アイヌ史をいかに記述するべきか。ブックマークにあった次の議論から説き起こしたい。id:m-matsuoka氏の「歴史は、物事を記録しておくという歴史文化を持つ民族にしかつくれないわけで、歴史文化をもたなかったアイヌの歴史を認めろというのは変。」というブクマ。氏の歴史とは何か、というのを聞きたい。少なくとも歴史学研究者の考える「歴史」とは全く違うものなのだろう。 私の所属する歴史学界の定義する歴史学における歴史叙述とは幾重にも限定を受けた文字資料を題材として、ある史観に基づいて過去を再構築する試みである、と考えている。歴史的現実はそれこそ無数にある。極端に言えば今起きていることも「歴史的現実」である。過去に起こった「歴史的現実」を叙述する時に残された痕跡から過去を復元するのが広義の歴史学である。その時に使う資料によって次の3つに分かれる。文字史料によって「歴史的現実」を復元するのが狭義の歴史