出版は出版者がいて成立つ、社会的なコミュニケーション行為だ。物理的コストは下がっても、人が読む気になるものを出版するには、商業出版物と同じく、それなりの精神的・創造的エネルギーや知識、技能が必要だ。だからあるコンテンツを世に出したいと考える人間や集団、組織がいて初めて、出版物は生まれる。ではデジタル時代には誰が出版者として無償コンテンツの提供者となり、その動機は何だろうか。主体は多種多様、(自己顕示欲を除けば)主要な動機は2つ。社会正義とビジネス、あるいは公共性と市場性ということになる。これらは対立概念ではない。 情は人のためならず:「無償を原則とし、有償は例外に」 近代社会は出版とともに誕生し、出版もまた近代社会とともに成長した。グーテンベルクの可動活字印刷は宗教改革と、ディドローの百科全書(個人による知の体系化)は市民革命と不可分に結びついている。彼らは「読者」を誕生させ、間接的に出版