オスロ大学図書館のデジタルサービス オスロ大学図書館(University of Oslo Library):マグヌスセン矢部直美(やべなおみ) 1. はじめに 近年、学術全般で使われるようになったデジタル手法は実に幅広い。例えば、様々なプログラムを使い大量のテキストや数値データを基に言語の変化や文学表現の推移を分析したり、古い時代のテキストにある地名や古地図に見られる地名を地図上で重ねて現在と比較したりといった研究が挙げられる。これらはオープンサイエンスの動きとも綿密に繋がっており、将来に向けて学術活動を行う上で、研究者も研究を享受する側も避けて通ることのできないものである。ここでは、オスロ大学(ノルウェー)の図書館で近年発足したデジタル関係学術サービスについて報告する。 2. オスロ大学図書館DSC オスロ大学のDigital Scholarship Centre(1)(DSC)は2年
図書館の所蔵又は貸出が出版物の売上に与える影響に関する研究動向 国士舘大学政経学部:貫名貴洋(かんめいたかひろ) 1. はじめに 出版市場の売上減に歯止めがかからない。取次ルート経由の推定販売金額(1)は、2021年には書籍6,804億円、雑誌5,276億円、合計1兆2,080億円となり、書籍のピーク1兆931億円(1996年)、雑誌のピーク1兆5,644億円(1997年)、合計のピーク2兆6,564億円(1996年)から大幅な下落を示している(図1参照)。
CA2036 – ヤングアダルト世代と共に読書を考える試み:日本子どもの本研究会「ヤングアダルト&アート・ブックス研究部会」の活動 / 大江輝行, 須藤倫子 図書館向けデジタル化資料送信サービスへの北米からの参加の現状と今後への期待 カリフォルニア大学バークレー校C.V.スター東アジア図書館:マルラ俊江(まるらとしえ) アイオワ大学図書館:原田剛志(はらだつよし) 1.はじめに 国立国会図書館(NDL)が2014年1月に開始した図書館向けデジタル化資料送信サービス(以下「図書館送信」;E1540、CA1911参照)の日本国内での参加館は、2022年12月現在で1,392館ある(1)。一方、海外からの参加館は7館にとどまり、そのうち北米からの参加館は筆者らが勤める米国のカリフォルニア大学バークレー校(UCB)C.V.スター東アジア図書館(C.V. Starr East Asian Libra
図書館の展示における表現に関するガイドライン(米国) 国際子ども図書館資料情報課・福井千衣(ふくいちえ) 2022年11月,米国のデューク大学,ノースカロライナ中央大学等が構成する,研究図書館の財政・人員・情報源の整理を行う組織Triangle Research Libraries Network(TRLN)が,展示における適切な表現のためのガイドライン“Exhibition Language Guidelines: A Working Document for Academic Library Exhibit Professionals”を公開した。本ガイドラインは,「北米の図書館に勤務し,米国英語で展示解説を執筆する人を対象としている」と断った上で,ジェンダーアイデンティティ・性指向,障害,社会階級・社会経済的地位,人種・エスニシティ・国籍,宗教・精神性,年齢差別の各トピックについて,
CA2016 – 動向レビュー:“Controlled Digital Lending”を巡る動向:CDLに羽化した図書館サービス理念と米国出版界の主張 / 山本順一 文化機関における3次元計測・記録データの管理・公開の意義と課題 金沢大学古代文明・文化資源学研究センター:野口 淳(のぐちあつし) はじめに 3Dが話題である。コロナ禍におけるオンライン・シフト、デジタル・トランスフォーメーションへの要請、クロスリアリティ(XR)やメタバースへの注目も追い風として、3Dの波は、ゲームやアニメ、映画などエンタメ寄りのビジネスセクターから博物館等の文化機関へ押し寄せている。しかし時流にのった話題性や技術的な新規性だけでなく、本来、3Dは文化機関においてこそ、その効果が強く発揮されるものである。本稿では、3次元計測の原理・技術・データに関する基礎的事項について概説するとともに、文化機関においてデー
内閣府エビデンスシステム(e-CSTI)の概要と今後の方向性 内閣府科学技術・イノベーション推進事務局:白井俊行(しらいとしゆき) 1. 科学技術政策におけるEBPMの重要性 近年、国の政策検討において、客観的な証拠、エビデンスに基づく政策立案(Evidence-based Policy Making:EBPM)の重要性が指摘されている。国の政策検討においては、官庁の担当者がヒアリングを通じて現状の課題や対応策を検討したり、審議会や各種の有識者会議において、幅広い分野の専門家の意見を集め、政策案をとりまとめることが多いが、検討対象となる政策分野が多岐にわたり、かつ、高度に複雑化している場合には、政府内のリソース制約と相まって、幅広い分野の専門家から、偏りなく十分な意見や考え方を聴取することが困難な場合もありうる。 一方、近年のデジタル技術の進展は、大量のデータを迅速に収集し分析することを可
2022年11月23日付で、英国王立協会(Royal Society)の生物学分野の査読誌“Proceedings of the Royal Society B”にDylan G. E. Gomes氏らによる論文“Why don’t we share data and code? Perceived barriers and benefits to public archiving practices”が掲載されました。 論文は、研究データとコードの共有に関する課題と解決策をまとめたもので、個々の研究者の懸念を軽減することを目的としています。生態学等の分野の信頼性・透明性向上に取り組むSociety for Open, Reproducible, and Transparent Ecology and Evolution(SORTEE)の会議で招集したワーキンググループで実施したディスカッ
欧州委員会出版局(Publications Office of the EU)のウェブサイト上で、2022年8月1日付で報告書“Study on the Open Data Directive, Data Governance and Data Act and their possible impact on research”が公開されました。 欧州委員会(EC)研究・イノベーション総局と、オランダ・アムステルダム大学大学院法学研究科教授のMirelle van Eechoud氏による報告書です。欧州連合(EU)のデータ戦略に関する3つの主要な法令(オープンデータ指令、データガバナンス法、データ法案)が、特に研究機関や研究助成機関に与える影響を分析したと述べられています。 報告書の中では、3つの主要な法令の主な規定がまとめられています。また、要約の箇所では、それらの法令の影響を評価するこ
2022年5月2日付で、American Libraries誌に、図書館システムコンサルタントであるブリーディング(Marshall Breeding)氏による図書館システム市場動向に関する分析レポート“2022 Library Systems Report: An industry disrupted”が掲載されていました。 2021年の大きな出来事としてClarivate Analytics社によるProQuest社の買収を挙げ、これをきっかけに図書館技術業界が大きく変貌を遂げたとしています。ProQuest社のEx LibrisとInnovative InterfacesがClarivate Analytics社に加わったことで、ベンダー間の規模の格差が広がっているとしています。 このような流れを踏まえて、以下のようなポイントを挙げています。 ・業界のトップ企業の出現により、競争力を
米国の大学・研究図書館協会(ACRL)が刊行する“College & Research Libraries News”の2022年6月号に、“Top trends in academic libraries: A review of the trends and issues”が掲載されています。 同記事は、ACRLの2021–22研究計画審査委員会(2021–22 Research Planning and Review Committee)により作成されたもので、大学・研究図書館における過去2年分のトレンドをまとめたものです。 取り上げられているトレンドは、以下の通りです。 ・COVID-related trends ・Library staffing challenges ・Space utilization ・Collaborative collections and growth
2022年6月3日、首相官邸において知的財産戦略本部が開催され、「知的財産推進計画2022~意欲ある個人・プレイヤーが社会の知財・無形資産をフル活用できる経済社会への変革~」が決定されました。 重点8施策として、以下が挙げられています。 ・スタートアップ・大学の知財エコシステムの強化 ・知財・無形資産の投資・活用促進メカニズムの強化 ・標準の戦略的活用の推進 ・デジタル社会の実現に向けたデータ流通・利活用環境の整備 ・デジタル時代のコンテンツ戦略 ・中小企業/地方(地域)/農林水産業分野の知財活用強化 ・知財活用を支える制度・運用・人材基盤の強化 ・アフターコロナを見据えたクールジャパン(CJ)の再起動 このうち、「デジタル時代のコンテンツ戦略」では、コンテンツ・エコシステムの活性に向けた戦略を推進するとして、「デジタル時代に対応した著作権制度・関連政策の改革」「デジタルアーカイブ社会の実
米国における研究情報管理に関するOCLCの報告書 関西館図書館協力課・西田朋子(にしだともこ) 米国の大学では,研究情報管理(RIM)への投資が急速に拡大しており,RIMシステムの導入も進んでいる。しかし,国家的な研究評価事業に基づいて各機関が研究成果の収集と報告を行っている国々(E1745参照)と異なり,米国のRIMは,機関ごとに様々な目的で異なる関係者が取り組んでいるため作業の重複が頻発している。 このような経緯から,2021年11月付けで,OCLC Researchが,米国のRIMに関する報告書“Research Information Management in the United States”を公開した。5機関(ペンシルベニア州立大学,テキサスA&M大学,バージニア工科大学,カリフォルニア大学ロサンゼルス校,マイアミ大学)を対象に,図書館・研究管理・情報通信技術・教務等のRI
大学図書館におけるAI顔認証による入退管理システムの導入 武庫川女子大学司書課程・川崎安子(かわさきやすこ) 武庫川女子大学附属図書館(兵庫県)では2021年8月,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策を含むリスクマネジメントの強化と,生涯学習支援のさらなる充実を目的として,NTTドコモのAI顔認証入退管理システム「SAFR(セイファー)」を導入した。利用者は初回来館時にマスクを外した状態で顔を撮影してシステムに登録し,2回目以降はカメラの前に数秒間立ち,顔認証するだけで良い。ディープラーニングによって認証はマスクを着用したままでも可能だが,外した方がより早く正確に検知できる。SAFRの対象は現在のところ,本学の所在する西宮市内在住・在校の中学・高校生のほか,本学の卒業生や保護者,西宮市教育委員会の教職員,連携協定校の学生・教職員といった学外利用者となっている。本稿では,導入の背
2022年2月5日付で、医学誌“The Lancet”の399巻10324号に、短報“The challenges of open access data”が掲載されています。著者は英・ケンブリッジ大学のCarol Brayne氏らです。 短報では、アイルランドの研究プロジェクト“The Irish Longitudinal Study on Ageing”(TILDA)内において、TILDAが公開しているデータセットを利用した研究に関する調査が行われ、深刻な課題が特定されたことを紹介しています。 まず、いくつかの文献において、データの特性に対する不十分な理解、または分析におけるサンプリング方法等の不適切さが明らかになったこと等が報告されています。さらにソフトウェアの進歩によって、ハーキング(結果が判明した後に仮説を提示すること)の実践が容易になると述べられています。逆の順序で仮説を設計す
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