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ブックマーク / www.newsweekjapan.jp (118)

  • 民主党予備選、サンダース逆転の秘策はあるのか?

    共和党ではドナルド・トランプ候補が「事実上の統一候補」となっていますが、党内の大物、特に大統領経験者や下院議長が不支持を表明していて、まだ「トランプ降ろし」や「保守系無所属候補」の可能性も取り沙汰されています。 一方の民主党は、数字の上ではヒラリー・クリントン候補が「ほぼ統一候補の座を手中に収めている」わけですが、それでもバーニー・サンダース候補は選挙戦から撤退する気配がありません。では、具体的にサンダースには何らかの勝算があるのでしょうか? まず現在の獲得代議員数ですが、民主党の場合は「予備選結果を配分したものに拘束されるプレッジド代議員」というものが主で4051あります。この他に「スーパー代議員」714を加えた4765というのが代議員総数で、その過半数超えに必要な2383が「マジックナンバー」となっています。 現在の数字(現地5月9日時点)はどうなっているのかというと、 ―ヒラリー・ク

    民主党予備選、サンダース逆転の秘策はあるのか?
  • 突如飛び出した共和党「反トランプ連合」の成算は?

    ヤル気満々 予備選2位のクルーズ(写真右)はフィオリーナ(左)をランニングメイトに指名した Aaron Bernstein-REUTERS 今週になって突然、共和党の予備選で現在2位のテッド・クルーズ候補と3位のジョン・ケーシック候補のそれぞれの陣営から選挙協力を結ぶという発表があった。具体的には「インディアナ州(予備選は5月3日)はクルーズに」そして「オレゴン州(5月17日)とニューメキシコ州(6月7日)はケーシックに」勝たせる「票の交換」をするというものだ。 この「作戦」に成算がないわけではない。3州の中で、特に焦点となるのはインディアナ州だ。ここは代議員数57の大きな州で、しかも「勝者総取り」となっている。ここをクルーズが取れば、確かにドナルド・トランプ候補の「過半数超え」を阻止する可能性はグッと高まる。 だが、メディアの反応は散々だった。例えば元ブッシュ政権の報道官で、現在は共和党

    突如飛び出した共和党「反トランプ連合」の成算は?
  • 破壊王! トランプの「政治テロ」が促すアメリカの変革

    型破りな姿勢を貫いて“非常識”な政策を提案し続けるトランプは、候補として失格であっても「ディベートメーカー」としては貴重な存在 Randall Hill-REUTERS ご存知の通り、僕はドナルド・トランプ大統領候補をちっとも応援していない。 不適切な発言でアメリカのイメージを下げたり、人種間の溝を広げたり、候補を選ぶプロセスをぶっ壊しちゃったり・・・そんな彼を批判したいと思うときが山ほどある。しかし、こんな僕でもトランプを、2点においては高く評価している。 1つは、彼のおかげでコメンテーターなどを始め、僕の仕事が増えていること。実にありがたい人! こちらは僕が得する話だ。 もう1つはみんなの得になる話。それは、型破りな候補の姿勢を貫いて、"非常識"な政策を大きな声で提案し続けていることだ。 例えば「トランスジェンダー(性同一性障害など)の方が身体の性別と関係なく、気持ちが男性なら男性用の

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  • 選挙に落ちたら、貿易会社の社長になれた話

    中国出身の私は昨年、日に帰化して新宿区議選に出馬したが、その挑戦は民主主義のない国・中国の人たちにも大いに注目された。落選後、中国で知名度だけでなく信用度も高まり、複数の日中間ビジネスを手掛けることになった(写真提供:筆者) ニューズウィーク読者の皆さん、1年10カ月ぶりに李小牧が戻って参りました! 初めましての方に自己紹介を。私は1960年生まれの"元"中国人。1988年に私費留学生として日にやってきて、新宿・歌舞伎町で外国人向けの「案内人(ガイド)」として働きだした。当時は「日で一番危険な街」だった歌舞伎町で、中国マフィアや日のヤクザとの"事件"は1度や2度ではない。その体験をまとめた著書『歌舞伎町案内人』(角川書店、2002年)はベストセラーに、そして映画化までされた。 そんな時、舞い込んだのがニューズウィーク日版のコラム連載の仕事だった。「外国人の視点、歌舞伎町の視点で日

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    kangiren
    kangiren 2016/04/23
  • パナマ文書に激怒するアイスランド国民の希望? アイスランド海賊党とは

    「パナマ文書」が起こした余波 レイキャビクの国会議事堂前で大規模なデモが発生した。Stigtryggur Johannsson-REUTERS 4月3日に流出した「パナマ文書」が世界のメディアを賑わせている。リストにはイギリスのキャメロン首相の親類やロシアのプーチン大統領の知人、中国の習主席を含む共産党トップの親類など大国指導者の関係者も多数含まれており、説明責任への糾弾はまだ続きそうだ。 なかでももっともおおきな反響があったのは、アイスランドだろう。アイスランドでは、「パナマ文書」がリークされた翌日に首都・レイキャビクの国会議事堂前で大規模なデモが発生。参加者の数は人口の10%とも言われる。 pic.twitter.com/bKJqFnuneb — (╯°□°)╯︵ ┻━┻ (@w03_) 2016年4月4日 4月4日、アイスランド大規模デモの様子(Tweet by Jason Scot

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    kangiren
    kangiren 2016/04/12
    元気にする会がこれに近かったかもしれないが。残念。
  • 民主主義をかなぐり捨てたトルコ

    今月初め、政府に批判的な有力紙ザマンを突然、政府の管理下に置いたトルコのレジェップ・タイップ・エルドアン大統領がなりふり構わぬ過激派対策に走ろうとしている。「西側の一員」としての顔はほとんどかなぐり捨てている。 【参考記事】「民主化」トルコを売った男 ジャーナリスト、学者、議員も対象に 首都アンカラでは13日、爆弾を積んだ車両が爆発、これまでに37人の死亡が確認されている。事件を受けてエルドアンは、過激派対策法を改定し、ジャーナリスト、政治家、学者も取り締りの対象とする法案を議会に提出。「クルド人寄りの政治家がテロをそそのかしている」ので、議員の免責特権を「直ちに」廃止する必要があると演説した。 「免責特権問題に早急にけりをつけなければならない。議会は迅速に審議を進めるべきだ」──この発言が「クルド人寄りの政治家」、即ちクルド系政党・国民民主主義党(HDP)の議員の刑事告訴を視野に入れたも

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  • 「トランプ現象」を掘り下げると、根深い「むき出しのアメリカ」に突き当たる

    記事の冒頭にこちらの写真を貼っておく。後ほど解説するので、数秒間見つめていただきたい。 ドナルド・J・トランプ氏を理解するには、まず彼の熱烈な支持者の心境に寄り添うことが必要だ。アメリカリベラル系メディアはトランプ氏の大躍進に焦りを隠せず、来る日も来る日もひたすらこき下ろす記事を発信している。 だが、ただ「おぞましい」「明らかな嘘を付いている」「支離滅裂な演説をする」「まったく実現不可能な公約を口走っている」「暴言がひどい」と羅列しているだけでは、トランプ氏の破壊力に太刀打ち出来ない。それどころか次にトランプ氏が仕掛ける扇動に対してあらかじめ免疫をつけることもできない。大手メディアや共和党のエスタブリッシュメントがトランプ氏を「許しがたき、恥ずべき存在」だと非難すればそれだけ、同氏の支持者は熱狂するからだ。「ざまを見ろ」と。 この支持者たちは誰なのか?なぜ溜飲を下げているのか? 表面的な

    「トランプ現象」を掘り下げると、根深い「むき出しのアメリカ」に突き当たる
  • トランプ勝利で深まる、共和党「崩壊の危機」

    深まる混迷 トランプはこのまま予備選で代議員数の過半数を獲得して統一候補になるかもしれない Chris Bergin-REUTERS 予備選最大のヤマ場「スーパーチューズデー」の結果、民主党はヒラリー・クリントン候補が勝利へ向けて大きく歩を進めた。ヒラリーの勝利演説は、選を意識した威風堂々としたもので、すでに選挙戦のターゲットを「対共和党」に向けてきている。 一方で、対する共和党は混迷の中にある。いや「崩壊の危機」と言ってもいい。 ドナルド・トランプ候補が多くの州で勝利したということが問題なのではない。この時点では、2位以下の候補も代議員数を獲得できるので、代議員数ではまだ他の候補も追撃可能だし、そもそも今回の「トランプの勝ち方」は政界やメディアの関係者にとっては「想定内」の範囲だったからだ。 問題は、他の候補の動向だ。 まず、テッド・クルーズ候補だが、地元テキサスでは「仮に負けたら撤退

    トランプ勝利で深まる、共和党「崩壊の危機」
  • 「トランプ降ろし」の仰天秘策も吹き飛ぶ、ルビオとクルーズのつばぜりあい

    今週開かれた共和党のネバダ州党員集会では、ドナルド・トランプ候補が45.9%の得票率を獲得し、遂に40%の大台を突破。2位のルビオ(23.9%)、3位のクルーズ(21.4%)両候補に大差をつけています。来週3月1日の「スーパー・チューズデー」(南部の州が多いので大学スポーツリーグの名称を取って別名「SECプライマリー」とも呼ばれる)」では、共和党の場合14州で予備選または党員集会が行われますが、現在のトランプ陣営は絶好調と言っていいでしょう。 共和党系のアナリストたちは、この事態に「真っ青」になっています。「小さな政府論」も「ブッシュのイラク戦争」も「自由貿易」も否定するトランプの存在は、共和党の中核イデオロギーを破壊するだけでなく、11月に大統領候補として担ぐことになれば、上下両院から地方選挙まで含んだ「巨大な同時選挙」が総崩れになる可能性もあるからです。 そこで、多くのワシントンの保守

    「トランプ降ろし」の仰天秘策も吹き飛ぶ、ルビオとクルーズのつばぜりあい
  • なぜ日本には「左派勢力の旗手」が出現しないのか?

    今週のアイオワ党員集会では、自称「民主社会主義者」のサンダースがヒラリーに肉薄した Rick Wilking-REUTERS 各州の予備選が始まったアメリカの大統領選では、民主党のバーニー・サンダース候補に若者の支持が集まっています。今月1日のアイオワ党員集会では、盤石と言われたヒラリー・クリントン陣営に1%未満の差まで詰め寄る一方で、今月9日に予定されているニューハンプシャーの予備選では自身の選挙区バーモントの隣ということもあって、大差での1位が見込まれています。 このサンダースですが、60年代から「反戦・反格差」を主張として掲げており、自分は「民主的な社会主義者」という立場を一貫して通しています。さらに大統領選で「政治による革命を目指す」としています。政策としては「空前の大増税を行って富裕層の富を吐き出させ」、「スウェーデンや日のような政府一元化の健康保険制度」を導入、さらには「公立

    なぜ日本には「左派勢力の旗手」が出現しないのか?
  • ドナルド・トランプはヒトラーと同じデマゴーグ【前編】

    ドナルド・トランプは昨年12月、イスラム教徒を入国禁止にするべきだと主張して、世界中を憤慨させた。イギリスでは、「トランプのイギリスへの入国禁止」を政府に求める請願に約50万人が署名した。アメリカでも、民主党員や共和党員、メディア、宗教団体が、そろってトランプを非難した。 しかし、最近の世論調査では、有権者の37%が、支持政党に関係なく、イスラム教徒の入国を「一時的に禁止」することに賛成した。 トランプが傲慢で怒りっぽい点には、大半の有権者が呆れている。そんなトランプが、共和党支持者のかなりの部分を押さえ、支持を固めているように見えるのはどういうことなのだろう。 トランプは一部から、デマゴーグ(扇動政治家)でありファシストだといわれている。政治評論家がトランプ歴史上の人物にたとえる場合も、出てくるのは「人種隔離を永遠に!」と叫んだ元アラバマ州知事ジョージ・ウォレスや、共産主義者を弾圧する

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  • イスラエル:国歌斉唱しない最高裁判事

    最高裁の判事が国歌斉唱しなかったことが、議論を呼んでいる。 いや、日のことじゃない。イスラエルで起きたことだ。 今年の2月末、最高裁新長官の就任式でイスラエル国歌「ハティクヴァ」が斉唱されたときのこと。イスラエル最高裁判事のサリーム・ジュブラーンは、立ち上がって敬意は表したものの、歌わなかった。中継のテレビカメラは、ずっと彼の唇に向けられていた。口パクすらなく、それは微動だにしなかったからである。 それがイスラエルで大問題となった。「けしからん」「解任しろ」という非難渦巻くなかで、「しょうがないだろう、彼はアラブ人なんだから」との意見もある。 何故ジュブラーンがイスラエル国歌を歌わなかったか。それは彼がイスラエル史上初めて最高裁常勤判事となったアラブ人だからであり、イスラエル国歌が「ユダヤ人としての魂が・・・シオンの地とエルサレムを乞い望む」と歌っているからである。 イスラエルには約15

  • 暴言大炎上でも共和党の「トランプ降ろし」が困難な理由

    トランプの「イスラム教徒入国禁止」発言で共和党予備選はこのままの形で継続させることが困難に Mark Kauzlarich-REUTERS 今週飛び出したドナルド・トランプの「すべてのイスラム教徒のアメリカ入国を拒否すべきだ」というコメントは、与野党一体となっての非難の大合唱に包まれました。 オバマ政権のアーネスト報道官が「大統領候補の資格なし」と切って捨てたのを筆頭に、民主党サイドだけでなく、ブッシュ前大統領、チェイニー前副大統領、ライアン下院議長などの共和党の大物も口を極めて非難をしています。 ペンシルベニア州のフィラデルフィアといえばアメリカ建国時の首都であり、来年7月に民主党の党大会が予定されている大都市ですが、同市のマイケル・ナッター市長は「トランプの入市禁止」を宣言。一方で海を渡ったイギリスでも、「トランプ入国禁止措置を求める請願」が盛り上がっています。 そんなわけで、まともな

    暴言大炎上でも共和党の「トランプ降ろし」が困難な理由
  • 「イスラム教徒の入国禁止」を提案、どこまでも調子に乗るトランプ

    支持率でトップを独走するトランプを、もう誰も正論では止められない Brian Snyder-REUTERS 先週ロサンゼルス郊外で発生した乱射テロ事件は、まだまだ真相の解明には程遠い状況が続いていますが、アメリカの各メディアは連日のようにトップニュース扱いで、事件に関する情報を流し続けています。また政治家たちも、それぞれの立場で事件に関連したコメントを続けています。 まずオバマ大統領は、事件直後には「テロかもしれないし、職場のトラブルかもしれない」という慎重姿勢を取っていたのですが、捜査の進展に伴って見解を変えてきています。今週日曜の晩には「ホワイトハウス執務室からのテレビ演説」を行って「この事件はテロ」であると断定しつつも「おそれることはない」と言うメッセージを発信しました。 この演説ですが、「ISILには勝利する」と言っておきながら、その中身は「英仏との協調、トルコとの協調、シリア反体

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  • 中絶医療施設への銃撃テロ、保守派が抱える闇

    銃撃テロを起こしたディアは保守派のプロパガンダに乗せられて犯行に及んだらしい Colorado Springs Police Department-REUTERS 先週末、コロラド州コロラドスプリングスにある医療施設が銃で武装した男に襲撃され、警官隊との銃撃戦が発生。警官1人を含む3人が死亡する惨事となりました。逮捕された狙撃犯はロバート・ディアという57歳の男性で、動機などの詳細は現時点で判明していませんが、「ベビー・パーツ(胎児の臓器利用のこと)を許さないため」などと語っているようです。 襲われた医療施設は全国組織の団体である「プランド・ペアレントフッド」という団体が経営しています。不妊対策や避妊を中心とした家族計画に関する啓蒙活動を行いながら、男女に対する不妊治療や人工妊娠中絶など実際の診療行為も行っているようです。 この「プランド・ペアレントフッド」ですが、今年に入って保守系団体に

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    kangiren
    kangiren 2015/12/02
  • 中東、もう1つの難民問題

    差別と分断 イスラエルはアフリカからの難民に冷たい(テルアビブの海岸で遊ぶ難民の子供たち) Amir Cohen-REUTERS そのときウスマイン・バラカは9歳だった。04年、スーダン西部ダルフール地方にあった故郷の村を、アラブ系民兵組織ジャンジャウィードが襲撃。バラカの父親と兄弟は殺された。 その後の4年間、スーダン国内の難民キャンプで暮らすうちに、バラカはよりよい未来を夢見るようになった。 当時は「中東で唯一の民主主義国はイスラエル」だと思っていたと、バラカは振り返る。「ホロコーストを経験したユダヤ人に親近感を持っていた。ダルフール紛争でも大量虐殺が起きたのだから、ユダヤ人も自分に共感してくれると思った」 13歳のとき、バラカは徒歩でイスラエルの隣国エジプトへ向かい、国境を越えて憧れの国にたどり着いた。だが待っていたのは、拒絶だ。当局は「難民申請の審査もしてくれない」と、バラカは言う

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  • ヒラリーと民主党を救った社会主義者サンダース

    思わぬ伏兵 サンダースは、クリントン優位で進む指名獲得レースで意外な存在感を見せつけた Joe Raedle-GETTY IMAGES 先週行われた米民主党の大統領選予備選の候補5人による公開討論会がお決まりの泥仕合に陥らなかったのは、バーニー・サンダース上院議員の手柄だ。 司会を務めたCNNのアンダーソン・クーパーは、「アメリカの大統領選挙で社会主義者が勝てるだろうか」とサンダースに問いただした。社会主義者を自称する最左派のサンダースは、ひるむことなく北欧式の社会民主主義を擁護した。 これに対し、ヒラリー・クリントン前国務長官は真摯な言葉で資主義を擁護した。「アメリカはデンマークとは違う。私はデンマークが好きだ。でも、アメリカがやるべきことは、行き過ぎた資主義の手綱を締め、今の経済体制にみられるような格差を生まないことだ。史上最大の中流階級を築いてきたものに背を向けるのは、由々しき間

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  • 又吉直樹氏の傑作『火花』は、日本文学を変えるか?

    初出誌の『文學界』2月号がプリンストン大学の図書館に来ていましたので、早速読んでみました。キャラクターはよく描かれていますし、ストーリー展開も上手で、何よりも会話については、元来がプロである著者の技量が最大限に発揮されていて大変なクオリティだと思いました。 さて、この『火花』が受賞した「芥川龍之介賞」というのは「純文学作品」に与えられるものです。では、「純文学とはなにか?」ということになりますと、「複数の解釈を許す抽象度の高い作品」、「政治思想や世界観を扱う前衛性または同時代性」、「文章表現における卓越性」といった要素が濃厚な作品ということになると思います。 この『火花』は、「抽象性」と「思想性・同時代性」の要素も入っていますし、「文章表現」に関しては高水準にあることから、大衆小説であるとかエンターテインメント小説というカテゴリには収まり切らないと思います。ですから「芥川賞」で良いと思いま

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  • 人質殺害事件に寄せて

    人人質事件は、残念な結果になった。 昨年六月に登場して以来、その残虐さで国際社会を震撼させてきた「イスラーム国」が、いかに深刻な問題かを、日は遅ればせながら実感したことになる。 この問題について、筆者はあまり語ってこなかった。少ない情報で、しかも人命がかかっていることで、あれこれ語ることがいいとは思えなかったからだ。この事件に関する日の報道を見ていると、解決に逆効果をもたらしたのではないかと懸念する。 そもそも、国内の普通の誘拐事件だったら、ここまで情報や憶測を垂れ流しにしただろうか。こうすればよい、ああすればよい、といったコメントが、いちいち日側の手の内、対応を犯人に晒しているとの自覚はなかったのだろうか。 犯人が海外だから、日国内で交わされる議論は聞こえないとでも思っているのかもしれない。だが、ネットに掲載される情報は日語でも簡単に自動翻訳にかけられるし、テレビ画像でもY

  • 「決断疲れ」が生産性を奪う

    やる気が出ないのは 自制や選択続きて疲れた心は、安易な選択をしやすくなる John Cowie/Getty Images 新しい街で働き始めた初日。私は気付くと、新しいマンションでカーペットにうつ伏せに寝転んでいた。ソファを買わなくちゃ。あの原稿を仕上げなくちゃ。犬の散歩にも行かなくちゃならない──。 でも家から職場までどの経路で行くかを決め、医療保険のプランを選び、10個以上の新しいパスワードを設定した後では、私はまったく使い物にならない。夫に聞かれた夕メニューも、何でもよかった。 こんな私の状態を科学的に説明すると「決断疲れ」だそうだ。 読んで字のとおり、次々と何かを決断をしていくと、人は疲れてうんざりしてしまうことがある。仕事帰りに料品を買うことを考えてみよう。7ドルで有機農法のベリーを買うか、4ドルで普通のベリーを買うか? パスタの種類は? ジュースのブランドは? あなたが私み