英国映画『オネーギンの恋文』をとうとう観た。プーシキン生誕 200 年に当たる 1999 年,マーサ・ファインズ監督作品。主演は,レイフ・ファインズ,リヴ・タイラー。レイフ・ファインズはプーシキンの大ファンなのだそうである。あの英国風の皮肉と情熱の入り混じった風情は,オネーギン役として悪くなかった。 名作とされる文学作品に基づく映画に,私はたいていがっかりさせられて来た。だから,私のもっとも愛読する古典のひとつである『エヴゲーニイ・オネーギン』の映画化を目にするのは,自分の作品イメージが壊されるのではないかという怖れのほうが期待を遥かに上回ってしまい,私はこの映画をこれまで敬遠していたのである。果たして,ある意味でこの Onegin も,原作の恋愛小説としての側面に主な焦点を当てた一面性を拭い切れなかった。しかし。麗しのリヴ・タイラー! よくぞタチヤーナ役に選んでくれた。私はただそれだけで