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ブックマーク / blog.tatsuru.com (13)

  • ご飯を作り、お掃除をすることの英雄性 - 内田樹の研究室

    午から取材。BPという雑誌の村上春樹特集。 村上作品はどうして世界的なポピュラリティを獲得したのか、という問いに対して、「ご飯とお掃除」について書かれているからであろうとお答えする。 世界中、言語や信教や生活習慣がどれほど違っていても、人々は「ご飯を作り、掃除をする」ということにおいて変わらない。 いずれも人間にとって質的な営みである。 「ご飯を作る」というのは、原理的には「ありもの」を使って、そこから最大限の快楽を引き出すということである。 金にものを言わせて山海の珍味を集め、腕のいいシェフに命じて美を誂えさせるというのは「ご飯を作る」という営みの対極にある。 「ご飯を作る」というのは、人類史始まって以来のデフォルトである「飢餓ベース・困窮ベース」に基づいた営みである。 その基は「ありものを残さず使う」、もっと平たく言えば「えるものは何でもう」である。 村上春樹作品には「ご飯を

  • 「父」からの離脱の方位 - 内田樹の研究室

    『1Q84』は記録的な売れ行きらしい。 今の段階で、発売一週間で96万部。 ミリオンを超えることは確実で、『ノルウェイの森』の450万部という記録を塗り替えるかもしれない。 おそらくメディアはこれから、このの文学作品としての意味より、なぜこれがこれほどの社会的な「事件」を引き起こしたのかの方に多くの紙数を割くようになるだろう。 メディアが『1Q84』を「事件」として扱い、膨大な非文学的言説が行き交うようになる前の短い空白の間に、この作品についてまだ誰の感想も聞いていないイノセントな状態で、自分ひとりの感想を書き付けておきたい。 ムラカミ・ワールドは「コスモロジカルに邪悪なもの」の侵入を「センチネル」(歩哨)の役を任じる主人公たちがチームを組んでい止めるという神話的な話型を持っている。 『羊をめぐる冒険』、『ダンス・ダンス・ダンス』、『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』、『アフ

  • 村上春樹と橋本治 - 内田樹の研究室

    の批評家は村上春樹を評価していないと書いたら、以前『B學界』の編集長だったO川さんからメールを頂いて、村上春樹を評価している批評家はたくさんいますよと名前を教えていただいた。 「三浦雅士、清水良典、石原千秋、川村湊、藤井省三、鈴村和成、風丸良彦、荒川洋治、川三郎(特に初期において、現在は批判的)、柴田元幸、沼野充義、和田忠彦、芳川泰久氏、ほかに若い批評家、学者は無数」ということだそうですので、先日のブログのコメントは訂正させていただきます。 蓮實重彦以下ごく少数のケルンが執拗に村上評価を拒否しているらしい。 そうか、彼らは孤立無援の少数派だったのか。 私はどのような論件であれ、絶対的少数派でありながら自説を枉げない人には無条件の敬意を抱く傾向にある。 こうなったら蓮實重彦さんたちにはぜひがんばって孤塁を死守していただきたいと思う。 でも、私が日の批評家たちを(少数の例外を除いて)あ

  • 1Q84 読書中 - 内田樹の研究室

    『1Q84』読書中。 もったいないのでちびちび読んでいる。 何誌からか書評を頼まれたが、最初に『週刊文春』の山ちゃんからを送ってもらってしまったので、渡世の仁義上、あとはお断りする。 ぜんぶにそれぞれ違う内容の書評を書くというのも考えてみると楽しそうであるが、遊んでいる暇がない。 まだメディアでは書評が出ている様子がないけれど、みんなどうしているのだろう。 私はひたすら「ゆっくり」読んでいるので、今 Book 2 の中程である。あと4分の1しか残っていない。 子供の頃には、面白いを読んでいて、残り頁がだんだん減ってくると「ああ、楽しい時間もあとわずかだなあ」と悲しくなった。 どこか「ダレ場」が来たら、そこで読むスピードを落とそうとするのだが、それがないのが「面白い」の面白い所以であって、結局、「あああ」と言っているうちに最後まで一気に読んでしまうのである。 そういう残り頁数が減ってく

  • 壁と卵 - 内田樹の研究室

    村上春樹のエルサレム賞の受賞スピーチが公開されている。 非常にクリスプで、ユーモラスで、そして反骨の気合の入ったよいスピーチである。 「それでも私は最終的に熟慮の末、ここに来ることを決意しました。気持ちが固まった理由の一つは、あまりに多くの人が止めたほうがいいと私に忠告したからです。他の多くの小説家たちと同じように、私もまたやりなさいといわれたことのちょうど反対のことがしたくなるのです。私は遠く距離を保っていることよりも、ここに来ることを選びました。自分の眼で見ることを選びました。」 そして、たいへん印象的な「壁と卵」の比喩に続く。 Between a high solid wall and a small egg that breaks against it, I will always stand on the side of the egg. Yes, no matter how r

  • X氏の生活と意見(内田樹の研究室)

    クリエイティヴ・ライティングの授業で先々週の宿題に学生たちに「・・・さんの生活と意見」というタイトルを課した。 さきに高橋源一郎さんの『タカハシさんの生活と意見』の一部を読み聞かせ、これが『伊藤整氏の生活と意見』、『得能五郎の生活と意見』、『江分利満氏の優雅な生活』といった先行作品を踏まえたもので、さらには遠くロレンス・スターンの『トリストラム・シャンディの生活と意見』にまで遡る伝統的なタイトリングである、という話をしたのである。 『トリストラム・シャンディ』について日で最初に言及したのはおそらく夏目漱石である。 漱石はこの奇書についてこう書いている。 「今はむかし、十八世紀の中頃、英国にロレンス・スターンという坊主住めり。最も坊主らしからぬ人物にて、最も坊主らしからぬ小説を著し、その小説の御蔭にて、百五十年後の今日に至るまで、文壇の一隅に余命を保ち、文学史の出るごとに一頁または半頁の労

    inmymemory
    inmymemory 2008/05/25
    村上春樹『羊をめぐる冒険』→レイモンド・チャンドラー『ザ・ロング・グッドバイ』→スコット・フィッツジェラルド『ザ・グレート・ギャツビー』→アラン・フルニエ『ル・グラン・モーヌ』
  • 入れ歯でGO - 内田樹の研究室

    午前中はめぐみ会の葺合、生田、長田、兵庫北、須磨、垂水西支部の合同支部会にお招きいただき講演をする。 神戸女学院の同窓生の姉妹がたがその結束と召命を確認すべく神戸クラウンプラザ(旧新神戸オリエンタルホテル)に結集されるのである。 めぐみ会の支部総会にお招きいただき講演するのは、京都、大阪に続いて三回目。 三都物語である。 学教職員はめぐみ会に対してお返しすることのできぬほど深い恩恵があるので、講演依頼があると、他の用事はさておき、「万障繰り合わせて」参上することにしている。 6月は寝屋川支部からお呼びがかかっている。 昨日は東京支部からも「今度お願いしますね」と肩を叩かれてしまった・・・ テーブルに就くと、左となりはめぐみ会の石割初子会長、右となりは城智子先生。 背筋を伸ばして、借りてきたチェシャのように、最大限にフレンドリーな笑みを浮かべる。 演題は「日の家族のゆくえ」。 姉妹が

  • 突発性仏文学者症候群 - 内田樹の研究室

    『困難な自由』の未訳箇所の翻訳が終わった。 国文社に送信。 『困難な自由』は既報のとおり76年版を7年かけて全訳を終えたのであるが、翻訳権を取り忘れており、発売できなくなってしまった。 あら残念でした・・・とあきらめていたのであるが、稀覯である1963年版が発見され、ここには76年版には未収録の論文がいくつか収録されていたので、これを底に訳しなおしたのである。 わずかな頁数の仕事だったのだが、去年はまったく時間が取れず、年明けに角川新書のデータを送り終わったあとにできた奇跡的な空白の間に訳し終えたのである。 やれやれ。 いずれ76年版がどこかの出版社から出るはずで、収録論文の大半は重複するので、今76年版を一生懸命訳している訳者の方にはいささか申し訳ないのだが、原理的には翻訳はいくつか種類があって、読者に選択権がある方がよいと私は思っている。 続いてカミュ論を書く。 これは鷲田先生が編

    inmymemory
    inmymemory 2008/02/23
    アルベール・カミュは間違いなく「世界でその著作がもっとも読まれている哲学者」←禿同。何故「シーシュポスの神話」が名著として話題にのぼることが少ないか理解しがたい
  • 内田樹の研究室: うなぎくん、小説を救う

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  • 風邪を引いたのでミステリーでも読もう - 内田樹の研究室

    また風邪を引いてしまった。げほげほ。 ほんとに蒲柳の質である。 免疫力が低下しているということであり、要するに疲れているんですね。 あまりに仕事が多いから。 新規の仕事は全部断っているのであるが、インタビューはぺらぺら話すだけで終わりだから大丈夫だろうと思って次々に引き受けてしまったが、やはりそのあとに「ゲラ」というものが来て、これを校正しなければならない。 たしかに「そういうこと」は言ったのだが、そういう文脈じゃなかったでしょ・・・とか、「そういう内容のこと」は言ったけれど、そういう言葉づかいはしてないでしょ・・・とか、いろいろ屈託がある。 あまりばっさり直すと、まとめた編集者だって「むっ」とするだろうから、できれば手を入れずに済ませたいのであるが、なかなかそうもゆかない。 これまでのベストインタビューは橋さんと大越くんのもので、これは読んだ私自身が「ウチダっておもしろい人だなあ、会っ

  • 内田樹の研究室: うなぎくん、小説を救う

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