小さな織物工場で、6台の織機が絶え間なく動く。ストライプやチェック模様の布が次々と織られている。 織物の産地、富士吉田市下吉田地区で主に傘の生地を作っている「富士ファブリック」。渡辺隆之さん(27)と弟の博之さん(24)が一緒に織機の1台につきっきりとなり、注文に応じた柄を作るため、縦糸と横糸の張力を調整していた。隆之さんは2年前、博之さんは3年前から織物業の道に入り、父で3代目社長の忠嗣さん(63)のもとで修業している。 「いくら技術があっても自分の足元をしっかりできないヤツはだめだっ!」 忠嗣さんが隆之さんをどなる。織機を扱う技術はすでに忠嗣さんに匹敵するが、事務所の机の整理を怠っていたことに腹が立ったのだ。従順な博之さんと違い、隆之さんは「親が言うとかえって従いたくない」と反発する。忠嗣さんは「会社の上司の言うことを聞くのは当たり前」とますます怒ってしまう。親子でけんかは頻繁だ。 た