ある種の快感を抱きながら読んだ。漠然とそうではないかと勘ぐっていたことを、ものの見事に説明してもらえたからだ。がんの新薬が次々と登場している。もちろん画期的な薬剤もあるが、喧伝されているほどのことはないのではないか。腫瘍内科医がその真実をさまざまな角度から検証していく。 第1部「がんの薬の効果はどれくらいで、値段はどれくらいか」の冒頭では、いかに「がんの薬は値段が高すぎ、効果は小さすぎる」かという最大の問題が提示される。がんの治療薬は、全生存期間や生活の質から評価されるべきなのに、それ以外の恣意的ともいえる「代理エンドポイント」が使われることが多い。どうしてこれが医学的に誤りなのか、さらに、効果に見合った妥当な価格決定がなされていないことが多い、と話が進む。 「がんの医学をゆがめる社会的な力」と題された第2部は、まず、例外的に奏効した患者のエピソードが宣伝に使われることの問題点が挙げられる