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2008年5月12日のブックマーク (8件)

  • 小説を読むこと - Show Your Hand!!

    小説を読むときって、その小説のなかに入っていくような感覚がある、とおもう。俺のなかでは、もしかしたら昔にか何かで読んだのかもしれないのだけど、「海のなかに潜っていく」ようなイメージがある。 小説っていう海のなかに潜っていくためには、勢いや集中力のようなものがわりと重要だし、体が水のなかにいることに慣れることも大切だ。水のなかでうまく呼吸ができるようになれば、どんどん深くまで潜っていくことができたりして。海にもいろんなタイプがあって、簡単に潜っていけるような海もあれば、すぐに苦しくなって水面まで上がって空気を吸わなきゃやってられないような海もある。やたらと深くて底がどこなのか全くわからないような海もある。あまりにも深く、あるいは長時間潜っていると、海のなかから上がってきたときに、現実のほうが逆に現実味を帯びていないように感じられたり、なんてことも(たまには)あったりする。 小説を読むってい

    小説を読むこと - Show Your Hand!!
  • 『愛人(ラマン)』/マルグリット・デュラス - Show Your Hand!!

    記憶についての、そしてイマージュについての小説。これだけ繊細で微妙な、しかも派手さのない作品が、フランスでは150万部のベストセラーになったっていうのはちょっと驚きだ。マルグリット・デュラスは、自身の少女時代、仏領インドシナでの中国人青年との出逢いの体験を、なによりそのイマージュを、小説として再構築してみせる。 少女だったデュラスの、家庭環境をはじめとするハードな状況を脱しようと求めるきもちが、中国人青年との性的関係とふしぎにリンクする。その流れのなかで、彼女はあまりにも早く少女期を過ぎ、女性としてある種の成熟を迎えてしまうのだった…。なんていうのがまあ、この小説のひとつの解釈としてあるだろう。ただ、デュラスは自身の魅力や、まだ幼い自分が中国人青年をどうしようもないくらいに魅了している、っていうその状況にどこか酔っているようにも見える。さまざまな要素が絡まりあった複雑な心象に、それでいて実

    『愛人(ラマン)』/マルグリット・デュラス - Show Your Hand!!
  • 『タイタンの妖女』/カート・ヴォネガット・ジュニア - Show Your Hand!!

    これはすばらしい小説だった!!物語はかなりスラップスティックな感じで、むちゃくちゃな状況にひたすら翻弄されつづける人間の姿が皮肉っぽく描かれている。ただ、ヴォネガットはそれをくだらない、って言うんじゃなく、愛情を込めた視線で見つめているから、シニカルさと表裏一体になったウェットな部分、感傷的なところがこころに響く。 ストーリーはちょっと簡単には書きづらい。時間等曲率漏斗なるものに飛び込んだことで、あらゆる時空間に存在する、神のような存在となった男と、彼に操られるようにして火星、水星、タイタンへと放浪することになる男とを中心にして物語は展開していくのだけど、なにしろそのスケールは宇宙規模だし、全人類を巻き込む宗教の話でもあれば、人間というものの存在意義(のなさ)についての話でもある。 なにか運命のような大きなちからに動かされること、システムのなかに組み込まれること。個人の自由を根源的なものと

    『タイタンの妖女』/カート・ヴォネガット・ジュニア - Show Your Hand!!
  • 『母なる夜』/カート・ヴォネガット・ジュニア - Show Your Hand!!

    第二次大戦中、ドイツでプロパガンダ放送に従事していたアメリカ人の男の物語。彼はナチであると同時にアメリカのスパイでもあって、放送によって国に情報を送り出してもいた。戦後、男はドイツにもアメリカにも居場所を失い、ニューヨークのグレニッチヴィレッジにて暗い逃亡生活を送っているのだが…!というのがまあ大筋のところで、男が過去を回想するかたちで小説は展開していく。 ヴォネガットにしてはずいぶんストレートな語り口の小説だとおもった。つまり、煙に巻くようなところや、皮肉っぽくわらって放り投げてしまうようなところがあんまりない。主人公は自らの行動を弁護することもなければ、その境遇、不運をことさらに嘆いたりすることもない。ただ淡々と自分のいままでを語っていくだけだ。 しかしわたしはいつでも自分のしていることを知っていた。わたしには自分のしたことを背負って生きてゆくことがいつでも可能だった。どうやってか?

    『母なる夜』/カート・ヴォネガット・ジュニア - Show Your Hand!!
  • 『ペット・サウンズ』/ジム・フジーリ - Show Your Hand!!

    ビーチ・ボーイズの『ペット・サウンズ』について、とにかく愛情たっぷりに語っている一冊。エッセイと評論の中間をいくような作風で、アルバムの魅力を、というか、アルバムに対する著者のおもい入れを存分に描き出している。 俺も『ペット・サウンズ』のCDは持っているし、"Wouldn't It Be Nice"とか、"God Only Knows"なんかは相当すきな曲だけど、これが自分にとってすごく大切なアルバムか、って言われれば別にそんなでもなかった。このにしたって、(きっと多くの人がそうであるように)村上春樹訳じゃなかったら手に取ることはなかったとおもう。でも、自分のすきなものをうれしそうに語っている人を見るのは、いつだってとてもたのしい。このでは、著者のジム・フジーリがおもい入れたっぷりに『ペット・サウンズ』を語ってくれていて、その叙情感過多な文章を読んでいるうちに(そして、読みつつ曲を聴き

    『ペット・サウンズ』/ジム・フジーリ - Show Your Hand!!
    inmymemory
    inmymemory 2008/05/12
    この本がただの音楽ガイドと思って高をくくってると不意打ちされる。
  • 『1973年のピンボール』/村上春樹 - Show Your Hand!!

    何年ぶりかに読み返したけど、うーん、やっぱりこれもいい小説!俺は村上春樹は初期の作品がすきだなー。いろんな意味でイタい感じも含めて。『風の歌を聴け』に続く、「僕」と「鼠」の物語なんだけど、前作と比べるとずいぶん感傷的だし、乾いた感じよりは陰さの方が濃くなっている。とはいえ、そんな無防備さこそが、この作品の大きな魅力だ。 鼠にとってのときの流れは、まるでどこかでプツンと断ち切られてしまったように見える。何故そんなことなってしまったのか、鼠にはわからない。切り口をみつけることさえできない。死んだロープを手にしたまま彼は薄い秋の闇の中を彷徨った。草地を横切り、川を越え、幾つかの扉を押した。しかし死んだロープは彼を何処にも導かなかった。羽をもがれた冬の蠅のように、海を前にした河の流れのように鼠は無力であり、孤独であった。何処かで悪い風が吹き始め、それまで鼠をすっぽりと取り囲んでいた親密な空気を地

    『1973年のピンボール』/村上春樹 - Show Your Hand!!
  • 『風の歌を聴け』/村上春樹 - Show Your Hand!!

    高校生のころの俺のバイブルだったこの小説を久々に読み返していたんだけど、自分がこの作品からどれだけあからさまに影響を受け、方向づけられてきていたか、ってことにいまさら気がついて当にびっくりした。いままで自分の頭でかんがえたことなんて何ひとつないんじゃないか、とかちょっとおもったくらい。ビールばっかり飲むようになったのだって、きっとこの小説のせいに違いない。まったく、どれだけ入れ込んでたんだよって感じだけど、まあとにかく、村上春樹の処女作、『風の歌を聴け』は、多くの人にとって(きっと)そうであるように、俺にとってもたいせつな小説だ。1970年の夏、地元に帰省した大学生の「僕」の、何もないような18日間を中心とした物語。 短い断章がいくつも連なった構成で、シーン同士は無作為な感じに繋ぎ合わせられている。断章のなかにはアフォリズムっぽいものも多いし、章の連なりのなかから何らかのイメージ、象徴性

    『風の歌を聴け』/村上春樹 - Show Your Hand!!
  • 女の子と付き合うのが面倒

    かれこれ5年以上、恋人同士といえるような付き合いをしていない。 といっても、非モテではない(と、自分では思っている)。 別に女の子にコンプレックスがあるわけでもないし、容姿も特に問題があるわけでもないし。 あと、同性愛者というわけでもない。 時には女の子の愛情が欲しくなるときもあるし、ムラムラしてくればセックスしたいこともある。 でもね、面倒くさいのよ。 女の子がというより、「女の子と付き合う行為」そのものが。 付き合いだすと、ほとんどの女の子は「恋人らしい振る舞い」を要求してくる。 一緒に歩くときに手を繋ぐとか、休みの日は人ごみにデートしにいくとか。 あと毎日電話したいって子もいたな。 でも実際のところ、毎日電話してきても、そんな刺激的な日常でも送ってない限り、話す内容なんてすぐ無くなるよなあ。 その子は「声が聞ければそれでいい」って言ってたけど。 こういう子たちはあれだ。手を繋ぐ、デー

    女の子と付き合うのが面倒
    inmymemory
    inmymemory 2008/05/12
    もっとゆるやかに付き合えるような相手が見つかれば、少しは考え方も変わるかもしれない←つくづくそう思う。「付き合う」という関係が確立した途端、性急な関係の発展を望むのは不安だからで、別れる理由も不安から