報告書では「圧力」や「脅威」といった表現が消え、中国への配慮がうかがえる例年にない抑制されたトーンが気になるところであるが、速度と範囲が著しく拡大した軍の近代化に対し、警戒感を顕わにしている。 中国の近年の経済成長は、18世紀末に英国で始まった産業革命の波が徐々に地球的規模に広がり、ようやく中国に達したことを意味する。 産業革命は工業化を産み、工業化は国力を増進させる。工業化の第1の波に乗り遅れた中国がようやく工業化の道を歩み始めたのだ。廉価な労働力と多額な海外からの投資により著しい経済成長を続け、中国が経済大国として台頭してきたのは歴史的必然と言える。 他方、目覚ましい経済成長を背景に軍事費を21年間連続2ケタ伸ばした結果、1988年に比べて22倍の規模に拡大し、軍事大国としても台頭してきた。 「経済大国は間違いなく軍事大国になる」と米国の元国務大臣ヘンリー・キッシンジャーも語っているが