かつてトヨタを取材したときに担当者が発した忘れられない言葉がある。それから20年以上経った今、トヨタは大きく変わったと感じている。 30席ほどのブリーフィングルームで新型セリカの斜めフロントからのスタイルをスクリーンに映しながら、トヨタの説明員は言った。「このクラスのクルマにとって重要なのはスタイルです」。クルマのコンセプトの説明は普通そんなに簡単に済まない。こういうときは「流麗なスタイルと、クラスを超えた加速力、高次元なハンドリングと高い居住性を全て備えました」というような欲張りなことを言うものだ。 ところが前述の発言の後、取材陣を一瞥(いちべつ)すると「まさかここにそれが分からない“レベルの低い人”は来てないですよね」と言いたげに、そのまま次の説明に入った。20年以上も前の話だからその後何の説明をしたかもう覚えていないが、その印象は強烈だった。 普通はメーカー側がアレもコレもと八方美人