「トランプ王国」熱狂のあと ラストベルトに住んでみた:5 ドンドンドンドンドンッ。 平日の午後10時すぎ、アパートの薄いドアを激しくノックする音がした。 オハイオ州トランブル郡ウォーレン。私が部屋を借りたアパートは市内でもさみしい地域にあり、昼間でも通りを歩く人はいない。車の通行量も夜になると激減し、とたんに静まりかえる。 それだけに夜10時すぎの突然のノックには正直、肝を冷やした。「夜間は特に気をつけろ」「薬物中毒者は現金20ドルのために何でもやる」「交差点で信号待ちの間に銃撃された人もいるから、レンタカーも安物にした方がいい」。そんな知人の警告が次々と頭をよぎった。 とはいえ室内の明かりは外に漏れている。パソコンで視聴していたニュース番組の音も漏れていただろう。居留守を使えそうにはない。 「誰だ?」。なめられてはマズいので、あえて大声で聞いた。 「オレだ、トニーだ! 凍えそうだから中に