時の権力はいつの時代も、民衆の目と耳そして口をふさごうとする。東京・神田駿河台の明治大学中央図書館1階ギャラリーで7月22日まで開かれている「出版検閲と発禁本」展示。これは、“社会秩序を乱す思想書、猥褻文書だ”として抹殺され、時代に埋没した思想と表現の歴史の一端である。 同大学が発禁本蒐集家の城市郎氏(90歳)から寄贈された約7000点の中から約250点を初公開。奇書、エログロ、思想書など時代に抗った受難の書物や文献が並ぶ。 発禁本の「番付」も掲げられていて、東の横綱は藤村操をかたった偽書『煩悶記』、大関は労働詩集『どん底で歌ふ』、小結に小林多喜二の『蟹工船』。これらは社会の安寧を乱したとされる。西の横綱は江戸川乱歩の『蜘蛛男』、前頭には坂口安吾の『吹雪物語』も。これらは風俗を害するとされ発禁に。 「大正10年(1921年)くらいからは検閲の基準があったとされています」と、同図書館の鈴木秀