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ブックマーク / realsound.jp (27)

  • 「全てわからせる必要はない」映画監督・黒沢清、脚本制作で意識することーー自著『Cloud Book』を語る

    「Cloud Book」boid online shopと全国の一部劇場や書店にて販売中 日が誇る鬼才・黒沢清監督による最新長編映画『Cloud クラウド』が、現在公開中。第81回ヴェネツィア国際映画祭、第49回トロント国際映画祭、第29回釜山国際映画祭などで各国の映画祭で上映され、第97回米国アカデミー賞国際長編映画日本代表作品にも選出された注目作だ。 公開に合わせて、作のシナリオとサウンドトラックCDを収録し、黒沢監督と劇伴を手がけた渡邊琢磨のインタビューを収録した「Cloud Book」が9月30日に発売。その発行を記念し、黒沢監督へ脚についてじっくりとお話を伺った。 ◼️脚は「全く勉強していないんです」いまの制作スタイルにたどり着くまで ――『Cloud クラウド』の脚を書き始めてから撮影に至るまでには、どれくらいの年月を要したのでしょう。 何度か書き直しているので、最

    「全てわからせる必要はない」映画監督・黒沢清、脚本制作で意識することーー自著『Cloud Book』を語る
  • 失敗に終わった『THE FIRST SLAM DUNK』復活上映 その理由と教訓

    8月第3週の動員ランキングは、公開3週目に入った『インサイド・ヘッド2』が週末3日間で動員37万2000人、興収4億9700万円をあげて2週連続1位となった。初週と第2週の興収比97%に続いて、第2週と第3週の興収比は95%と非常に高い推移で安定。金曜日から土曜日にかけて東日に接近した台風に関する事前の(今になってみれば少々過剰だったとも言える)注意喚起や、それに伴う公共交通機関の計画運休や減便の影響がなければ、前週超えもあり得ただろう。 先週末には、夏休み興行のど真ん中にもかかわらず、2022年12月に公開された『THE FIRST SLAM DUNK』の「復活上映」がメジャー配給作品の大作と同水準の全国383スクリーンという異例の規模でスタートした。5月にそのアナウンスがされた際は、それだけ多くのスクリーン数を押さえられるほど今夏は有力な新作が不足しているのかと衝撃を受けずにはいられ

    失敗に終わった『THE FIRST SLAM DUNK』復活上映 その理由と教訓
  • 日食なつこ×千鳥ノブ対談 音楽とお笑い、表現への対極な姿勢と通ずる信念

    今年活動15周年を迎え、ツアーに展覧会、ベストアルバムのリリースなど、さまざまなプロジェクトを展開中の日なつこ。その節目に、彼女のこれまでの歩みの中で関わってきたさまざまな人と会って話をしたい、というところからスタートしたのがこの対談企画だ。第一弾のお相手として招いたのは、お笑いコンビ・千鳥のノブ。MVの撮影地にわざわざ出向くほど日音楽に惚れ込んだ彼と、初対面からじつに6年のときを経て実現した対話は、ふたりの違いと重なり合う部分をはっきりと浮かび上がらせる、とても興味深いものになった。音楽とお笑い、異なるフィールドで走り続けるそれぞれの哲学や表現への向き合い方をぜひじっくり楽しんでほしい。(小川智宏) エネルギーと向上心の若手時代 ――今年、日なつこさんが活動15周年ということで、それを記念してお会いしたかった方に会ってお話しするという企画で、第一弾はやはりノブさんだろうと。 日

    日食なつこ×千鳥ノブ対談 音楽とお笑い、表現への対極な姿勢と通ずる信念
    iinalabkojocho
    iinalabkojocho 2024/08/01
    取材と構成が良いのだろうけど、全く。と言うかほぼ接点がないに等しい両極端にいるお二方が「だからこそ」この対談をしているのがよく分かる。こう言う記事は珍しい
  • 『化け猫あんずちゃん』が生み出された意義を考える 2024年の日本アニメ映画の最重要作に

    2024年の夏はアニメーション映画が続々公開され、何を観るか迷うアニメファン、映画ファンも少なくないはず。そんな充実したラインナップのなかで、『化けあんずちゃん』は、いわゆる「夏アニメ」として満足感を与える内容でありながら、ひときわ異彩を放つ、興味深い存在となった。 それもそのはず。作『化けあんずちゃん』は、驚くような制作体制かつ画期的な手法が駆使された、他では類を見ない一作だったのだ。ここでは、そんな作品の内容に迫りながら、さまざまな課題が存在するアニメ界の現状のなかで、作がいま生み出されたことの意義を考えていきたい。 原作となっているのは、「平成のつげ義春」という異名をとる漫画家・いましろたかしが、主戦場である青年誌でなく、児童を対象とした『コミックボンボン』で連載した、異色の同名漫画だ。南伊豆の架空の町・池照(いけてる)町を舞台に、寺に拾われて30年以上生きたことで化けにな

    『化け猫あんずちゃん』が生み出された意義を考える 2024年の日本アニメ映画の最重要作に
  • 宮台真司×荘子it「テック時代の恋愛論」 濱口竜介監督作『偶然と想像』をめぐって

    最新作『悪は存在しない』が絶賛公開中の濱口竜介監督。そんな濱口監督の過去作の中でも傑作と名高いのが、2021年12月に公開され、第71回ベルリン国際映画祭で銀熊賞(審査員グランプリ)を受賞した『偶然と想像』だ。そんな作について、社会学者・宮台真司とDos Monosの荘子itが対談。濱口竜介作品を観続けてきた2人は、『偶然と想像』に何を見出したのか。 「あるある系」の媚びを越えたもの 『偶然と想像』©2021 NEOPA/fictive 荘子it:僕は2012年に18歳で日大学芸術学部映画学科監督コースに進学して、結局その後ドロップアウトしてラッパーになったのですが、大学1年生の頃にある出会いがありまして。今はなき映画館「オーディトリウム渋谷」で、「濱口、濱口、濱口」っていうキャッチコピーとともに若手監督・濱口竜介の特集上映をしていたんです。「濱口竜介って誰それ?」状態のまま観に行った

    宮台真司×荘子it「テック時代の恋愛論」 濱口竜介監督作『偶然と想像』をめぐって
  • Z世代に「オールドコンデジ」なぜ流行? 秋葉原のカメラ専門店で聞いてみた

    Z世代を中心に勢いを増している“オールドコンデジブーム”。30代の筆者にとって、コンデジは学生時代を彷彿とさせる懐かしい存在だ。だが、その懐かしさを知らない世代の若者のあいだで、なぜかいまコンデジが流行している。 流行の火種は、TikTokやInstagramといったSNSだ。アプリ内で「デジカメ」「コンデジ」といったワードを入力すると、写真だけではなくオールドコンデジの入手方法や設定の仕方、画像の取り込み方法まで紹介されている。 今回は、オールドコンデジのコーナーを店内に設置している、中古カメラ専門店『2nd BASE』を訪ね、いまのコンデジブームについてどう感じているのか、現場の目線で語ってもらった。また、具体的にはどの機種が人気なのか、レトロな仕上がりで撮影できる方法やコツについても教えてもらった。 音楽業界まで広がりを見せるオールドコンデジブーム 『2nd BASE』は、秋葉原の高

    Z世代に「オールドコンデジ」なぜ流行? 秋葉原のカメラ専門店で聞いてみた
  • 特集:変わり続ける渋谷の映画館を見つめて

    2000年代前半、渋谷には数多のミニシアターがあった。ミニシアター作品から大作まで、渋谷に行けばすべての上映中の映画を観ることができ、映画作家の特集上映も多数行われていた。しかし、シネコンの急増や、都市開発の影響でこの20年で多くの映画館が閉館。渋谷の映画館の風景も大きく変化している。池袋、新宿、銀座エリアとはまた異なる、渋谷が培ってきた映画文化を、それぞれの思い出とともに振り返っていく。

    特集:変わり続ける渋谷の映画館を見つめて
  • 『怪物』を観た後に残った違和感を考える “わかりやすさ”と引き換えに手放したのもの

    流れてくるエンドロールの文字を見て、「なるほど」「やっぱり」と妙に腑に落ちる思いがした。これは、第76回カンヌ国際映画祭の最優秀脚賞、クィア・パルム賞を受賞したことでも話題の、大ヒット中の映画『怪物』を観終えたときの第一印象だ。 監督はご存知、『そして父になる』(2013年)で第66回カンヌ国際映画祭審査員賞を受賞、『万引き家族』(2018年)ではカンヌ最高賞のパルムドールを受賞した是枝裕和。第1作の『幻の光』(1995年)を除き、これまで全てのシナリオが自作だったことでも知られる是枝監督が、他者のシナリオを映画化することでも、発表当初より注目されていた。 しかも、そのシナリオが『東京ラブストーリー』(1991年/フジテレビ系)などの往年の名作から近年の『カルテット』(2017年/TBS系)『大豆田とわ子と三人の元夫』(2021年/カンテレ・フジテレビ系)、映画『花束みたいな恋をした』(

    『怪物』を観た後に残った違和感を考える “わかりやすさ”と引き換えに手放したのもの
  • 『耳をすませば』~『BLUE GIANT』に至るアニメ演奏描写の変遷 手描き、ロトスコープ、モーションキャプチャが与える効果の違い

    音楽と映像は切っても切り離せない関係にある。音楽にとっても映像は、今やプロモーション以上の意味を持つし、映画にとっては歴史の初期から欠かせないものだった。 日のアニメ作品にも音楽は欠かせない。近年も、『ONE PIECE FILM RED』に『ぼっち・ざ・ろっく!』、そして現在劇場公開中で絶賛が相次いでいる『BLUE GIANT』など、音楽をフィーチャーしたアニメ作品の話題が尽きない。 日アニメはメディアミックスを事業の柱とする関係上、音楽はビジネス的にも重要だが、作中の演奏シーン描写にも磨きをかけ続けてきた。 そんなアニメの演奏描写はどう発展してきたのか、そして『BLUE GIANT』の演奏シーンは何を達成したのかを考えてみたい。 なお、稿では楽器を用いた演奏シーンのみに言及する。アイドルアニメなどのダンスパートにも言及すべき点は多々あるのだが、原稿が長大になりすぎるので、それらは

    『耳をすませば』~『BLUE GIANT』に至るアニメ演奏描写の変遷 手描き、ロトスコープ、モーションキャプチャが与える効果の違い
  • wowaka&ヒトリエから受けた影響と喪失を経て、たどり着いた“新たな音楽” 椎乃味醂 × シノダ対談

    wowaka&ヒトリエから受けた影響と喪失を経て、たどり着いた“新たな音楽” 椎乃味醂 × シノダ対談 2023年3月18日~21日、ボーカロイド文化の祭典『The VOCALOID Collection ~2023 Spring~』(通称:ボカコレ2023春)が開催される。 ボカロ文化の再評価やさらなる発展に寄与してきた『ボカコレ』も、今回で6回目を迎えることなった。同イベントはレジェンドたちの参加とネクストブレイクアーティストの発掘やベテラン・若手の交流を1つの企画内で実現できており、筆者はそこに面白さを感じている。 そこで今回は、『ボカコレ』などを機にネクストブレイクアーティストとして邁進中の椎乃味醂をホストとし、ゲストに彼が“人生で最も影響を受けていた”と語るヒトリエのシノダを迎えた対談を実施。椎乃がヒトリエやwowakaから受けた影響、そこから現在の作曲スタイルに至るまでの変化、

    wowaka&ヒトリエから受けた影響と喪失を経て、たどり着いた“新たな音楽” 椎乃味醂 × シノダ対談
  • 『バビロン』で露呈したデイミアン・チャゼル監督の欠点 “ハリウッド”のおそろしい魔力

    『ラ・ラ・ランド』(2016年)で、映画界を含めたロサンゼルスのショービズ界の光と影を、ファンタジックに描いたデイミアン・チャゼル監督。この作品でアカデミー賞監督賞を最年少で獲得した彼が、1920年代のハリウッド映画業界を題材に撮りあげた新作が、『バビロン』だ。 「Roaring 20s(狂騒の20年代)」といわれ、アメリカが好景気に沸き、人々が浮かれ騒いでいた時代の映画業界は、まさに混沌とした魔窟だったといわれる。そして、もともと作のアイデアは『ラ・ラ・ランド』の前にチャゼル監督自身が温めていたものであるという。つまり、真に挑戦したかった題材はこちらだといえるのだ。そんな、監督の想いがつまった3時間を超える大作『バビロン』の出来はどうだったのか。ここでは、作の舞台設定の解説を交えながら、作の出来を率直に評価していきたい。 最初に指摘しておきたいのは、著名プロデューサーのアーヴィング

    『バビロン』で露呈したデイミアン・チャゼル監督の欠点 “ハリウッド”のおそろしい魔力
  • 作家で「億」は稼げるのか? 現役作家たちが明かす赤裸々な収入事情と、必要な努力

    すこし前、SNSを「ラノベ作家」「8000万円」というワードが騒がせた。テレビのバラエティ番組が、ラクして稼げるお仕事第1位はライトノベル作家で、平均年収は8085万円と伝えて、ラノベに限らず作家の人たちが「あり得ない」といった反応を見せた。だったら作家は幾らなら稼げるのか。そんな疑問にズバリと答えたが、架空戦記やラノベを書いて来た吉田親司による『作家で億は稼げません』(エムディエヌコーポレーション)だ。 可能性を言えば、作家でも年に1億円は稼ぎ出せる。『作家で億は稼げません』の中で筆者は「書が七十五万部以上売れれば、僕の年収は億に届く計算です」と書いている。何がきっかけでミリオンヒットが出るか分からないのが出版界、このだって可能性はゼロではない。そして現実に、億を稼いで『小説家になって億を稼ごう』(新潮新書)いうを出した松岡圭祐というベストセラー作家が実在する。 『作家で億は稼げ

    作家で「億」は稼げるのか? 現役作家たちが明かす赤裸々な収入事情と、必要な努力
  • 『偶然と想像』など濱口竜介監督作品、海外でなぜ高評価に? 作品づくりに感じる強い意志

    『ドライブ・マイ・カー』が、カンヌ国際映画祭ほか、国内外の映画賞を次々に受賞している。とくにアメリカでも高く評価されているのが特徴で、ニューヨーク、シカゴ、ロサンゼルスなどの映画批評家協会賞でさまざまな賞を受賞するなど、アカデミー賞を前に、日映画として近年例を見ないほどの快進撃を巻き起こしている状況だ。面白いのは、そんな作品を日の観客がそれほど観ていないという事実。日での興行収入ランキングのデータを見ると、2021年に公開された全ての日映画の中で、トップ50にも入れていないのである。 しかし、最近の海外での『ドライブ・マイ・カー』旋風により、その監督を務めた濱口竜介の新作『偶然と想像』は、小規模公開ながら、かなり注目されているようだ。『偶然と想像』自身もベルリン国際映画祭で銀熊賞(審査員グランプリ)を受賞するなど、同じく海外で評価されていることも大きい。筆者が渋谷の「Bunkamu

    『偶然と想像』など濱口竜介監督作品、海外でなぜ高評価に? 作品づくりに感じる強い意志
  • 『マトリックス』シリーズとは何だったのか 『レザレクションズ』に込められたメッセージ

    2000年を挟んだ前後の時期に、映画史やその他のカルチャーに大きなインパクトを与えることとなったサイバーパンク・アクション『マトリックス』シリーズ。その、およそ20年ぶりの続編が公開された。“複数の復活”を意味する言葉を配した、『マトリックス レザレクションズ』である。 時代を代表するシリーズの新作ということで、当然ながら思い入れのある観客が、当時の懐かしさを感じながら劇場に駆けつけることとなったが、その反応は様々であり、否定的な意見も少なくないように感じられる。しかし、作が打ち出しているメッセージが、果たしてどれだけ理解されたのだろうか。作が撮られた理由、シリーズを復活せねばならなかった理由を理解することなしに、これら作品群を真の意味で味わい、考えることはできないはずである。ここでは、そのメッセージとは何だったのかを、たっぷりと解説していきたい。 作に登場するのは、都会を睥睨する高

    『マトリックス』シリーズとは何だったのか 『レザレクションズ』に込められたメッセージ
  • バトル以外の内容が“ほぼ無い”『ゴジラvsコング』 モンスターバースでの位置付けを考察

    レジェンダリー・ピクチャーズ製作の、巨費を投じた怪獣映画シリーズ「モンスターバース」。その第4弾は、アメリカと日がそれぞれに生んだ、映画史を飛び越えて文化史に刻まれている怪獣映画の両巨頭であるキングコングとゴジラがマッチアップして、ついに勝敗が決するという、シリーズの集大成となる内容だ。その名も『ゴジラvsコング』である。 作は、世界的なコロナ禍によって公開を延期していたが、それ以前にも製作上の問題で延期していたため、当初の予定から、かなりずれ込んだ時期での公開となった。だが、そんな紆余曲折を経た作は、アメリカの批評家たちにおおむね好意的に受け入れられ、いまだコロナ禍の影響下にある状況で前作『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』(2019年)を超える大ヒットを記録している。アメリカでの興行収入は100億円の大台を突破し、世界興収は現時点で400億円を優に超え、超大ヒット作となったシリ

    バトル以外の内容が“ほぼ無い”『ゴジラvsコング』 モンスターバースでの位置付けを考察
  • 星野源、これまでとは違う音楽の地平へ 「創造」と「不思議」で語る“新しい星野源”

    星野源が、シングル『不思議/創造』を6月23日にリリースする。2018年のシングル『ドラえもん』以来となるパッケージリリースとなる今作は、TBS系火曜ドラマ『着飾る恋には理由があって』主題歌の「不思議」、スーパーマリオブラザーズ35周年テーマソングの「創造」そして、『第71回NHK紅白歌合戦』で披露された「うちで踊ろう(大晦日)」の新録、TBSラジオ『バナナマンのバナナムーンGOLD』の企画で制作された「そしたら」の4曲が収録される。 今回の取材では、聞き手に高橋芳朗氏を迎え、昨年の緊急事態宣言下からの星野源の制作環境の変化から「折り合い」、「Good in Bed (Gen Hoshino Remix)」(デュア・リパ)そして「創造」と続いてきた音楽制作の過程をインタビュー。同時に『Same Thing』とはまったく違う場所にたどり着いたという自身の音楽について、「不思議」「創造」を軸に

    星野源、これまでとは違う音楽の地平へ 「創造」と「不思議」で語る“新しい星野源”
    iinalabkojocho
    iinalabkojocho 2021/06/24
    不思議、創造は本当に星野源さんの今後の活躍の予感が含まれててすごい。
  • 日本アニメ映画史に刻まれる“傑作” 『漁港の肉子ちゃん』が描く日常におけるファンタジー

    『かぐや姫の物語』、『風立ちぬ』と、日のアニメーション映画の複数の時代を代表する高畑勲監督、宮崎駿監督、両名の巨匠の集大成といえる2作品が公開された2013年から数年の間、盛んに言われるようになったのが、「ポストジブリ」という言葉だった。国民的なアニメーション映画を生み出す、巨匠擁するスタジオジブリの役割を、どこが、誰が今後担うのかという予想が飛び交ったのである。 しかし、その種の議論は次第にトーンダウンしていくこととなる。なぜなら、その後『君の名は。』(2016年)や『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』(2020年)のように、スタジオジブリとは毛色の異なるアニメーション映画が大ヒットを記録することになったからだ。一方で、『名探偵コナン』劇場版シリーズも多くの動員を獲得している。そんな現在、『この世界の片隅に』(2016年)や『夜明け告げるルーのうた』(2017年)以来となる、作品の質とテー

    日本アニメ映画史に刻まれる“傑作” 『漁港の肉子ちゃん』が描く日常におけるファンタジー
  • 山崎まどかの『一度きりの大泉の話』評:萩尾望都が竹宮惠子に向けていた眼差しとその痛み

    1970年から1972年まで竹宮惠子と萩尾望都が同居し、そこに同世代の少女マンガ家「花の24年組」を中心とするメンバーが出入りして「大泉サロン」と呼ばれた借家。それは少年マンガにおける「トキワ荘」と並ぶ、少女マンガ文化におけるひとつの伝説だった。 萩尾望都の側から見た残酷な事実 『少年の名はジルベール』(小学館) 竹宮惠子が自伝『少年の名はジルベール』(小学館/2016)で「大泉サロン」時代の話を書くと、この伝説には新たなベクトルが加わり、より神話性が強まっていった。接近し過ぎた若い創作者同士の思わぬ齟齬。竹宮惠子はそれを天才・萩尾望都への自分の一方的な嫉妬として描いている。 萩尾望都の語り下ろしである『一度きりの大泉の話』(河出書房新社)は『少年の名はジルベール』そのものというよりも、竹宮のに対する反響で自分が被ったことへの返答として書かれている。これは単体で読む彼女の自伝というよりも

    山崎まどかの『一度きりの大泉の話』評:萩尾望都が竹宮惠子に向けていた眼差しとその痛み
  • 「文學界」編集長・丹羽健介が語る、実験場としての雑誌 「文芸誌は絶えず変わっていく文学の最前線」

    文藝春秋が発行する純文学の文芸誌「文學界」は、2021年2月号で創刊一〇〇〇号を迎えた。後に芥川賞を受賞した又吉直樹『火花』を掲載した2015年2月号が初の増刷となって以後、最近では「JAZZ×文学」特集の2020年11月号、哲学者の國分功一郎とお笑い芸人の若林正恭(オードリー)の対談を掲載した最新の2021年3月号などが増刷となるなど、たびたび注目を浴びている。また、名物コーナーといえる新人小説月評は、率直な寸評が書かれることで知られ、最近も話題になっている。2019年7月より編集長を務める丹羽健介氏に同誌について聞いた。(2月10日収録/円堂都司昭) “あらゆるものの中に文学がある”という教え ――文藝春秋に入社されたのは1994年。最初から出版社志望だったんですか。 丹羽:漠然とマスコミ志望でしたが、が一番好きだったので。音楽も好きでしたからレコード会社も考えなくはなかったのですが

    「文學界」編集長・丹羽健介が語る、実験場としての雑誌 「文芸誌は絶えず変わっていく文学の最前線」
    iinalabkojocho
    iinalabkojocho 2021/03/12
    Web媒体が純文学本の編集長をインタビューするというのが当世風だねぇ。と。配信と美術館ぐらい違う。
  • 大塚英志が語る、日本の大衆文化の通史を描く意義 「はみ出し者こそが権力に吸収されやすい」

    太平記から漫画、模型、アニメ、ボーカロイドまで、日の大衆文化の通史を一冊ので描き切った日文研大衆文化研究プロジェクトによる書籍『日大衆文化史』(KADOKAWA)。 大塚英志氏 このでは、漫画の鳥獣戯画起源論など、現代の日文化が中世や近世にルーツを持つとする説は、戦時下に政治的に必要とされて「創られた伝統」だと退けた上で、それとは別に一貫して存在してきた運動を描いていく。 「お約束」や共通前提(歌舞伎でいう「世界」)を踏まえながら新要素(同じく歌舞伎でいう「趣向」)を入れて作品が生み出されていくという、二次創作的とも言える仕組みこそが「文化」であり、それは有象無象の大衆=民俗学者の柳田國男がいう「群れとしての作者」が担ってきた、という見立てのもとで見えてきた「日」「大衆」文化史の姿とは――主筆を務めた国際日文化研究センター教授・大塚英志氏に訊いた。 『日大衆文化史』は通史を

    大塚英志が語る、日本の大衆文化の通史を描く意義 「はみ出し者こそが権力に吸収されやすい」
    iinalabkojocho
    iinalabkojocho 2021/01/02
    “『日本大衆文化史』は通史を書かない歴史学者へのカウンター” これは買わねば。 はみ出しものの方が権力に可愛がられるとコロリと落ちるってまさにそう。