イギリス的なものを代表するものと言ったら何だろうか? ゴルフ場の原風景ともなっている荒涼とした田園風景、人々が何の懸念もなく貶すことのできるあの味けない食事、それらさえ、ギッシングの筆にかかれば、何とも懐かしいゆかしいものに変わる。 しかし、特に注意を引くのは、イギリス中産階級の持つ確信に満ちた良識である。彼らは平凡に流れることを恐れない。わざとらしい新奇なもの、独創をてらった病的な個性を目指したり、「天才的な」例外を無理に装うようなことは決してない。むしろ、凡庸な一般人に共有された信念の中にこそ、最も信頼すべき基盤を見出さねばならないという確信がある。 ヘンリ・ライクロフトに、このようなイギリス的良識を見ることができる。この精神は、自分を見失う危険の大きいところにおいてさえ、ある種の公正さ・正義の感覚を失わない。このような公正さにしがみつく努力は、それがはっきりと描かれていないだけに、返