700ページ以上の大作、さらに経済専門書にも関わらず、世界各国で100万部以上を売り上げた『21世紀の資本』。現在、空前の「ピケティーブーム」だ。なぜ、こんなにも注目が集まっているのか。そして、ピケティはいったい『21世紀の資本』で何を語っているのか。訳者・山形浩生と、経済学者の飯田泰之が語る。紀伊國屋ホールで行われた「ピケティ『21世紀の資本』刊行記念 山形浩生×飯田泰之トークショー 訳者解説プラス」より抄録。(構成/山本菜々子) 飯田 本日は、『21世紀の資本』訳者・山形浩生さんにお話を伺います。ピケティ大流行ですね! 米国では50万部売れたそうですが、現在、日本ではどのくらい売れているのですか。 山形 7刷か8刷で、13万部売れていると聞いています。 飯田 単価を考えると今世紀でいちばん売り上げた経済専門書になるのではないでしょうか。 山形 そうですよね。僕のところに翻訳しろという
クルーグマン:確かにあそこまで悪くなるとは予測できなかった。世界は複雑なものだし、仕方ないところはある。ただ、金融危機以降、多くの経済施策が機能してきたのは事実だ。金融緩和がインフレを招くとか、金利が高騰するとか言われていたが、まったくそういうことはなく、見事に効果を発揮した。 私自身がやってきたことがある意味、「詐欺行為では」と問われると自信がないが、経済学者にとっての問題は、将来を予測できないことではなく、まったく通用しない理論をふりかざし、こだわり続けることだろう。 スティグリッツ:景気回復はそれほど力強いものとはいえない。金融緩和は確かに機能した部分はあるが、それだけで十分だったとはいえない。財政施策や景気刺激策があって、ようやく軌道に乗り始めた。そもそも金融危機以前に、経済は破綻しており、バブルで命をつないできた。そこにわれわれ経済学者も政府も気づくべきだった。 経済学はまだまだ
アメリカで使用される通貨は「ドル(dollar)」ですが、ドルは記号で「$」と表し、大文字の「S」が入っています。「dollar」という文字のどこにも「S」は入っていないのですが、なぜドルは記号で「$」と表記するのでしょうか。 Why Is The Dollar Sign A Letter S? http://observationdeck.io9.com/why-is-the-dollar-sign-a-letter-s-1683940575 そもそも、「$」はドルを表す記号ではなく、スペインや旧スペイン植民地で使われている、もしくは使われていた通貨「ペソ」を表す記号です。 By Bill Brooks 話はさかのぼり1500年代、ヨーロッパ中央の現在チェコ共和国がある辺りにあったのがボヘミアです。当時の中央ヨーロッパは銀が豊富に採れる土地だったので、数世紀にわたり銀を海外に輸出し、シル
フランスの経済学者であるトマ・ピケティ氏が著した『21世紀の資本』は、経済学の専門書(しかも分厚い)としては異例の世界的ベストセラーとなった。日本でも昨年12月中旬に翻訳本が発売されたが、1冊6,000円弱(728ページ)の大著が、1冊1,000~1,500円(200ページ程度)の新書版が主流となっている日本の経済書部門の売上第1位を続けていることは驚異的である。 日本の知識人は、このピケティ氏の『21世紀の資本』を、マルクスが著した古典『資本論』にとって代わる新しい左派の経済学の「聖典」として熱狂的に受け入れているようだ(発売当初の海外メディアがマルクスの『資本論』になぞらえて紹介したことが大きく影響しているとみられる)。特に、マルクス経済学同様、経済学というよりも、思想・哲学分野の識者の熱狂ぶりが目立つ。 反アベノミクスの動きが過熱するはずだったピケティ氏来日 ところで、ピケティ氏は、
格差解消の処方箋として「富裕層の資産や所得に対する累進課税」などを提唱し、一世を風靡した仏パリ経済学校のトマ・ピケティ教授。1月末に来日するや連日の講演や取材に追われ、「経済学界のロックスター」とも称される人気ぶりを見せつけた。伝統的な経済理論を身に付けたトップクラスの経済学者でありながら、20世紀フランス現代歴史学のアナール派における巨匠リュシアン・フェーヴルやフェルナン・ブローデルらの思想を受け継ぐ、フランス流エリートだ。 アナール派は、民衆の文化生活や経済などの社会的背景を重視、歴史を言語学、経済学、統計学、地理学など他の学問の知見を取り入れながら分析し、歴史学に革命を起こした学派だ。それまでの歴史研究で主流だった、政治史や事件史、人物の研究が中心になる手法とは異なり、おびただしい数の数値や事実を集め、地球的な規模で学際的な分析を重視する。 ピケティ教授はそうしたフランス発の手法を、
1月初め、米ボストンで米経済学会の年次総会が開かれた。経済書としては空前の人気となった「21世紀の資本」の著者である仏経済学者、トマ・ピケティ氏も招かれ、格差問題に関するパネルが催された。司会役は、ハーバード大教授で米国を代表する経済学者、グレッグ・マンキュー氏である。(フジサンケイビジネスアイ) 攻撃的な姿勢 参加者の間で話題となったのが、マンキュー氏のピケティ氏に対する攻撃的な姿勢だ。資本利益率「R」が、経済成長率「G」を上回っているがゆえに格差が生まれていることを説明するピケティ氏を揶揄(やゆ)して、「R>G だからどうした?」という小論文を発表した。 しかもだ。「格差があって何が悪い?」「彼(ピケティ氏)は金持ちが嫌いなのだ」とまでマンキュー氏は言い放った。 「経済書がここまで人気になったのは珍しい」とマンキュー氏はほめたものの、「21世紀の資本」と比較した過去のベストセラーが「フ
ピケティ『21世紀の資本』 訳者解説 (v.1.1) 2015.1.23-2.1 山形浩生 hiyori13@alum.mit.edu この資料はクリエイティブコモンズ Attribution-ShareAlike 4.0 国際ライセンス下で公開されています. 今日の構成 • 1. 『21世紀の資本』とピケティのえらさ • 2. あらすじ: r > g から格差拡大へ • 3. 格差是正の処方箋は? • 4. ピケティ本の受容・誤解・批判 • 5. 日本への示唆とは? • 6. 落ち穂拾い 2 まずはじめに…… • ピケティの本と、ピケティの他の論文での記述と、 ピケティがインタビュー等での発言とは、分けて 考えよう! – 本がいちばんストイック。たぶん意図的に書いていな い話もかなりある。 – 前二つは、それなりにきちんと考えてまとめたものだ けど、インタビューは(特に日本のことなんかは
週刊東洋経済 2015年 1/31 号 [雑誌] 出版社/メーカー: 東洋経済新報社発売日: 2015/01/26メディア: 雑誌この商品を含むブログ (4件) を見る 東洋経済の2015.01.31号がピケティ特集。ざっと見たけれど、なかなかいいできだと思う。前半はピケティに関する特集、後半はピケティとは関係なく、経済学のおもしろいトピックをいろいろ紹介。 pp.46-95というかなりのページを割いた特集で、内容も結構充実している。特によくできているのは、pp.58-63。r>gについて、かなり深い分析と、経済学におけるこれまでの分配の扱いについて。よく調べてあるし、まとまりもいい。 pp.64-65のピケティ批判論の紹介は……メンツはカラフルだけれど(グリーンスパンsan、ジョーンズ、コーエン、アセモグル他)、どれもブログの感想文や印象批評レベルの批判コメントばかりなので、そんなに深く
経済的格差は長期的にどのように変化してきたのか? 資本の蓄積と分配は何によって決定づけられているのか? 所得の分配と経済成長は、今後どうなるのか? 決定的に重要なこれらの諸問題を、18世紀にまでさかのぼる詳細なデータと、明晰な理論によって解き明かす。格差についての議論に大変革をもたらしつつある、世界的ベストセラー。 「本年で、いや、この10年で、最も重要な経済学書になると言っても過言ではない」 ポール・クルーグマン(プリンストン大学教授) 「地球規模の経済的、社会的変化を扱った画期的著作だ」 エマニュエル・トッド(フランス国立人口統計学研究所) 「時宜にかなった重要書だ」 ジョセフ・スティグリッツ(コロンビア大学教授) 「かれの解決策に賛成するにせよ、しないにせよ、資本主義を資本主義から救おうとする人たちにとって正真正銘の課題だ」 ダニ・ロドリック(プリンストン高等研究所教授) 「この事実
21世紀の資本 作者: トマ・ピケティ,山形浩生,守岡桜,森本正史出版社/メーカー: みすず書房発売日: 2014/12/09メディア: 単行本この商品を含むブログ (107件) を見る ピケティ『21世紀の資本』は分厚いし、データも重いし、印象批評以上の批判がなかなか出てこなかった。これは日本はもとよりアメリカでも同じ。でも刊行が半年先行した英語圏では、そろそろまともな反論や批判(いい意味で)が出てき始めた。 現時点で、それを最もうまく(そしてまとまった形で)整理したのが、2015年のお正月にボストンで開催されたアメリカ経済学会大会で、グレッグ・マンキューを座長に開催された、ピケティ『21世紀の資本』をめぐるセッションだと思う。その予稿集がマンキューのブログに挙がっている。 GREG MANKIW'S BLOG: Me at the ASSA Meeting (2015.1.1) 批判の
The British Journal of Sociology:Special Issue Piketty Symposium 2014.12 イギリス社会学ジャーナルなる雑誌が、社会学としてピケティ『21世紀の資本』について2014年暮れにシンポジウムを開いたとか。ぼくはこの業界に詳しくないけど、イギリス社会学会のえらい雑誌みたいだ(ちがったら教えて)。その論文集が出ている。 ピケティは、自分の本が経済学と歴史学との間隙に成立したものたと主張している。そして経済学はいばりんぼうをやめて、他の社会科学との協力を進めなくてはいけない、と述べている。だから、こういうアプローチは大歓迎だろう。そして、分析として社会学的な知見が活かせそうな部分もいろいろありそうだ。というわけで見てみたんだが…… ……なんか、あまり生産的な中身がないよ。冒頭のSavage論文は、それなりに明解で、ピケティがどんな
21世紀の資本 作者: トマ・ピケティ,山形浩生,守岡桜,森本正史出版社/メーカー: みすず書房発売日: 2014/12/09メディア: 単行本この商品を含むブログ (107件) を見る ピケティについて、訳者としていろんなところで話をきかれるんだが、だいたい出てくる話は同じ。ツイッターとかで、ピケティに仮託してあれこれ言う人たちの言うことも似たり寄ったり。その一方で、本当に重要とか鋭いとか思われる質問をする人はあまりいない。 そんなことで、とりあえずFAQをまとめました。長い本なので、部分的に取り出せばどんな意見でも裏付けは出てくるだろう。でも常に本全体の文脈や、話全体の文脈は理解してものを言いたいものです。ピケティのあの本は、「理屈はどうあれデータ見たらこうなってるんです」というのが最大の強みでもあり、それが一方で部分的な弱みにもつながっている。一方で、あの本の記述がピケティの見解のす
1月16日、「スイスフランショック」の余波が世界的に広がっている。写真は同硬貨など。ベルンで16日撮影(2015年 ロイター/Thomas Hodel) [ロンドン 16日 ロイター] - スイス国立銀行(中銀)が一転してフランの対ユーロ上限を撤廃した「スイスフランショック」の余波が世界的に広がっている。個人投資家が多額の損失を被り、仲介していた為替業者が破綻に追い込まれるなど、当局も対応に乗り出した。
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