オーストラリアやニュージーランド、米国で家庭向け太陽光発電システムと組み合わせて使う蓄電池ビジネスが広がり始めている。新規事業者が続々と参入。地元電力会社も追随し始めた。太陽光を取り巻く制度変更と蓄電池のコスト低下が追い風となり、海外では一足先に蓄電池の普及に弾みがつきそうだ。 オーストラリアでは、電気料金が高止まりしている中で、2017年からビクトリア州、南オーストラリア州、ニューサウスウェールズ州という人口集中地域の3州で、屋根置き太陽光発電(出力10kW以下)を対象にした固定価格買取制度(FIT)が廃止される。太陽光発電システムを導入しても家庭の売電収入は大きく減る。 豪AGL、世界で初めて家庭向けに蓄電池を発売 FIT廃止を見越して、電力会社として世界で初めて家庭向けに蓄電池を売り出したのが、オーストラリアの大手電力会社であるAGLだ。同社は2015年5月から、台湾AU オプトロニ
2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催が決まり、観光客の増加などさまざまな経済効果が期待されている。環境コンサルティングのファインブ代表取締役、光成美紀氏は、オリンピックの開催を契機に、ブラウンフィールド(汚染があるために活用されない土地)再生への道を開くべきだと主張する。昨年開催されたロンドンオリンピックにおける英国の戦略的な対応が参考になるという。 (聞き手は田中太郎) 2020年の東京オリンピック開催は土壌汚染浄化などのインフラ整備を進めるチャンスだと提言されていますね。2012年に開催されたロンドンオリンピックに学ぶところが大きいとか。 オリンピックを契機に汚染地の浄化に着手 光成:ロンドンオリンピックは、2011年にIOC(国際オリンピック委員会)が国連環境計画(UNEP)などとともに、持続可能性を高めるオリンピック開催を定めた「ドーハ宣言」を採択した直後に開かれまし
1999年3月8日号より 業績低迷に苦しんでいたアップルコンピュータが復活した。 昨年8月に発売したカラフルなパソコン「iMac」が世界中で爆発的なヒットを呼び、開発体制の見直しなどによるリストラ効果も手伝って1998年度は3期ぶりの黒字決算となった。 このアップル復活の立役者となったのが、97年9月、12年ぶりに暫定ではあるが最高経営責任者(CEO)に復帰した創業者の1人、スティーブ・ジョブズ氏である。帰ってきたカリスマ、ジョブズ氏にアップルの急激な再生の秘密を聞いた。 (聞き手は本誌編集長、小林 収) アップル創業時の魂を社内外に吹き込む 96年3月からアップルの最高財務責任者(CFO)兼執行副社長を務めるフレッド・アンダーソン氏は、復帰したジョブズ氏を指して言う。「アップルの社内にオリジナル・ソウルを戻してくれた」。瀕死状態ともいえたアップルの息を吹き返させたジョブズ氏は、どんな魂を
2015年7月28日、「トヨタ自動車の世界販売台数(2015年1~6月)が2位に転落」というニュースが流れた。要因の一つに、中国など新興国での販売不振があるという。このニュースを聞いて、2015年6月初旬に出張した上海で出会ったA氏のことを思い出した。 上海で生まれ育ったA氏は、日本に留学していたことのある親日家。市内の日系企業に勤め、最近、「迷ったけれどトヨタではなくBMWを購入した」というアラサーの男性だった。なぜトヨタではなく、BMWを選んだのか。その理由について聞くと、こんな答えが返ってきた。 「トヨタ車は、安いけど性能は高くない。上海人にとってトヨタの印象は『まぁまぁ』ってとこかな」 「まぁまぁ…」。日本人としては少し残念な気持ちになってつぶやくと、A氏は微笑みながらこう補足した。 「トヨタ車は中国では高級車のうちに入らないんです。中国人の中でも特に私たち上海人は、ブランド志向が
和田 智(わだ・さとし) カー&プロダクトデザイナー、SWdesign代表取締役 1961年東京生まれ。武蔵野美術大学卒。84年日産自動車入社。シニアデザイナーとして、初代セフィーロ(88年)、初代プレセア (89年)、セフィーロワゴン(96年)などの量販車のデザインを担当。89~91年、英国ロイヤル・カレッジ・オブ・アート留学。日産勤務時代最後の作品として電気自動車ハイパーミニをデザイン。98年、アウディAG/アウディ・デザインへ移籍。シニアデザイナー兼クリエーティブマネジャーとして、A6、Q7、A5、A1、A7などの主力車種を担当。アウディのシンボルとも言えるシングルフレームグリルをデザインし、その後「世界でもっとも美しいクーペ」と評されるA5を担当、アウディブランド世界躍進に大きな貢献を果たす。2009年アウディから独立し、自身のデザインスタジオ「SWdesign 」を設立。独立後は
ニコンのデジタル一眼レフカメラ(デジイチ)が、中国で大変なことになっているのは読者も既に知っているのではないかと思う。3月15日に放映された中国中央テレビ(CCTV)の報道番組で、ニコンのハイアマチュア向けデジイチ「D600」に黒点が写り込むなどの欠陥があり、クレーム対応にも難があったと報道された。これを受け、上海当局がニコンに対し、当該製品の販売差し止めを通告。ニコンもこれを受け入れ、中国の消費者に謝罪したというのが、この原稿を書いている時点での概要だ。 上海で十年あまり生活している実感から言うならば、「クレーム対応が悪い。でもそれ、中国ではニコンだけに限ったことなんですか?」と苦笑を禁じ得ない。ただ一方で、「クレーム対応が悪い。さもありなん」とも思うのである。 なぜか。電化製品に限らず、水道、ガス、電気、雨漏り等々、修理がスムーズに行われ、結果にも満足、というケースが、少なくとも上海に
世界的には、再生エネルギーのコストは急速に下がってきており、再エネは高いという常識は過去のものになりつつある。今回は、大規模ウィンドファームやメガソーラーが相次いで運開している米国の最新情勢を取り上げる。その低コストは衝撃的である。 日本では「コスト高」扱いだが…… 日本では、いまだに再エネはコストが高いという前提で議論が進んでいる。公式に発電コストが見直されたのが2011年に開催されたコスト等検証委員会においてであり、同年12月に発表されている。 そのコスト水準が概ね固定価格買取制度(FIT)のコストの前提となっている。買取り価格は発電原価に事業収益率(IRR)、系統への接続費用を乗せたものである。コスト委員会の結果によると(2010年モデル)、kWh当たりで原子力8.9円(下限)、石炭9.5円、LNG10.7円、陸上風力9.9~17.3円、メガソーラ30.1~45.8円となっている。F
日経ビジネスは昨日、「ユニクロ、パートとアルバイト1万6000人を正社員化」として、ファーストリテイリングの大規模な経営方針を報じた。 3月11日、柳井正・会長兼社長は、この決断を、半年に1度同社が開催する巨大会議「FRコンベンション」の場で従業員に打ち明けた。FRコンベンションに集まったのは、国内外のファーストリテイリンググループに務める店長や幹部たち約4100人。柳井会長は壇上から、およそ1時間かけて自らの新たな経営方針を語った。 臨席する機会を得た記者は、その言葉の強さに圧倒され続けた。「180度変える」「全部中止」「失敗」。自らの過去を否定する言葉が次々に飛び出してくる。 柳井会長が従業員に最も訴えたかったことは何か。ファーストリテイリングはこの先、どこへ向かうのか。日経ビジネス3月24日号特集「ユニクロ大転換 柳井正の決断」では、柳井会長が目指す新たな経営方針の全貌を詳らかに解説
池田 信太朗 日経ビジネスオンライン編集長 2000年に日経BP入社。2006年から『日経ビジネス』記者として、主に流通業界の取材に当たる。2012年『日経ビジネスDigital』のサービスを立ち上げて初代編集長、2012年9月から香港支局特派員、2015年1月から現職 この著者の記事を見る
“ドコモファミリー”の中核だったNEC(NECカシオモバイルコミュニケーションズ)、パナソニック(パナソニック モバイルコミュニケーションズ)が、スマートフォンから撤退する中、同じドコモファミリーの富士通は、今も大手の一角を占めている。富士通はなぜ生き残れたのか――。ここ数年スマホを追ってきた身としては、以前からきちんと話を聞いてみたいと思っていたテーマだった。 富士通は、フィーチャーフォン(ガラケー)時代も、飛びぬけたブランド力を持っていたわけではない。NECやパナソニックに比べると地味な印象を持っていた人も多いはずだ。 しかし、2年前の2011年の秋冬に登場した「ARROWS X」では、デュアルコアCPU、防水、おサイフケータイなど、国内ユーザーが求める機能を網羅した“全部入り”をいち早く実現。その後も、スペックは他社より常に一歩上を行くスマホを出し続け、“ハイスペックなら富士通”とい
2020年の五輪開催地が東京に決まった国際オリンピック委員会(IOC)総会の最終プレゼンテーションで、滝川クリステルさんが使って一躍流行語になった「おもてなし」──。 この言葉に象徴される行き届いたクオリティーの高いサービスを提供しながら、日本企業の多くはそれを収益化できていない。このことについて、あるスウェーデン人の日本企業研究者は疑問でならないという。一橋大学大学院国際企業戦略研究科(ICS)のジェスパー・エドマン専任講師(アシスタントプロフェッサー)だ。 同氏にそうした疑問を抱くようになった背景や収益化のために必要な取り組みを聞いた。 (聞き手は中野目 純一) エドマン先生は幼少の頃、10年余りにわたって東京で過ごされた経験があります。日本企業の経営を研究するようになったのは、そうしたバックグラウンドからですか。 エドマン:それもありますが、それだけではありません。バブル景気に沸いて
「ビル・ゲイツ氏と東芝が次世代原発を開発」――。日本経済新聞電子版が創刊号でスクープを放ったのは2010年3月23日。1年後、東日本大震災と東京電力福島第1原子力発電所の事故で原発熱は一気に冷え、現在も国内のほとんどの原発が停止中だ。だが、次世代原発の開発は着々と進んでいた。 米マイクロソフトの元CTO(最高技術責任者)でMS会長のビル・ゲイツ氏と共に次世代型原子炉の研究開発を進めるネイサン・ミアボルド氏がインタビューに答えた。ミアボルド氏は世界中から発明家を募って新技術開発を進める米知財会社インテレクチュアル・ベンチャーズ(IV)を率いる。同社はゲイツ氏が出資する米テラパワーを通じ、次世代原子炉「TWR」の研究開発にも取り組む。 ネイサン・ミアボルド氏(以下、ミアボルド):IVは知的財産の管理だけでなく、自社の投資で新規技術を開発する事業にも力を入れている。中でもエネルギーは重要な課題で
日本の医療保険制度は国際的に評価が高かった。平均寿命は世界1位である一方、国民医療費の対GDP(国内総生産)比は経済協力開発機構(OECD)諸国の平均以下、皆保険制度に基づく公平性と医療へのアクセスの容易さも、世界的にとても優れたものであった。しかし高齢化が進展し、国の債務が世界最悪水準に積み上がる中、医療費にも抑制圧力が強く働きはじめた。窓口での自己負担金は年々引き上げられ、保険料の上昇に伴い無保険者が増え始め、医療の現場は様々な歪みや困難に直面し疲弊している。 この状況を改善すべく、内閣に昨年末設置された社会保障制度改革国民会議では、年金・介護・少子化に加え医療が重点的に取り上げられ、この8月に最終報告書が取りまとめられた。限られた時間の中、政治家と利害関係者を入れずに、短期的即効性のある改善案の数々を踏み込んで明記したことは十分に評価したい。しかし他方で、「長期的なビジョン」の重要性
国内市場の成熟が進む中、今後、欧米や新興国に主戦場をシフトしていかざるを得ない日本企業。当然、そこで働く個人も「スキルの国際化」が急務となりつつある。グローバル対応が求められるのは語学力のみならず。「日本人の9割は欧米の常識に反する間違ったファッション知識を持っており、国際交渉の場や海外人脈を作る上でハンディになりかねない」と危惧しているのが、松屋銀座の紳士服バイヤー、宮崎俊一氏だ。宮崎氏に「ビジネスファッションの国際常識」について話を聞いた。 (聞き手は鈴木 信行) 著書や講演会などで「日本人の9割は間違ったスーツ選びをしている」と主張されている。具体的にどの辺りに問題があるのでしょう。 宮崎:最も顕著なのはサイズ感。多くの人が自分の体型よりワンサイズ大きなスーツを着てしまっている。肩幅が狭いとかお腹が出ているとか自分の体型にコンプレックスを持つ人ほど、それを隠そうと大き目の服を選びがち
まず、そのニュースについて振り返ろう。横浜市は5月20日、4月1日現在で保育所へ入りたくても入れない「待機児童」がゼロになったと発表した。2010年には待機児童数が1500人を超え、全国ワースト1位を記録。それからわずか3年で急改善したことになる。 林文子市長は待機児童削減を掲げて2009年に初当選。待機児童対策予算を2009年度の約72億円から2010年度には約84億円に、2012年度には約157億円まで大幅に増額した。 認可保育所はこの3年間で144カ所増えた。待機児童が多い地域に新設する際の補助金の上限を増額するなどし、企業参入を促す環境作りも進めた。それによりこの3年間で株式会社や有限会社など企業による認可保育所の新設は79カ所にも上り、市内の認可保育所580カ所のうち、約3割に当たる152カ所が企業設立の保育所になった。 全国では株式会社が運営する認可保育所が全体の1.5%程度(
通販王国と言われる九州で、一貫してダイレクトマーケティング型ネット広告に従事し、担当した全てのネット通販広告主を大成功させてきた、売れるネット広告社の加藤公一レオ(LEO)。 その実践経験とノウハウをもとに、ネット広告のレスポンスを確実にアップさせてしまうことから、クライアント企業から「レスポンスの魔術師」との異名を取り、昨年の「ad:tech tokyo 2012」では、公式カンファレンス人気スピーカー第1位を獲得。そんな今、ネットマーケティング界で波に乗っている売れっ子のLEOが、タブーを恐れず、ネット広告で“売れる”ノウハウ(仕組み)を徹底的に大公開する。 ネットでモノを売る効果的な方法を本音で大公開 この連載の目的はたった1つ。 あなたのネットマーケティングを大成功させること。 本日からこの「日経ビジネスオンライン」に執筆させていただくことになった。 世の中には「ネットマーケティン
たいへん長らくお待たせしました。復活、「若輩者」連載です。就活突入直前に原稿を書き終えた大学3年生諸君はいま、それぞれの戦いの最中にあったり、あるいは内定を祝っていることでしょう。 今回は、体育会系の男子学生ふたりが気づいた「ニッポンの会社」の、文化系サークル出身者にとって恐るべき実態をリポートしてもらいます。思い当たる節がありすぎて怖いです(編集Y) はじめまして。某私立大学生のH、そしてMと申します。3月現在で3年生、絶賛就職活動中(残念ながら、内定は未だ)です。 就活を始める直前に日経ビジネスのYデスクから「難しいことはいいから、学生目線で社会を見た記事を書け!」という、ありがたい機会をいただきました。そこで私たちは、大学生にとっていちばん悩ましい課題である「就職活動」と自分が所属している「体育会」をテーマに書いてみることにしました。拙い文章と思いますが、最後までお付き合いいただけれ
【はじめに】 「がんばれば、なんとかなる」という時代ではありません。 「なんとなくで、なんとかなる」という時代は、とっくの昔になくなりました。現在の資本主義で生きていくためには、“資本主義経済のルール”を知り、それに沿った努力をしなければいけません。 日々、みなさんの目の前には膨大な情報が転がり込んできます。それらをうまく使いこなさないと足元をすくわれることにもなりかねません。ただし、足元ばかり観るようになると、大局を見失い、「木を見て森を見ず」の状態に陥ります。 そうならないために、“資本主義のルール”を知ることが必要なのです。この連載では、経済学理論や経済古典を背景に、この社会がどういうルールで動いているかを解き明かし、その視点から経済のニュースを解説していきます。知らず知らずのうちに見えなくなっていた暗黙のルールが見えてくるでしょう。みなさんの「視界」をクリアにするヒントがご提示でき
外村 仁(ほかむら・ひとし) 米系経営コンサルティング会社を経て、米アップルでマーケティングを担当。ジョン・スカリーからスティーブ・ジョブズまで5年間で4人のCEOに仕える。欧州で経営学修士号を取得後に米シリコンバレーで起業、ストリーミング技術の会社を立ち上げ、売却。現在はエバーノート日本法人会長のほか、ファーストコンパスグループ共同代表、スタートアップ数社のアドバイザーやOpen Network Labの起業家アドバイザーなども務めている。『アップル 驚異のエクスペリエンス』(日経BP社)の解説も執筆した。 (写真:村田和聡、以下同) 外村: 米国全体は不景気なんですが、シリコンバレーだけは別世界といった様相で激しい人の奪い合いが起きています。 特にソフトウエアのエンジニアはもう引っ張りだこ。本当に人が採れません。加えて、ソフトウエア業界の垣根が消滅しつつある点が挙げられます。従来ならコ
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