VIAFbot and the Integration of Library D
危機に瀕した文化遺産のアーカイブ:英国図書館の10年の取組 リビアのティフィナグ語の碑文,マリ共和国トンブクトゥの手稿,ロマの民族自決運動黎明期の新聞,カメルーンの写真スタジオの写真,ギニアのセク・トゥーレ大統領時代の音楽,イランのラジオ番組…。これらの文化遺産はよく知られているとは言い難いが,政治的な紛争,自然災害等のさまざまな理由により,いずれも消滅の危機に瀕していたという。 英国図書館(BL)では,Arcadia財団の支援を得て,これらの消滅の危機に瀕した文化遺産をアーカイブする取組み“Endangered Archives Programme”(以下EAP)を2004年から実施している。EAPではこれまで,世界78か国の約250のプロジェクトに助成を行い,危機に瀕した文化遺産を当該地域の適切なアーカイブに移し,デジタル化し,その大多数をBLが運営するEAPのウェブサイトで公開してい
2015年1月12日、英国図書館(BL)が2015年-2023年の戦略計画“Living Knowledge: The British Library 2015-2023”を公開しました。この計画では、管財、調査、ビジネス、文化、教育、国際関係において、BLが公共的価値をいかに実現し、また、調査、インスピレーションや楽しみのために、すべての人に知的財産を利用可能とするというBLのミッションをどのように遂行するのかについて解説をしているとのことです。 Living Knowledge: The British Library 2015 – 2023(BL, 2015/1/13) http://www.bl.uk/projects/living-knowledge-the-british-library-2015-2023 http://www.bl.uk/britishlibrary/~/m
リリース、障害情報などのサービスのお知らせ
最新の人気エントリーの配信
処理を実行中です
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く