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2009年7月7日のブックマーク (4件)

  •  桐野夏生『グロテスク』 - 西東京日記 IN はてな

    東電OL殺人事件をモデルにした小説ですが、事件をなぞるのではなく、事件からはるかに深くそしてまさに「グロテスク」な世界を描いてみた傑作。 桐野夏生は『残虐記』を読んだことがあったのですが、『残虐記』は面白いもののやや図式的な気がしましたが、この『グロテスク』は筆がほとばしっている感じで、とのかく面白い! Amazonの単行の方に掲載されている著者のインタビューで桐野夏生は「私ね、この世の差別のすべてを書いてやろうと思ったんですね。」と言っていますが、まさに差別とそれを生み出す悪意といったものをとことんまで書いた小説。お嬢様の集まる名門Q女子高に高等部から入った「私」と和恵、天性の美貌を持つ私の妹のユリコ、そして中等部から入って学年トップの成績をキープするミツル。差別と悪意のうずまく学校をサヴァイヴする4人は、やがて壊れていき、ユリコと和恵は夜の娼婦になっていきます。 まあ、この和恵が東電

     桐野夏生『グロテスク』 - 西東京日記 IN はてな
  •  ロベルト・ボラーニョ『通話』 - 西東京日記 IN はてな

    訳者あとがきには「ウディ・アレンとタランティーノとボルヘスとロートレアモンを合わせたような奇才」との評価が引用され、帯には「チェーホフ、カフカ、ボルヘス、カーヴァー、彼らの作品の完璧な受容が、これらの作品の原点にある」と書かれている、チリ出身の作家ロベルト・ボラーニョの短編集。 こんなに脈絡も泣くビッグネームが並ぶと、「さすがにそんなのありえないでしょ?」と思うでしょう。実際、上記の名前のアーティストの作品にそれほど共通点があるとも思いませんし。 ところが、読んでみるとそのいくつかは納得できる。特に個人的にはタランティーノとチェーホフ、その全く関連のないような2人のアーティストが、コーマック・マッカーシーあたりのテイストを通して結びついている、それがこのロベルト・ボラーニョの『通話』だと思いました。 この短編集は短編集でありながら、マイナーな詩人たちの生き様を描いた「通話」、ロシアのマフィ

     ロベルト・ボラーニョ『通話』 - 西東京日記 IN はてな
  •  アーシュラ・K・ル・グィン『闇の左手』 - 西東京日記 IN はてな

    SFの古典的名作をいまさら読了。 やはり面白いですね。両性具有的な宇宙人というジェンダー的な仕掛けや民俗学的な語り口、他者との理解、二元論的世界観、冒険小説的な面白さ、いろいろなものが詰まっているだと思います。特に主人公のゲイリー・アンとエストラーベンの愛と友情は美しいです。 何を今更感がありますが、気づいたのはこの小説も非常に冷戦の影響を受けている小説だということ。 主人公は対立するカルハイド王国とオルゴレインの間で翻弄されるわけですが、オルゴレインは明らかにソ連。 国家を動かす三十三委員会に秘密警察に強制収容所、ソ連を思わせるものがたくさん登場します。 そして、次の部分なんかはまさに冷戦的な構造を言い当てた部分と言えるでしょうし、冷戦が終わっても続いていることでしょう。 「わかりませんね。あなたのおっしゃる愛国心が、国土への愛ではないのだとすると。わたしはそう理解してきたのですが」

     アーシュラ・K・ル・グィン『闇の左手』 - 西東京日記 IN はてな
  •  ヴァーナー・ヴィンジ『レインボーズ・エンド』読了 - 西東京日記 IN はてな

    ヒューゴー賞、ローカス賞の二冠に輝くヴァーナー・ヴィンジの大作。 2030年代、サッカーの試合で流れたサブリミナルとも考えられるCMが実は人類をマインド・コントロールするための細菌兵器だった!という壮大な陰謀から始まる作品は、物語のはじめに影の首謀者が明かされ、さらには「ウサギ」と呼ばれる謎のハッカーが登場し、電脳空間を舞台にした壮大な諜報合戦が描かれるかのように始まります。 ところが、すぐに物語は、アルツハイマーから最新の治療法に寄って回復した75歳の詩人ロバート・グーに焦点が移ります。 気難しくて人を見下しお世辞にもいい人間とは言えないロバートですが、彼の「リハビリ」を通して、ヴィンジはうまく読者を近未来へと導きます。 特殊なコンタクトをつけることで、現実世界にバーチャルなイメージを重ねあわせることができるようになった世界というのは「電脳コイル」みたいな感じですが、それ以外にもさまざま

     ヴァーナー・ヴィンジ『レインボーズ・エンド』読了 - 西東京日記 IN はてな