このコーナーでは、2014年から先端テクノロジーの研究を論文単位で記事にしているWebメディア「Seamless」(シームレス)を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。 X: @shiropen2

このコーナーでは、2014年から先端テクノロジーの研究を論文単位で記事にしているWebメディア「Seamless」(シームレス)を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。 X: @shiropen2
通常は実験室のレンズ越しにしか見えないものに、スポットライトを当てる力が顕微鏡写真にはある。「ニコン・スモールワールド顕微鏡写真コンテスト」は、科学と芸術を讃える場として、50年にわたって毎年開催されている。 2024年の最優秀賞は、研究科学者のブルーノ・シスターナ氏とエリック・ビトリオール氏によるマウスの脳腫瘍細胞の写真だ。細胞の形状や構造を制御するアクチン細胞骨格の欠乏に、神経細胞がどう反応するかを調べた研究の一環として撮影された。この反応は、アルツハイマー病や筋萎縮性側索硬化症(ALS)といった神経変性疾患に関係している可能性がある。 このコンテストでは、世界中から寄せられた2100点の応募作の中から、オリジナリティー、テクニック、インパクトが評価された87点が選ばれた。2位はピンとワイヤーの間で発生するピンクと紫のあざやかなアーク放電の写真、3位は水疱のようなものが見える大麻の葉の
カマバチの一種(セイボウ上科:カマバチ科)のメス Dryinid wasp (Chrysidoidea: Dryinidae), female 葉の下、茎の部分で休んでいるところ。 体長:7 mm 撮影地:コスタリカのモンテベルデ、標高1500 m 今年のコスタリカのモンテベルデは、1カ月ほど遅めに雨季に入った。途端に生きものたちが活発に動き始める。 さて、今年の3月末、野外調査中、長いカーボンの枝切り竿が電線に接触してしまい、15万ボルトもの電流が体を突き抜けていき、自分は一度死んで蘇った。特殊な火傷を負ったが、引き続き同じ人生を歩み続けている。不便はつきものだけど、幸いにも日本からの二人の若者、FumiさんとToshiくんに日常生活のことも含め調査など手助けをしてもらっている。 その二人がなぜか最近、滅多にお目にかかれないカマバチという小さな寄生バチを1種ずつ見つけてくれた。カマバチの
トルコの天体写真家であるUğur İkizler氏が、トルコで発生した激しい雷雨を50分間にわたってタイムラプスで撮影し、100本以上の稲妻を1枚に収めた写真を公開しました。 Mudanya Gökyüzünde Gecenin Aydınlığı – ikizler.org – Uğur İkizler http://www.ikizler.org/index.php/2023/06/18/mudanya-gokyuzunde-gecenin-aydinligi/ Electrifying time-lapse image captures 100 lightning bolts torching the sky over Turkey | Live Science https://www.livescience.com/planet-earth/weather/electrifying
人類は昔から、自然な知覚を超えて存在する実態を理解しようと苦心してきた。人間以外の動物の生気あふれる感覚の世界や、観測可能な宇宙の広大な空間、微小な世界の内部構造など、私たちが直接目にすることができない驚異は無数に存在する。 幸いにも、私たちはごく小さな対象を拡大して記録する技術を手に入れた。毎年、「ニコン・スモールワールド顕微鏡写真コンテスト」には、こうしたミクロの世界をとらえた写真が集結する。48回目となる今年は、4人の審査員が1300点近い応募作品を審査し、入賞作品を選び出した。 最優秀賞の栄誉に輝いたのは、スイス、ジュネーブ大学の研究者、グリゴリー・ティミン氏とミシェル・ミリンコビッチ氏の作品で、グランディスヒルヤモリの胚の前肢を撮影した写真だ。顕微鏡と画像のつなぎ合わせで制作されたこの作品は、ヤモリの前肢の繊細で複雑な構造を蛍光染色で描き出し、ヤモリが苦もなく壁を登るために相乗的
【▲ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が捉えた「ステファンの五つ子」の詳細な姿。約1000枚の画像ファイルから作成されています(Credit: NASA, ESA, CSA, STScI)】いま、「ジェームズ・ウェッブ」宇宙望遠鏡によって捉えられた画像や、異世界のような深宇宙で起きている現象が、インターネットを通じて配信されています。ここでは、このような宇宙の画像や現象が私たちにどのようなインスピレーションを与えているのか、スタンフォード大学の宇宙論研究者、神経外科医、文化史家の3名の考察に耳を傾けてみましょう。 これまでに見たことのない宇宙の詳細や明らかになっていく現象を捉えた画像は、科学者であれ一般市民であれ、人々に「畏敬の念(awe)」を抱かせています。バラク・オバマ元大統領は、このような画像を「心を揺さぶる(mind-blowing)」と表現しています。 These new image
ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が観測した、最も遠いところにある銀河「GLASS-z13」とみられる画像。デンマーク・コペンハーゲン大学ニールス・ボーア研究所提供(撮影日不明)。(c)AFP PHOTO / Pascal Oesch / Cosmic Dawn CenterNiels Bohr Institute/University of Copenhagen 【7月21日 AFP】ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(James Webb Space Telescope)が捉えた画像に写っている銀河は、135億年前のものかもしれない──。米航空宇宙局(NASA)が一連の画像を公開して1週間後の19日、データを分析した研究者がAFPに明らかにした。 ハーバード大学天体物理学センター(Harvard Center for Astrophysics)のローハン・ナイドゥ(Rohan Naidu)氏は
※付きテキストは外部リンクです。はさらに別ウインドウ(タブ)で開きます。 ※固定リンクは星のアイコンに仕込まれています。 ※更新は日付の前日の夜と当日の朝が多いです。掲載済の記事に後からリンクを追加することもあります。 ★ 「木下現象」が捉えられた。 望遠では複数同時、広角では1個に見える。 一度にまとめて流星が降る、木下現象を捉えることができました。2022年3月24日21時21分39秒に富士から望遠カメラで捉えた様子です。それぞれ2等程の明るさで、火球と呼べるほど明るくはありませんでしたが、3個以上の流星がまとめて流れました。 pic.twitter.com/19R0A3QxrO — 藤井大地 (@dfuji1) March 31, 2022 こちらは同じ流星を広角カメラで捉えた様子です。広角では一つの流星にまとまって見えます。 pic.twitter.com/kVrLUFRmIi —
地球から5500万光年離れた銀河「M87」にある超大質量ブラックホールの磁場を取り巻く偏光の様子を捉えた画像。欧州南天天文台提供(2021年3月24日公開)。(c)AFP PHOTO /EUROPEAN SOUTHERN OBSERVATORY 【3月25日 AFP】世界初のブラックホール撮影に成功した天文学者チームが24日、新たに画期的な画像を公開した。以前撮影した超大質量ブラックホールの磁場を取り巻く偏光の様子を捉えた画像で、このような偏光をブラックホールの端の近くで測定するのは、従来不可能だった。 【関連写真】史上初めて撮影されたブラックホールの画像 国際共同プロジェクト「イベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)」は2019年4月、地球から5500万光年離れた銀河「M87」にある超大質量ブラックホールの撮影に成功したと発表し、その画像を公開。画像には中心が暗く、周囲に炎のようなオ
あたかも冥王星の上空を飛んでいるかのように、この星のゴツゴツした表面を間近に体験できる映像が新たに公開された。2015年の最接近通過時のものを含め、NASAの探査機ニューホライズンズが撮影した100点以上の画像を使っている。(参考記事:「冥王星“接近通過”をめぐる10の疑問に答える」) 画像を途切れない映像にするため、科学者らはニューホライズンズから送られたデータと標高モデルを用いて映像を補間。詳細を際立たせるため、表面の色を強調した。そうしてできた動画は、この準惑星にある山々や渓谷の姿を浮き彫りにしてくれる。 冥王星の衛星カロンの動画も同時に公開された。プレスリリースによると、今回の動画は冥王星とカロンについてこれまでで最も詳しく包括的に表現しているという。(参考記事:「冥王星の衛星カロンに謎の黒い領域」) ニューホライズンズは現在、カイパーベルトを太陽系のより外側へと飛行し、2014M
タンザニア、セレンゲティ国立公園内の谷を歩く、非常に珍しい「金髪」のシマウマ。飼育下ではわずかに見られるが、今回の目撃例によって、野生でも少なくとも1頭は生きていることが確認された。(PHOTOGRAPH BY SERGIO PITAMITZ) タンザニアのセレンゲティ国立公園の静かな谷にある水場の近くで、2月17日、写真家のセルジオ・ピタミッツ氏は、移動中のシマウマを撮影しようと待ち構えていた。開けた場所に数十頭のシマウマがゆっくりと姿を現したとき、群れの中に見慣れないものがいた。1頭だけ妙に白っぽいのだ。 「最初は、埃まみれになったシマウマだと思いました」とピタミッツ氏は語る。しかし、そのシマウマが水の中に入っても、「埃」は洗い流されなかった。写真家は夢中でシャッターを押した。 この金髪のシマウマは、シマウマではめったに見られない「限局性白皮症」だろうと、米国ハドソンアルファ・バイオテ
竹を食べる、成都ジャイアントパンダ繁育研究基地の若いパンダ。現在のパンダは涼しくて湿った気候を好む。(PHOTOGRAPH BY JAK WONDERLY, NATIONAL GEOGRAPHIC CREATIVE) 2014年8月、古人類学者の張穎奇(チャンインチィ)氏率いる研究チームは、史上最大の霊長類であるギガントピテクスの手がかりを求めて、ベトナムに近い中国南部の陥没穴に調査に入った。彼らは、この自然の落とし穴に落下したさまざまな動物たちの骨を採取して持ち帰った。(参考記事:「類人猿ギガントピテクス、大きすぎて絶滅していた」) その中にギガントピテクスの骨はなかったものの、研究チームを驚かせる発見が待っていた。2万2000年前のジャイアントパンダ(Ailuropoda melanoleuca)の下顎が混ざっていたのだ。さらにその顎の化石には、世界最古のパンダのDNAが残っていたこと
何千年にもわたり、人々は夜空に輝くオーロラに魅了されてきた。しかし、注意深いアマチュアの科学者たちが、これまでのオーロラとは異なる新しいタイプの発光現象に気づいたのはこの数年だ。わずかな間だけ姿を見せる、紫にまたたくその光のリボンは専門家の注目の的となり、3月14日付けの学術誌「Science Advances」に第一報が掲載された。 「カナダのアルバータ州からやってきたオーロラハンターたちが、真夜中に外に出て北の空を眺め、美しい写真を撮っていました。そしてたまたま、遠い南の空に、紫色にかすかに光る細い弧を見つけたのです」。米メリーランド州グリーンベルトにあるNASAゴダード宇宙飛行センターの宇宙物理学者エリザベス・マクドナルド氏はそう話す。この紫色のオーロラは、通常のものとは異なる物理現象だという。(参考記事:「オーロラから聞こえる謎の音の正体を解明」)
イギリスの工学・物理科学研究評議会(Engineering and Physical Sciences Research Council:EPSRC)が主催する科学写真コンテストの「Equipment & Facilities」部門で1位に輝いたのは、なんと目に見えないはずの原子を目に見える形で写真に収めた「Single Atom in an Ion Trap」(イオントラップに捉えられた1つの原子)という作品でした。 Single Trapped Atom Captures Science Photography Competition's top prize - EPSRC website https://www.epsrc.ac.uk/newsevents/news/single-trapped-atom-captures-science-photography-competitio
オリオン座の一等星ベテルギウスの姿を、アルマ望遠鏡が視力4000を超える超高解像度でとらえました。ベテルギウスは、その一生の終末期である赤色超巨星の段階にあり、太陽のおよそ1400倍の大きさにまでふくらんでいます。アルマ望遠鏡が撮影した画像では、星表面の一部で電波が強くなっており(画像内の白い部分)、周囲より1000度ほど高温になっていることがわかりました。また画像左側には、少しふくらんだような構造も見えています。 超高解像度観測で調べる星の表面 夜空に見える星は非常に遠くにあるので、望遠鏡で見てもふつうは点にしか見えません。しかしベテルギウスは、地球から約500光年と比較的近い位置にある上、太陽の1400倍(太陽系で言えば木星の軌道のあたり)にまで膨らんでいるため、非常に高い解像度の観測で表面の模様を調べることができる数少ない星のひとつです。 アルマ望遠鏡が見たのは、可視光で見た時のベテ
実はこの文字列、真っすぐ平行に並んでいます。傾いて見えるのは目の錯覚、すなわち錯視です。信じられないという方は、定規や鉛筆など真っすぐなものを文字列に当ててみると、水平であることが確認できると思います。今回はこの傾いて見える文字列の錯視の謎に迫ります。 日本発のクールな錯視 これまで錯視図形は研究者やデザイナーなど、特定の人たちにより見いだされ、作られることがほとんどでした。しかし、傾いて見える文字列の錯視は、少し変わった来歴を持っています。 事の発端は2005年頃、日本のネット掲示板などに傾いて見える文字列が次々に投稿されたことがきっかけでした。どなたが最初に始めたのか、筆者はその答えにたどり着けませんでしたが、当時は多数の傾いて見える文字列が日本のネット掲示板やブログを賑わせていました。 通常、錯視は何かある特別な図形によって発生します。それに対し、傾いて見える文字列の錯視は、特定の図
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