『ラーメンの誕生』(岡田哲/筑摩書房) ラーメンは日本の国民食だ。仕事の帰りに、居酒屋のしめに、ご当地ラーメン巡りに、様々なシーンで愛されている。全国各地の人気ラーメン店では、たった一杯のために大勢が列を作る。麺とスープと具材で構成されるジャンキーなこの料理は、日本になくてはならない存在だ。 ところが、これだけ日本人に愛されるラーメンにはいささかの疑問が存在する。たとえばラーメンの元となった、6世紀前半の中国で創作された麺の打ち方や食べ方は、奈良時代から平安時代の間に、日本に伝来している。しかしそれが日本独自の「ラーメン」として生まれ変わり、徐々に消費され始めたのは、1000年以上も経過した明治時代のことだ。なぜ今の時代にこれだけ愛されるラーメンが、1000年以上もの間、日本人に敬遠され続けたのか? ラーメンの不思議な歴史を追うべく食文化史研究家の岡田哲さんは『ラーメンの誕生』(岡田哲/筑