鹿児島県南部の山あいの町に、農作業を通じてお年寄りを元気にしようと試みる小さな介護施設がある。南九州市川辺町。かつては農業が盛んだったが、過疎化や高齢化が進むにつれ、耕す人もなく、荒れ果てた畑があちこちに見られるようになった。そんな畑を再生させようとしているのが、町内で小規模多機能型介護施設「いろ葉」を経営する中迎聡子さん(46)だ。「介護施設だからこそ、お年寄りさんのためにも地域に目を向けないといけない」と、施設を利用する高齢者が耕せなくなった畑を耕し、作物を育てる。人材不足や低賃金など暗いニュースが目立つ介護業界で、施設と地域との新たな向き合い方を、人口1万5000ほどの小さな町から発信している。 ●お年寄りの思い入れのある畑を再生させたい 内陸で海に面していない川辺町では、農業をなりわいにしていない住民も畑を持ち、耕すのが習わしだ。ただ、住民が高齢化すると、耕すことができずに放棄され