「欠落した情報」が高める喪失への関心。「失われたもの」に想いを馳せるアドベンチャーゲーム本作の最大の特徴は、なんといっても情緒溢れるアートワークだろう。 技法としては3DCGのモデルをシェーダの処理によりピクセルアート風に描画する形式となっており、ピクセルアートならではの少しザラついた質感と、3DCGの立体的な陰影が融合したタッチが印象的だ。 舞台となる世界は紛れもなく東京であるのだが、具体的な特定のロケーションを参照していないが故に、見覚えがあるのにどこか現実感が無い。 また、低解像度であるが故に抽象度が増幅し、作中では徹底して「思い出の中の景色」に似た朧げで儚い光景が提示される。 つまり、本作のアートワークは、緻密に施された情報の欠落によって鑑賞者へ「失われた情報を想像する」ことを喚起させる。 ここにある感覚はノスタルジーに近いものの、ただ低解像度であるが故に立ち上がる「レトロ感」では