中学二年の秋、美術部の友人が死にかけの老猫を拾った。家の前で雨に濡れて、顔は疥癬で腫れあがっていた。飼っていた犬が吠えたので気づいたのだそうだ。近所に住んでいるその友人は、慌てた様子で私に電話をかけてきた。 「手伝ってほしい、猫が死にそう」 私が友人の家に着くと、猫はタオルで巻かれ、ダンボール箱に入れられていた。大柄な友人が、ずいぶんと小さくなってダンボールの横に座っている。雨よけにたてかけたビニール傘からはみ出てたジャージの肩が、しっとりと濡れていた。 友人が行きつけの動物病院まで五分。小柄な私が箱を持ち、友人が傘をさし、互いに軽口を叩きながら向かった。抱えたダンボール箱から体温が伝わってくる、猫はガリガリにやせているのに、重かった。 飼っていたわけでもないんだけど、家の前で死なれたら寝覚めが悪いからさ、と友人が言った。私は友人が抱えている課題を思い出し、作業が遅れた良い言い訳になるじゃ